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西の大陸蹂躙
心に傷を負ったエルフのために魔王がしたこと 解き放たれた傀儡
「く……くくく……こりゃあ……いい。そうか……本当に呪いの効果だったのか……俺は……はは! なんだよこの感じ……いい……いいじゃねぇか!」
「どうだ? まだ死にたいか?」
「冗談はよしてくれ! こんなんじゃ死ねねぇよ! 娘の顔も見てぇしな!」
「ふっ……おまえの娘にかかった呪いを解くかどうかは、僕次第なんだけどなー」
「ああ? 解いてくれんだろ? エルフを助けてくれるんじゃねぇのかよ」
「じゃあ、俺に忠誠を誓え。魔族となり、人間を殺す手伝いをしろ」
「けっ! ……今度はおまえの呪いにかかれってか?」
「ああそうだ。どうせ死にたがってた人生だろ? 娘の呪いを解いてやるから、僕にその対価を支払え」
「まったく……つくづく運のねぇ人生だな」
「面白いことを言う。おまえのステータスを見たが、運は0だった。僕ですら1なのにも関わらずな」
「うるせ! 対して変わんねぇじゃねぇか!」
「チッチッチ! 僕には幸運の女神がいるんだよ」
「あんだ? フェリアーラのことか?」
「フェリもそうだが……まあいい。どうするんだ?」
僕の言葉に渋い顔を見せ、クザンはどこか遠い目をして思いに耽っているようだった。
しかし、そんな似合わない顔は続かず、ニヒルな笑みを浮かべたと思えば、僕を見つめ直して覚悟を口にする。
「なんもない人生だったが、たった一人の娘を救えるなら……おまえに人生預けた方がマシってもんだな。ただ……」
「ただ?」
「このままじゃつまんねぇだろう? 俺と勝負しろ! もちろんこの束縛はなしでな!」
「おまえ……勝負しろ! なんて言っておいて、随分堂々とハンデ戦を要求するんだな……」
「うっせ! こんなんじゃ勝負にならねぇだろう? それに、なんかこう……もっとガチンコ勝負で叩きのめされた方が、付き従う気にもなるじゃねぇか」
ニヤニヤと叩きのめされたいとのたまうマゾ。
それならお望み通り、魔王の恐ろしさをとくとその目で見るがいい。
「はぁ……理論は崩壊しているが……気持ちは伝わったよ。おまえの体に教え込んでやる。……魔王の強さをな」
「ああ、それでいい! っかぁ! ゾクゾクしてきやがった! ああ……いい……こりゃあ、娘も解いてもらわなきゃな!」
もう無茶苦茶理論すぎる……娘の呪いを解いて欲しいのに、もし殺してしまったらとか考えないのだろうか?
クザンは配下にしたら、お勉強から始めないといけないな……。
突拍子もないクザンの物言いから始まった一戦。
しかし、それを歓迎するかのようにエルフの里を漂っていた霞はいつのまにか晴れ、僕たちの周囲を取り囲むように里のエルフたちが固唾を飲み込んでいた。
僕はクザンを見物客の中央へ移動させ、拘束を全て解く。
解放され、クザンは腕をぐるぐると回し、体をほぐすように全体をひねれば、巨躯をこちらに向けて薄笑い浮かべた。
無駄な一戦であり、クザンにとっては、記憶に深く刻み込まれるであろう一戦。
仕方なしに受けてみたものの、舞台は囃し立てるようにその戦いを望み、里にいる全てのエルフたちが見守る祭りごととなっていた。
僕は面倒くささが抜けず、だらしなくクザンの前まで行けば、その巨体は嬉しそうに破顔した。
「おうおう、魔王様よう、さっきみたいなヘボパンチしか出せないなら勝負になんねぇぞ? 俺は攻撃が当たらないってスキル持ちなんだ。頭使ってよーく考えろよ?」
まったくもって煽りのうまいやつだ。少々カチンときてしまった。まあ、この程度で取り乱すわけもないが。
「そーだな、あんなヘボパンチの魔王様には、可愛そうだから10秒なにもしねーでやるよ。だからよ、一発でも当ててみろよ! あたんねーと思うけど、せいぜい足掻きな……魔王様」
僕は俯き、角の付け根を掻きながら聞いていた。
クザンのクソ野郎には、どうやらきつーいお灸を据えなければならない。ああ、もちろんこんなことで取り乱す僕じゃないが、ここまで言われてへこへこする気もない。
せっかくちょっと痛めつけて終わらせてやろうかと思っていたが……ちょっと痛い目にあってもらおう!
