みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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西の大陸蹂躙

心に傷を負ったエルフのために魔王がしたこと 憐れな傀儡とクソ公爵の秘密

「おまえ、エルフだったんだな」

「なんでそのことを知ってんだよ」

 秘密だったらしい。しかし、クザンが表情を変えることはない。

「んで、呪われてる」

「……やっぱりそうだよな」

「あ? 自分でステータス見りゃわかんだろうよ」

「はぁ? なんだそれ」

「……いやいい。急に面倒になった」

 ステータスを見ることができるのは、どうやら僕の能力だったらしい。

 それにしても……この結末はいかがなものか……。

「おまえの子供はどこにいんだよ」

「なんだ? 子供にまで手を出すのかよ」

「うっせ! 俺はエルフを助けに来たんだ。おまえの子供も助けるって言ってんだよ」

「はぁ。よくわかんねぇけど、俺の子なら公爵が連れてったっきりだぜ」

「うぉい! まじかよ! じゃあアインケルンにいるのか?」

「多分な」

「あーなら悪い。もう殺したかも」

「……そうか。まあ、それならそれでしかたねぇ」

 世捨て人も、いっそここまで来ると逆に清々しい。

「で、おまえにかかってる呪いってのはどんなものなんだ?」

「はぁ……よくはわかってねぇけど、出れねぇってのと、多分女を抱くのもそうだろうな……あんなおっ広げてやる趣味はねぇ。それに、抱くのもそこまで好きじゃねぇしな、面倒だし。それと、俺に刃向かうエルフを殺すってのもそうだろう。おまえには何されても怒りが湧かねぇってのがその証拠だ。それと……」

「それと?」

「自分を傷つけることはできなかったな」

 僕は先ほどからずっと表情を変えないクザンを見下すように睨みつける。

「…………あんだよ。なんか言えよ」

「……」

「チッ……だんまりかよ」

「……助けて欲しいか?」

「あぁ? 殺せって言ってんだろ?」

「この里から出たくはないのか?」

「もういいよ」

「女を無理に抱かなくて済むぞ」

「そりゃいいな。そろそろ俺も年だし」

「もう、同族殺しもしなくていい」

「……」

「おまえが死んだところで、おまえを縛っていたやつはなんとも思わない。次のおまえができるだけだ」

「……だろうな」

「……殺してやりたいとは思わないか?」

「はは……不思議と思わないんだな、これが」

「なんでだよ」

「さあ、俺にもわかんねぇ」

「そうか……クックック……」

「なに笑ってんだよ、気持ち悪りぃな」

 なにをしても、なにをやってもこいつの感情は動かない。
 呪いによって、己の半生を蝕まれ、死ぬことも、ここから出ることも、己の感情を持つことも許されなかった傀儡。

 自分がなんのため……なにをしたいかすらも……感情を殺され、理解すらできなかった憐れな殺人鬼。

 こいつも、被害者ということなのだろう。

「公爵のところへ行こう」

「あ? だから行けねぇって言ってんだろ?」

「里に来てるんだよ」

「そうかよ」

 このままでは拉致があかないので、クザンを連れて、僕は公爵の下へと戻った。
 騒ぎを聞きつけて僕の周りを里のエルフたちが訝しげに遠くから監視している。
 しかし、クザンを連れて歩いているせいか、誰も近寄っては来なかった。

「おまえ、嫌われてんだな」

「そりゃそうだろう。ウゼェやつはぶっ殺してきたからな」

「はは! おまえ……いや、楽しみだよ」

「は? なにが?」

「いや……もう見えるだろう? あそこに公爵がいる」

 霧のせいで見えなかった今日のツアー客たちが、だんだんと見えてきた。
 その中で、素っ裸の男と、豪華な衣装に身を包んだ男が今日のメイン客だ。
 そして、僕を睨んだままなにも言わない公爵の拘束を解き、話ができるようにしてやった。

「公爵……ようやく話ができるな……どうだ? 今の気分は」

 俯き、ゆっくりと顔を上げれば、公爵は弱々しい声で言葉を紡ぎだす。

「……すまない。本当に申し訳なく思っている。今まで私がしてきたことは、許されないかもしれない……しかし、私は……心を改め、真っ当に生きていくことを誓う……本当に、申し訳ない」

 公爵は涙を流し、震える声で己の罪を認め、謝罪と自戒の言葉を垂れ流す。
 なにも知らない者が見れば、深い反省と、その誠実な態度から、容赦を考えてしまうだろう。

「ほう……じゃあ、クザンの子の居場所を吐け」

「!? ……い……いや……それは私にも……」

 公爵は飛び出してしまうのではないかというほどに目を見開き、知らぬ存ぜぬの素ぶりを見せた。
 明らかに目は泳ぎ、こちらを見ようとはしない。嘘つきの証を垂れ流している。

「おい……僕に嘘をつくなんて、今すぐ死にたいのか?」

「い……いや……そっそうだ! 彼女はギルドの依頼を遂行中で、今はどこにいるかわからん。そのような時に、アインケルンの状況が一変してしまい、私にもどこへ行ったのかわからないのだ! 本当だ! 信じてくれ!」

 今考えたのだろうか? それとも真実か? どうも……怯えた感じが薄い。まだなにか隠していそうだ。

「ふむ……まあいい。では、バーディとは何者だ?」

「な!? なんで……その名を……」

 そのうち、本当に目玉が飛び出してしまうんじゃないかというくらい先ほどから驚きっぱなしの公爵。

「知っているようだな。全部吐け」

「くっ……貴様は……いったいどこまで」

「あまりわかっていないのだ。だからおまえに聞いている」

 そして、僕は公爵を陥れる情報を得るため、なにかないかと公爵に触れてステータスを探った。
 だが……

 //
 職業 エルフの血を継ぐ貴族 lv150
 名前 アラン・ヨハネシア
 生命力 1200
 攻撃力 110
 防御力 100
 魔力  80
 魔攻  60
 魔防  40
 素早さ 140
 幸運  290

 グッドステータス
 バーディの呪いの管理者(同名呪い無効・同名呪いを受けた者への命令、遠距離通話・触れている者への里内拘束解除)

 スキル
 扇動者 投擲(精度小) 射撃(精度小) 
 //


 僕はため息を吐いた。
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