みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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西の大陸蹂躙

クズ共と魔王の楽しい楽しいエクササイズ

 もう……それはそれは何度も何度も蹴り上げられたので、失神してしまう者もチラホラ現れてしまった。
 しかし、そういった方にはもれなく、空間の覇者心臓マッサージを施し飛び起こす。

 顔色が、赤から青に変わっていき、呻き声すらあげられなくなったころ、エルフたちの憂さ晴らしはようやく終わりを告げた。

「さあ皆さん、そろそろ心の準備はよろしいでしょうか? 僕の考えた最強の広範囲殺戮マシーン、ロードローラー将軍がこの地に降り立ちます!
 夜も更け、みんな寝静まったころあいですが……なんの罪もないエルフの処刑を容認してきたこの街のクソ共を叩き起こし、その阿鼻叫喚をレクイエムとして捧げましょう!!」

 みんな僕の声を聞くのが精一杯の息も絶え絶えな感じだったが、もう、うずうずが止められないので先に進みます!

「それでは……落下!」

 ふわっと……ロードローラー将軍がゆっくりと加速しながら街へと落ちていく。
 そして、地に落ち、壮絶な破壊音がクズ共を叩き起こすと、街全体にキラキラとした謎の粉が落ちてきた。

「なんだこれ……フェーリー!! これなーに!!」

 落下見たさに空を飛んでいた僕は、蹴り疲れて息を切らすフェリに大声で尋ねた。
 フェリは上を向き、街全体に降り注ぐ光る粉のような物を見て目を見開いた。

「結界が……壊れました」

「えー?? なにー??」

「結界がー!! 壊れましたー!!」

「マジかーー!!」

 フェリが大声で叫んでくれて謎が解ける。
 結界すら壊してしまうロードローラー将軍……おそるべし。

 しかし、これはとても好都合だった。ガーゴイルを呼べるので、皆さんを特等席にご案内できそうだ。

 僕はガーゴイルに指示を出して全員を持ち上げ、将軍のところまで連れて行ってもらった。

 そして、場所は変わり、公爵家から、将軍の天辺にみんなを集めると、エルフ、公爵、リッカを泣かせたやつ以外を将軍の上へと並べる。

 今日は風も穏やかで、絶好のランニング日和だ。
 ただ、流石に暗すぎてよく見えないので、ガーゴイルに街を程よく燃やしてもらい、じんわりとした明かりのもと、命を弄ぶ殺人レースを開催する。

「聞こえますかー? 聞こえてなくても始まりますけど、これから、おまえらクズ共の腐った命でレースを行いまーす! 最後まで生き残ったクズには、ロードローラー将軍を抱く栄誉が与えられますので、頑張ってください!」

 しかしながら、彼らの股間は晴れ上がり、誰もまともに走れそうもないので、僕がお手伝いをします。

「それでは……よーい、はじめ!!」

 僕が開始の合図をすると、将軍が転がり始める。
 将軍は、街のあらゆる建物を捻り潰し、逃げ惑う人々を轢き殺す。
 その上では、素っ裸でエクササイズに励む股間を腫らしたクズ共。
 なんとも……なんとも命の重さの軽い処刑方法を取ったものだと我ながら感心する。
 だが、クソ共がエルフたちにしてきたことに比べれば、こんな軽い刑でいいのかとも迷っていた。

 まあ、ただそうは言っても一千万人近い人間を一人一人絶望に叩き落とすのも骨が折れる。
 最高の絶望は、そこに並んでいない二人に味わわせればいいかと涙を飲んだ。

 将軍はゆっくりと回転を始め、クズ共は僕が無理やり走らせる。
 だんだんと回転は早くなり、クズ共は昔のアニメのようにコミカルな速さで足を動かしている。
 僕の絶妙なバランス感覚で転倒を防ぎ、ちょいちょい失神してしまうクズを得意の心臓マッサージで叩き起こす。
 そして、そのあり得ない運動量からくる体温の上昇が、標高の高い冷たい空気と、将軍が巻き起こす風によって冷やされ、とても気持ち良さそうにクズたちは破顔している。

「あっはっっはっは!!! おまえら、マジその顔なんなの!? 将軍の上で汚くよだれなんか垂らしてんじゃねぇよ! あっ!!」

 一人、足の物理的限界を迎えてしまったクズが、もげた足にバランスを崩し、勢いよく将軍に頭を打ちつけて落下……これは……

 死に様が見れない!

 このゲームの欠陥に気づくも時すでに遅し。
 次々に足がもげ、頭を打って落ちていくクズ共。
 なんだか絶望もクソもなく終わったなーとこの処刑の欠点を教えられた。
 彼らはなんの意味もなく、僕の失敗の糧としてただただ死んでゆく。

 なんか面白そうってゲームに無理やり参加させられ、その体を操られ、弄ばれて死んでゆく。

 欲望にまみれたオークションに無理やり参加させられ、媚薬に体を操られ、弄ばれたエルフたちのように。

 無理やり弄んでやった。
 失神しても……何度も、何度も起こしてやった。

 しかし、僕の気持ちは収まらない。
 こいつらは、この程度で死ねることを喜んで死ぬべきだ。
 
 そうして、ようやく最後の一人になったので、そいつの体を浮かし将軍に向かって叩きつける。
 大の字になって潰れる様は、回転ととも下降していき、やがて、将軍からの熱い包容を享受するだろう。

 やつらの死に様はとても呆気なく。
 とても無意味で。
 なにも残らない。
 貴族共の傲慢な権力など、なんの価値もなかった。

 そして、僕は将軍を止めた。
 辺りが静寂に包まれたかと思えば、街の人々が逃げ惑い、恐怖に泣き叫ぶ声が微かに聞こえる。
 ガーゴイルが打ち出した火柱が、松明のように街全体を照らしている。
 僕はそんな絶望と狂乱が彩る夜景を見下ろし、静かに見惚れていた。

そして……


「エルフたちよ!!」


 僕はおもむろに叫び、同じく街を見下ろしていたエルフたちを見回す。
 声に気づき、彼女たちも僕を見つめ返してくれていた。

 そして僕は、僕を選んでくれた……未来を託してくれた彼女たちに誓いを立てる。


「君ちを苦しめた街は……ゴミクズ共は……今宵断罪される。
 もう、ゴミクズ共にエルフを殺させはしない!
 もう、ゴミクズ共の享楽にエルフが泣くことはないのだ!
 君たちを苦しめた過去は、僕が全部……全部! 全部! 全部破壊し尽くしてやる!!!」


 誰もが聴き入っていた。
 誰もがなにも言えなかった。
 公爵様は何か言いたそうだったが、おまえに発言させる機会はない。

「そして、クズ共に弄ばれているエルフのため、僕に助けを求めたフェリアーラを讃え、この地に彼女の巨大な裸婦像を建立する! ……予定だ」

「…………え?」

 感慨深く聞いていたフェリが何事かと顔をあげる。
 ニヤニヤとフェリを見つめる僕を見れば、聞き間違いではないと理解したようだ。

「え? いや、そんな……嘘ですよね?」

 僕はニヤニヤとなにも答えない。

「あの……え? え? いや……嫌ですよ! そんなこと絶対ダメです!!」

 そんなフェリの悲痛な叫びも虚しく、僕はニコっといたずらな笑みを向けると、大声で笑いながら将軍を動かした。
 もう、いくら叫んでもフェリの声は届かない。
 フェリアーラの巨大な裸婦像建立のために、将軍がせっせと地ならしをしていた。
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