みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

文字の大きさ
24 / 157
西の大陸蹂躙

フェリアーラの誤算

「一発やらせてくれたらなんとかしてやるよ」

「はい?」

「浮気?」

 あの後、外はどうなってるとか、魔王はどうしたとか、勇者パーティはどうとか信じてない感じのくせに根掘り葉掘り聞かれて、それはそれは面倒この上なかった。

 それで上空のガーゴイルについて聞かれたので、フェリアーラに解方法を提示していたってわけだ。

 結界があるから、あいつらがいてもしょうがないし、引き返させたところで呼べばすぐ来る。
 一人変なことを言ってる奴がいるが。

「なにが浮気だ」

「だっていい女って言ってくれたし、何度もエッチしたでしょ?」

 ソファーに隣同士で座るリッカがじと目で僕を睨んだ。
 もう面倒だしそれでいいか。

「ああ、じゃあ浮気だ」

「むー。開き直ったー」

 プイとそっぽを向いてしまったリッカ。
 そんな簡単にほだされる女じゃないことは知っているので、相手にするだけ無駄だ。

「で? どうする?」

「いえ、ご遠慮させていただきますわ」

 正面に対になって座っているフェリアーラは僕の提案を蹴った。

 フェリアーラはリッカの言うとおりめっちゃ美人だった。
 ブロンドのロングのをふわっとまとめ、リッカよりも身長は高く、更に胸は大きい。
 例えるなら……ロシアの妖精のような美女があどけなさを残して、そのまま変遷することなく大人になった感じだ。

「まあ、そうだな。ガーゴイルがいなくなったとしても、この大陸で生き残っているのはここだけだしな」

「あれ? もう王都やっつけたの?」

 拗ねているフリをしていたリッカがなんでもなかったかのように話しかけてくる。
 やはり、こいつに気を使うなんて無駄な行為だ。

「ああ。ガーゴイル以外にもちょこっと強い魔物も派遣したしな」

「なにそれ」

「四魔将軍」

「強そう!」

「ああ、強いぞ! おまえなんか一瞬で死んじゃう」

「でも私にはこのドレスがあるもん」

「それは僕があげた……まあいいや」

 リッカがちょいちょい口を挟んできて話が進まない。ちょっと黙っていてほしい。

「それは……本当なのですか?」

 王都陥落の知らせはまだ届いていないらしく、訝しげに是非を問うフェリアーラ。

「嘘でーす」

 だから僕は真顔でそう答えた。
 本当のことを話してもなんだか面白くなさそうだし、そもそもなんで僕が証明しなきゃいけないんだ?
 そんなこと自分たちで考えて答えを出せよ。

「はぁ!?」

 僕のぶっ飛んだ受け答えに、信じられないとでも言いたげに驚くフェリアーラ……名前長いな。
 これからはフェラ……じゃかわいそうだから、フェリにしよう。

「んなわけないじゃん今まで適当こいただけだよバーカ」

 陳腐な煽りだが……なにか不思議な達成感があるな。
 こういった威厳のある人をおちょくる……癖になりそうだ。

「んな……はぁ。それで、あなたたちの目的はなんですか?」

「アインケルンにいる人間を皆殺しにすることかな?」

「またそんな事を……」

 フェリは目頭を指でつまみ深く溜息を吐いた。

「信じないのは構わないが、後悔することになるぞ?」

「……それを信じたとして、私はどうすればいいのですか?」

「……それもそうだ。おまえはどのみち後悔して死ぬことになる」

 態度も悪く、言っていることは魔王そのもの。
 しかし、フェリが思い描いていたような凶悪さは感じられない。
 だから、この時はまだこの青年を侮っていた。

「……そろそろ口の利き方に気をつけないと、痛い目を見ることになりますよ?」

 フェリは馬鹿にされるのもそろそろ我慢の限界が来ていた。
 ただでさえこんな状況で悩みは尽きないのに、この青年の態度はそんなフェリの機嫌を損ねてしまったようだ。

「そう? じゃあ、動いてみ」

「!?」

 ニヤニヤと笑う青年がまたよくわからない事をのたまったかと思えば、そのとおりになにもできない自分がいた。
 手も足も口も動かせない。
 そして、息ができなかった。
 心音は聞こえる、どくどくと脈を打つ音だけがけたたましく警鐘を鳴らしていた。

「……よっと」

 青年はおもむろにソファーから腰を上げ、私の顔を撫でるように触ると、寒気のするような笑みを浮かべてこちらを覗いている。

「……どうだ? このまま死ぬか?」

 自分より強い存在に出会ったことなど幾度となくあるが、こんなにもあっさり死を弄ぶような強さに対峙したことはなかった。
 今までの話は全てが真実であり、この青年がしようとしていることはアインケルンに住まう人々を全て殺すこと。

 そんな嘘のような絵空事は、必至の現実として鮮明にフェリの脳に刻まれる。
 今の今までどこにも存在していなかった絶望が、フェリを骨の髄まで包み込んだ。

「はは! うそうそ!」

 そう冗談だと青年がソファーに座り直した時、どす黒い笑顔は消え、同時にフェリの拘束は解かれた。

「っはあ!! はぁ! はぁ!」

 喉に手を当て必死に深呼吸を繰り返す。
 あと数分で落とすかもしれなかった命。
 気まぐれに繋がれたその命には、なんの価値もないと言うかのように何事もなく笑う青年。

 フェリは全てを悟ると同時に、脳をフル回転させて打開策を探っていた。
感想 168

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。