みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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西の大陸蹂躙

クソ共の夜会に訪れたのは、英雄ではなく絶望をもたらす者

 二人は英雄を舌で喜ばせる。
 顔から徐々に下がっていき、胸、腹部、下半身へと移動する。
 フェリが男を口で愛撫すれば、リッカは胸を弄ばれた。

「今日は金貨4000枚も払ったんだ! 孕むまで犯してやるからな?」

 クソが吐き気を催すような苦言を呈す。
 それに笑顔で答えるリッカ。
 媚薬はすでに全身へと回り、相手がクソでも快楽を欲するように体は火照っていた。

 やがて、胸を弄んでいた手はリッカの秘部に移動し、溢れ出る愛液を楽しみ始める。

「んっ……んん!……っはぁ……ん……」

 必死に堪えるも、小さく喘ぎ声が漏れてしまう。
 何度も経験したその行為だが、今日に限っては、酷く切なさが込み上げてくる。

 なぜだろうか?
 最近の自分が、どこかおかしいのは自覚している。
 彼の慰み者になってから、何度も経験したことなのに、彼を狂おしいほどに欲している自分がいた。
 こいつらと同じ下衆野郎のはずなのに、彼に抱かれると、いつもより体の火照りは熱を上げ、のぼせたように脳を恍惚とさせた。

 しかし、今は、指を入れられ、激しく弄られているにも関わらず、快楽よりも悲しさが押し寄せてくる。

 嫌だった。

 こんなことを思うなんて、初めての時以来だろうか?
 醜い豚でも、香の媚薬が回れば快楽へと変わるはずだった。
 しかし今は、吐き気と悲しさで押し潰されそうだ。

「んっ……いや……あっ……」

 クソは私の腰を顔に持ち寄り、舌で愛撫を始めた。
 指よりかはいいはずなのに、より一層気分が悪くなる。

 嫌だ……嫌だ、嫌だ、嫌だ! 嫌だ!!

 少しでも快楽を感じている自分が許せなかった。
 なぜなのかはわからない。
 でも、頭の中は彼のことで一杯になっている。

 彼のように、クソ共を殺せればいいのに。
 彼のように、私のようなエルフを救えればいいのに。
 彼のように、強く、何者にも縛られない美しさが欲しい。
 
 もう、リッカの脳は、傍若無人な優しい魔王に焦がされていた。

 自分も、この会場のエルフたちを救いたい。
 今すぐにでも公爵を殺したい。
 叶うならば、会場のエルフたち以外は……


 みんな死ねばいいのに……


 そんなどす黒い感情が媚薬の効果を薄め、快楽は徐々に鳴りを潜めていく。

「そろそろいくよ!」

 クソは堪らず、下半身の愛撫をしていたフェリの顔を退けた。そして、私の腰を掴み、乱暴に下半身へと移動させる。

「今日は君からだよ、リッカ」

 私はいつものようにクソの下半身にまたがり、ゆっくりと腰を落としていく。
 やがて男の先を感じた時、なぜか、どうしようもなく涙が溢れ出していた。

 徐々に自分の中に埋もれていくクソを全て受け入れた時……快楽は全て……悲しみへと変わってしまった。

「かはっ……うう……うぇ……うぇぇ……」

「どうしたの? 泣いているの?」

 優しく問いかけながらも、クソのそれはまじまじと感じるほどに硬くなっていた。
 激しく腰を振り、私の泣き顔でさらに欲情している。
 徐々に、徐々に激しさを増し、やがて……

「も……もういきそうだ!」

「いや! いやぁ! ダメ!! もうやめて!」

 最後の時……リッカかは懇願することしかできない。
 悲しさは絶望へと変わっていき、クソのそれを受け止めるのが堪らなく嫌で嫌で仕方なかった。

 「リッカ! リッカ!! リッ——」

 「——嫌ぁ!!! やめて!! 助けて!! お願い!!!」

 助けを求めても誰も来てはくれない。
 そんなことはわかっていた。
 クソは快楽のまま、私にぶちまけるのだろう。

 でも、叫ばずにはいられなかった。
 それだけは耐えられそうもなかった。

 なぜなら……

 なぜなら……

 今わかった、私は彼が好きなんだと。

 私にだけは優しかった彼が、堪らなく愛おしいのだと。

 だから、だから、彼が、来てくれるかもしれないから……彼に……助けに来て欲しかったから……私はすぐそこまで来た絶望だとしても、抗うように彼を求め叫んだのだ。



「……よう、浮気か?」



「…………」

 聞き覚えのある声が……私がしている行為をいたずらっぽく咎めていた。
 声のする方を見れば、必死に叫び求めた彼がいた。
 今も泣いている。
 でも、悲しいからじゃなかった。

「ううぅ……ぐすっ……遅いよぉ……」

「はは! 悪かったな」

 私の拗ねるような物言いに、彼は笑いながらそう言うと、私を抱き上げ、クソから解放してくれた。
 グズグズと泣く私の髪を撫で、優しく慰めてくれた。
 彼は、私のために……私を助けるために……来てくれたのだ。

 止められない涙で前が霞み、彼の胸で吐き出すように泣き喚いた。
 今日はずっと泣きっぱなしだ。
 それもこれも、全部彼のせいだ。

「怖かったか?」

 私は額を彼の胸に擦りながら頷いた。

「そうか……わかった」

 そう言うと彼はクソを蹴り飛ばし、ベッドのシーツを私に巻いて……パチンと指を鳴らした。

「……魔王様」

 世界が停止した中で、同じく停止していたフェリが動き出す。

「どうしたい?……フェリ。僕は庇護下にあるリッカだけを助けられればそれで良いのだが……」

 停止した空間で、フェリは選択を迫られる。

 ……フェリは、今まで起きていたことを鮮明に思い出していた。
 突然、泣き出してしまったリッカを見て、堪らなく胸が苦しかった。
 泣いているリッカを、ただ、ただ見ていることしかできなかった。
 力の無い自分が堪らなく悔しかった。
 こんなことでしか、彼女たちを救えない自分が、嫌で嫌で死んでしまいたかった。


 でも……

 でも……


 彼が助けに来てくれたのだ。

 
 リッカは今、彼の胸で安堵の涙を浮かべている。
 それが……堪らなく嬉しかった。

 嬉し涙を流すのはいつぶりだろうか?
 もう、何年も流していない。

 こんなにも、心が晴れたのはいつぶりだろうか?
 リッカが勇者パーティに選ばれ、ここを出た時だったか? それも昔の話だ。

 たとえこれが、自分の身に余る決断だったとしても、もう、もう、これ以上は耐えられなかった。
 だから、私は、溢れ出る涙を必死に堪えて……震える声で懇願していた。

「エルフを……私達を……助けてください……」

 彼は笑って答えてくれた。

「ああ、任せておけ」
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