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西の大陸蹂躙
リッカの涙
ガチャっと扉を閉め、フェリはリッカをデスクへと促し椅子へと座らせた。
自分はデスクに腰掛けるようにして、リッカと隣り合わせに座った。
先ほどからずっと思いつめたように下を向くリッカ。
フェリはこれから語られるであろうリッカの話を受け入れるため、一つ小さな深呼吸をしてから優しく問いかけた。
「リッカ……あの人のこと、きちんと教えてくれない?」
恩人であるはずのフェリが死にそうになったにも関わらず、なにも感じないと漏らすまでになった理由。
彼の庇護下に入り、力なく涙した理由が知りたかった。
そして、リッカは少し間を空けて、ポツポツと語り出す。
魔王討伐がどういうものであったかを。
淡々と紡がれていく私情を挟まない事実。
その全てが驚愕であり、子供騙しのお伽話のようだった。
「で、フェリアーラ様に連れて来られたって感じですかね」
「……そう」
その話を聞いて、いろいろと思案するも……次元が違い過ぎてなにも浮かばない。
それもそのはずで、もしリッカの話が本当であれば、この決断はエルフ族全体の運命を左右する規模の大きな決断となるだろう。
人間からエルフを守るために潜入しているだけの自分にとって、この判断を下すことがどれだけ身に余る行為なのかは十分理解できた。
「……他には何かある?」
だいたいの事情はわかったが、もっと彼の情報が欲しかった。
語られていない大事なことがなにかあるかもしれない。
だから、リッカには自由に話してもらおうと思った。
「フェリアーラ様は、やらせろって言われたらどうするの?」
情報を引き出そうとしたら、リッカから思わぬ質問が飛び込んできて驚く。
しかし……
「なにを!? ……いえ、そうですね……あなただけに押し付けるわけにはいかないわね。
あなたの代わりになれるのなら受け入れましょう」
きっと、リッカにとって、大事なことなのだろう。情報ばかりを引き出そうとしていた自分を少しだけ恥じた。
もっとリッカのことを考えてあげなければと、心を新たにする。
「え? 私の代わり?」
「ええ、あなたはよく頑張ったわ」
「……じゃあ、もうしなくていいの?」
「……そうね、交渉してみましょう」
リッカはすでに何度も抱かれている。
これ以上彼女に負担をかけ続けるくらいならば、代われるものなら代わってあげなければ……という思いだった。
そう決意してリッカを見れば、彼女はまた、目に涙を浮かべていた。
……辛かったでしょうね。
そう感じずにはいられなかった。
その生まれから、蔑まれていたとはいえ仲間だった勇者パーティは殺され、生かされた意味もわからず慰み者として何度も抱かれたのだ。
その立ち振る舞いからは、心に傷を負ったとは感じ取れなかった。しかし、もしそんな一面を見せてしまえば、呆気なく魔王に殺されていたかもしれない。
常にすぐ隣には抗えない死が付き纏い、慰み者としての責務を抱えていたのだ。
その思いに至った時、フェリの心はぎゅーっと締め付けられるような痛みを伝えてた。
そして、リッカが落ち着くまで見守っていると、ポツポツと彼女は弱々しい声で語り出す。
「もし……あの人がフェリアーラ様の話を受け入れたら……」
「心配しなくていいわ。リッカの話では、彼は優しくしてくれるのでしょう?」
「うん……」
「なら、大丈夫ね」
また、リッカの目には涙が溜まってきてしまっている。
自分を案じてくれているのだろうか?
それほどまでに辛かったのだろうか?
不安定な心がそうさせているだけなのだろうか?
リッカの思いはわからない。
だが、心に傷を負ったのであろうことは理解できた。
「でも……私は……」
リッカが最後まで言い終わる前に、バン! と勢いよく扉が開き、「遅い!」と叫ぶ者が一人……魔王である。
事の顛末をタラタラと話し込み、不安定なリッカを待ちながらの会話は、思った以上に長い時間をかけてしまったようだ。
フェリは飛び上がるようにデスクから降り、憤慨している彼に謝罪する。
「きゃぁ! ……すっ……すみません!」
「……まだかかるのか?」
ギロリと睨まれた眼光は、これ以上長引かせることへの不利益を語っていた。
「い……いえ。もう終わりましたわ」
「そうか……で、どうするかは決まったか?」
自分では判断に余ると結論づけ、彼には提案を持ちかけることにした。
「はい。族長にお会いしていただきたいと思います」
「族長? どこにいんだよ」
機嫌が悪いのか、彼の口調はさらに悪化していた。
「南の大森林の奥地に集落を構えております」
「……」
待てども、待てども、二人が出てこないので、僕は我慢できずに文句を言いに行った。
恩人との再会だからと気を遣っていたが、あまりに長すぎて我慢できなかったのだ。
そして、フェリに文句を言うと、彼女は問題を先延ばしにした。
エルフは森の民、誰が決めたかその設定はこの世界でもお決まりのようだ。
まあ、フェリちゃんのような美人がいっぱいいるなら行ってやってもいいかもしれない。
人殺し以外の楽しみが持てるとは思わなかったので、これはこれで目的の一つとして大変有意義だろう。
しかし……
「……リッカが泣いているようだが?」
