29 / 157
西の大陸蹂躙
公爵家に赴く二人 リッカの帰還パーティ
「……失礼します」
フェリはリッカを連れて公爵家へと赴き、公爵のいる部屋へと入っていく。
「おお、リッカ! 待ちわびておったぞ! フェリアーラも……こんな状況だ、君たち二人が揃うと頼もしい限りだよ」
公爵は快く二人を迎え入れ、豪華な長椅子へと促した。
「お久しぶりです公爵様。リッカ・スチュアート 魔王討伐の任から戻ってまいりました」
リッカは甲斐甲斐しく公爵に挨拶を済ませた。
「いやはや……よく帰って来た。私は君を魔王討伐へと向かわせるのはとても心苦しかったのだ。
討伐はできなくとも、君さえ帰って来たのであれば私は満足だ。
それに、今はこんな状況だ。君が帰って来たと知れば、皆の不安も癒えよう」
公爵は魔王討伐よりもリッカの身を案じているような口ぶりで、リッカの帰還を歓迎する。
「私の至らぬ行いのせいで、このような事態を止められず……誠に申し訳ありません」
リッカはいつものような適当さのかけらもなく、公爵に不手際を詫びる。
さすがのリッカも、こと公爵の前では傍若無人というわけにはいかないようだ。
「いやいや、そもそも、このようにか弱い女の子を連れて行くなど狂気の沙汰。
我々がまともな勇者パーティを揃えられなかった落ち度だ。
本当によく帰って来た。申し訳ない」
公爵が深々とリッカに頭を下げる。
慌ててリッカは公爵へと言葉をかけた。
「顔をお上げください! 公爵様がそのようなことをしてはいけません!」
「はは、これは礼儀というものだ。リッカにはまだわかるまい。公爵とて、頭を下げる時には下げるのだよ! はっはっは!」
リッカと話す公爵はえらく上機嫌であった。
プライドの塊のような貴族社会で、孤児であるリッカに頭まで下げてもなお笑っている。
二人はにこやかな笑顔で公爵の機嫌を伺うしかない。
このような茶番、そうそうと終わらせて帰りたいと思っていても口には出せなかった。
「して……」
ようやく茶番も終わり、公爵が睨みつけるように二人を見れば、ここからが本題だ。
「二人に来て貰ったのは他でもない。皆が待ちわびていてね。リッカの帰還を聞いて大勢集まってくれたのだよ」
「大勢……」
その言葉を聞いて、フェリの顔は歪んだ。
リッカの帰還を喜んだ者たちの集まりであるにも関わらず。
「そうなんだ。だから、申し訳ないが、フェリアーラにも手伝って欲しくてね。
連日となってしまって申し訳ないが、ここで謝罪しよう。いつか埋め合わせはするから」
「はい……」
暗く沈んだフェリの声は、聞こえるか聞こえないかの小さな呟きだった。
「はっはっは、そう落ち込むな。今日は特別な日にするため、そなたたち二人だけじゃなく全員呼んだのだ! 大丈夫、今日は盛大に盛り上がろうではないか!」
「全員……くっ……」
上機嫌に話す公爵の傍、フェリの顔はますます悲痛に歪み、下手をすれば公爵を睨みつけているかのようにも見えた。
そんな表情は、ここではしてはいけないはずなのに……。
「フェリアーラよ……ここは耐えてくれ……」
そう大げさに手を広げて容赦を求め、ぐいっとフェリの顔の横まで近づけば、小声で耳打ちをする。
「里の者が心配であろう? 大丈夫だ、やつは強い。そなたたちが良き働きをすれば、あやつも里を守ってくれよう」
目を見開き、下を向くフェリ。
エルフの里に差し出された用心棒は、フェリたちの働きによって里を守ってくれている強者。
その名はクザン・ダガート。
その前に里を守ってくれていたライオ・ダガートの息子。
彼のことはフェリもよく知っている。
その強さは折り紙つきで、里の者が全員で対峙したはずなのに、やつには敵わなかった。
こちらの全ての攻撃はかわされ、こちらが攻撃動作に移る瞬間には吹き飛ばされていた。
無尽蔵の体力と、その巨躯からは信じられないほどの素早い動きをする。
そして、ただの棍棒で打たれたはずなのに、腕や足は吹き飛ばされてしまうほどの剛力。
戦闘の最中に四肢の一つも失えば、戦えなくなるばかりか、そのほとんどは絶命していった。
それが今では、エルフの里を守る用心棒として、わがまま顔で滞在しているといった現状があった。
だから、公爵が言っているのはこういうことだ。
クザンが里を守る……そうではない。
二人が言うことを聞かなければ、クザンが里を滅ぼしかねないと言っているのだ。
そうやって、公爵が駒として連れてきたエルフたちは、怯えながら街で暮らすことを余儀なくされ、万が一素性がばれてしまえば、公開処刑される悲痛な運命の下で生を繋いでいくしかなかった。
そして、これから始まるのは……夜会。
貴族たちが己の欲望を……贅の限りを尽くして貪り尽くす下衆の集まり。
そこに添えられる花は、エルフの里から連れてこられた美しい美女たち。
連れてこられたほぼ全てのエルフたちは、この腐った夜会で初めてを散らす運命にあった。
なぜなら、そのような潔き乙女はこぞって連れ去られてしまうから。
そうして弄ばれ、何度も何度も相手をさせられれば、当然のことながら命は宿る。
孕んでしまえば里に返され、純血種は血を薄くせざるを得ない状況にまで陥っていた。
一人で何人もの純潔を奪う輩も少なくない。
いくらでも変えはいる。
そんな悲劇はもう、何年も繰り返されていた……。
……そして、二人は公爵に手を取られ、夜会へとその足を運んでいく。