事と次第によっては、その希望も露と消えるだろう。
自分はデスクに腰掛けるようにして、リッカと隣り合わせに座った。
先ほどからずっと思いつめたように下を向くリッカ。
フェリはこれから語られるであろうリッカの話を受け入れるため、一つ小さな深呼吸をしてから優しく問いかけた。
「リッカ……あの人のこと、きちんと教えてくれない?」
恩人であるはずのフェリが死にそうになったにも関わらず、なにも感じないと漏らすまでになった理由。
彼の庇護下に入り、力なく涙した理由が知りたかった。
そして、リッカは少し間を空けて、ポツポツと語り出す。
魔王討伐がどういうものであったかを。
淡々と紡がれていく私情を挟まない事実。
その全てが驚愕であり、子供騙しのお伽話のようだった。
「で、フェリアーラ様に連れて来られたって感じですかね」
「……そう」
その話を聞いて、いろいろと思案するも……次元が違い過ぎてなにも浮かばない。
それもそのはずで、もしリッカの話が本当であれば、この決断はエルフ族全体の運命を左右する規模の大きな決断となるだろう。
人間からエルフを守るために潜入しているだけの自分にとって、この判断を下すことがどれだけ身に余る行為なのかは十分理解できた。
「……他には何かある?」
だいたいの事情はわかったが、もっと彼の情報が欲しかった。
語られていない大事なことがなにかあるかもしれない。
だから、リッカには自由に話してもらおうと思った。
「フェリアーラ様は、やらせろって言われたらどうするの?」
情報を引き出そうとしたら、リッカから思わぬ質問が飛び込んできて驚く。
しかし……
「なにを!? ……いえ、そうですね……あなただけに押し付けるわけにはいかないわね。
あなたの代わりになれるのなら受け入れましょう」
きっと、リッカにとって、大事なことなのだろう。情報ばかりを引き出そうとしていた自分を少しだけ恥じた。
もっとリッカのことを考えてあげなければと、心を新たにする。
「え? 私の代わり?」
「ええ、あなたはよく頑張ったわ」
「……じゃあ、もうしなくていいの?」
「……そうね、交渉してみましょう」
リッカはすでに何度も抱かれている。
これ以上彼女に負担をかけ続けるくらいならば、代われるものなら代わってあげなければ……という思いだった。
そう決意してリッカを見れば、彼女はまた、目に涙を浮かべていた。
……辛かったでしょうね。
そう感じずにはいられなかった。
その生まれから、蔑まれていたとはいえ仲間だった勇者パーティは殺され、生かされた意味もわからず慰み者として何度も抱かれたのだ。
その立ち振る舞いからは、心に傷を負ったとは感じ取れなかった。しかし、もしそんな一面を見せてしまえば、呆気なく魔王に殺されていたかもしれない。
常にすぐ隣には抗えない死が付き纏い、慰み者としての責務を抱えていたのだ。
その思いに至った時、フェリの心はぎゅーっと締め付けられるような痛みを伝えてた。
そして、リッカが落ち着くまで見守っていると、ポツポツと彼女は弱々しい声で語り出す。
「もし……あの人がフェリアーラ様の話を受け入れたら……」
「心配しなくていいわ。リッカの話では、彼は優しくしてくれるのでしょう?」
「うん……」
「なら、大丈夫ね」
また、リッカの目には涙が溜まってきてしまっている。
自分を案じてくれているのだろうか?
それほどまでに辛かったのだろうか?
不安定な心がそうさせているだけなのだろうか?
リッカの思いはわからない。
だが、心に傷を負ったのであろうことは理解できた。
「でも……私は……」
リッカが最後まで言い終わる前に、バン! と勢いよく扉が開き、「遅い!」と叫ぶ者が一人……魔王である。
事の顛末をタラタラと話し込み、不安定なリッカを待ちながらの会話は、思った以上に長い時間をかけてしまったようだ。
フェリは飛び上がるようにデスクから降り、憤慨している彼に謝罪する。
「きゃぁ! ……すっ……すみません!」
「……まだかかるのか?」
ギロリと睨まれた眼光は、これ以上長引かせることへの不利益を語っていた。
「い……いえ。もう終わりましたわ」
「そうか……で、どうするかは決まったか?」
自分では判断に余ると結論づけ、彼には提案を持ちかけることにした。
「はい。族長にお会いしていただきたいと思います」
「族長? どこにいんだよ」
機嫌が悪いのか、彼の口調はさらに悪化していた。
「南の大森林の奥地に集落を構えております」
「……」
待てども、待てども、二人が出てこないので、僕は我慢できずに文句を言いに行った。
恩人との再会だからと気を遣っていたが、あまりに長すぎて我慢できなかったのだ。
そして、フェリに文句を言うと、彼女は問題を先延ばしにした。
エルフは森の民、誰が決めたかその設定はこの世界でもお決まりのようだ。
まあ、フェリちゃんのような美人がいっぱいいるなら行ってやってもいいかもしれない。
人殺し以外の楽しみが持てるとは思わなかったので、これはこれで目的の一つとして大変有意義だろう。
しかし……
「……リッカが泣いているようだが?」
事と次第によっては、その希望も露と消えるだろう。
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