フェリはリッカを連れて公爵家へと赴き、公爵のいる部屋へと入っていく。
「おお、リッカ! 待ちわびておったぞ! フェリアーラも……こんな状況だ、君たち二人が揃うと頼もしい限りだよ」
公爵は快く二人を迎え入れ、豪華な長椅子へと促した。
「お久しぶりです公爵様。リッカ・スチュアート 魔王討伐の任から戻ってまいりました」
リッカは甲斐甲斐しく公爵に挨拶を済ませた。
「いやはや……よく帰って来た。私は君を魔王討伐へと向かわせるのはとても心苦しかったのだ。
討伐はできなくとも、君さえ帰って来たのであれば私は満足だ。
それに、今はこんな状況だ。君が帰って来たと知れば、皆の不安も癒えよう」
公爵は魔王討伐よりもリッカの身を案じているような口ぶりで、リッカの帰還を歓迎する。
「私の至らぬ行いのせいで、このような事態を止められず……誠に申し訳ありません」
リッカはいつものような適当さのかけらもなく、公爵に不手際を詫びる。
さすがのリッカも、こと公爵の前では傍若無人というわけにはいかないようだ。
「いやいや、そもそも、このようにか弱い女の子を連れて行くなど狂気の沙汰。
我々がまともな勇者パーティを揃えられなかった落ち度だ。
本当によく帰って来た。申し訳ない」
公爵が深々とリッカに頭を下げる。
慌ててリッカは公爵へと言葉をかけた。
「顔をお上げください! 公爵様がそのようなことをしてはいけません!」
「はは、これは礼儀というものだ。リッカにはまだわかるまい。公爵とて、頭を下げる時には下げるのだよ! はっはっは!」
リッカと話す公爵はえらく上機嫌であった。
プライドの塊のような貴族社会で、孤児であるリッカに頭まで下げてもなお笑っている。
二人はにこやかな笑顔で公爵の機嫌を伺うしかない。
このような茶番、そうそうと終わらせて帰りたいと思っていても口には出せなかった。
「して……」
ようやく茶番も終わり、公爵が睨みつけるように二人を見れば、ここからが本題だ。
「二人に来て貰ったのは他でもない。皆が待ちわびていてね。リッカの帰還を聞いて大勢集まってくれたのだよ」
「大勢……」
その言葉を聞いて、フェリの顔は歪んだ。
リッカの帰還を喜んだ者たちの集まりであるにも関わらず。
「そうなんだ。だから、申し訳ないが、フェリアーラにも手伝って欲しくてね。
連日となってしまって申し訳ないが、ここで謝罪しよう。いつか埋め合わせはするから」
「はい……」
暗く沈んだフェリの声は、聞こえるか聞こえないかの小さな呟きだった。
「はっはっは、そう落ち込むな。今日は特別な日にするため、そなたたち二人だけじゃなく全員呼んだのだ! 大丈夫、今日は盛大に盛り上がろうではないか!」
「全員……くっ……」
上機嫌に話す公爵の傍、フェリの顔はますます悲痛に歪み、下手をすれば公爵を睨みつけているかのようにも見えた。
そんな表情は、ここではしてはいけないはずなのに……。
「フェリアーラよ……ここは耐えてくれ……」
そう大げさに手を広げて容赦を求め、ぐいっとフェリの顔の横まで近づけば、小声で耳打ちをする。
「里の者が心配であろう? 大丈夫だ、やつは強い。そなたたちが良き働きをすれば、あやつも里を守ってくれよう」
目を見開き、下を向くフェリ。
エルフの里に差し出された用心棒は、フェリたちの働きによって里を守ってくれている強者。
その名はクザン・ダガート。
その前に里を守ってくれていたライオ・ダガートの息子。
彼のことはフェリもよく知っている。
その強さは折り紙つきで、里の者が全員で対峙したはずなのに、やつには敵わなかった。
こちらの全ての攻撃はかわされ、こちらが攻撃動作に移る瞬間には吹き飛ばされていた。
無尽蔵の体力と、その巨躯からは信じられないほどの素早い動きをする。
そして、ただの棍棒で打たれたはずなのに、腕や足は吹き飛ばされてしまうほどの剛力。
戦闘の最中に四肢の一つも失えば、戦えなくなるばかりか、そのほとんどは絶命していった。
それが今では、エルフの里を守る用心棒として、わがまま顔で滞在しているといった現状があった。
だから、公爵が言っているのはこういうことだ。
クザンが里を守る……そうではない。
二人が言うことを聞かなければ、クザンが里を滅ぼしかねないと言っているのだ。
そうやって、公爵が駒として連れてきたエルフたちは、怯えながら街で暮らすことを余儀なくされ、万が一素性がばれてしまえば、公開処刑される悲痛な運命の下で生を繋いでいくしかなかった。
そして、これから始まるのは……夜会。
貴族たちが己の欲望を……贅の限りを尽くして貪り尽くす下衆の集まり。
そこに添えられる花は、エルフの里から連れてこられた美しい美女たち。
連れてこられたほぼ全てのエルフたちは、この腐った夜会で初めてを散らす運命にあった。
なぜなら、そのような潔き乙女はこぞって連れ去られてしまうから。
そうして弄ばれ、何度も何度も相手をさせられれば、当然のことながら命は宿る。
孕んでしまえば里に返され、純血種は血を薄くせざるを得ない状況にまで陥っていた。
一人で何人もの純潔を奪う輩も少なくない。
いくらでも変えはいる。
そんな悲劇はもう、何年も繰り返されていた……。
……そして、二人は公爵に手を取られ、夜会へとその足を運んでいく。
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。