「あー、グダグダうるせーやつだ! せっかく少しくらい慈悲の心を持って相手をしてやろうと思ったのに……おまえのその物言いにお灸を据えてやるよ」
「あれあれ? 怒っちゃった、ちょっと本気出してやるよ的な? ヘボパンチが当たらなかった時の保険でもかけてんのかな? 大丈夫、誰も笑ったりしねぇって! 俺が強いのはここにいるみんなが知ってっからさ! 安心してかかってきな」
クソクザン、許すまじ!
「はっはっはっは! 弱い者ほどよく吠えるとはこのことだな! いいかよく聞け! おまえたちもだ! エルフの里の者たちよ!
おまえたちは僕の庇護下に入った。だから、必ず救ってやる! 長らくクザンに脅かされながら里に拘束されていた恐怖を、クザンに殺されてしまった者たちの恨みを、今ここで晴らそう!
かくいうこのクザンも操られていただけのただの傀儡であり、おまえたちの仲間……エルフだ!
その忌まわしき運命の鎖は、この魔王が必ず断ち切ると誓おう!」
僕はクザンを睨みつける。
どこか怒りを宿しているような……そんな不敵な笑みだった。
「魔王に断罪されること、光栄に思え! 行くぞ!」
「どうだ? まだ死にたいか?」
「冗談はよしてくれ! こんなんじゃ死ねねぇよ! 娘の顔も見てぇしな!」
「ふっ……おまえの娘にかかった呪いを解くかどうかは、僕次第なんだけどなー」
「ああ? 解いてくれんだろ? エルフを助けてくれるんじゃねぇのかよ」
「じゃあ、俺に忠誠を誓え。魔族となり、人間を殺す手伝いをしろ」
「けっ! ……今度はおまえの呪いにかかれってか?」
「ああそうだ。どうせ死にたがってた人生だろ? 娘の呪いを解いてやるから、僕にその対価を支払え」
「まったく……つくづく運のねぇ人生だな」
「面白いことを言う。おまえのステータスを見たが、運は0だった。僕ですら1なのにも関わらずな」
「うるせ! 対して変わんねぇじゃねぇか!」
「チッチッチ! 僕には幸運の女神がいるんだよ」
「あんだ? フェリアーラのことか?」
「フェリもそうだが……まあいい。どうするんだ?」
僕の言葉に渋い顔を見せ、クザンはどこか遠い目をして思いに耽っているようだった。
しかし、そんな似合わない顔は続かず、ニヒルな笑みを浮かべたと思えば、僕を見つめ直して覚悟を口にする。
「なんもない人生だったが、たった一人の娘を救えるなら……おまえに人生預けた方がマシってもんだな。ただ……」
「ただ?」
「このままじゃつまんねぇだろう? 俺と勝負しろ! もちろんこの束縛はなしでな!」
「おまえ……勝負しろ! なんて言っておいて、随分堂々とハンデ戦を要求するんだな……」
「うっせ! こんなんじゃ勝負にならねぇだろう? それに、なんかこう……もっとガチンコ勝負で叩きのめされた方が、付き従う気にもなるじゃねぇか」
ニヤニヤと叩きのめされたいとのたまうマゾ。
それならお望み通り、魔王の恐ろしさをとくとその目で見るがいい。
「はぁ……理論は崩壊しているが……気持ちは伝わったよ。おまえの体に教え込んでやる。……魔王の強さをな」
「ああ、それでいい! っかぁ! ゾクゾクしてきやがった! ああ……いい……こりゃあ、娘も解いてもらわなきゃな!」
もう無茶苦茶理論すぎる……娘の呪いを解いて欲しいのに、もし殺してしまったらとか考えないのだろうか?
クザンは配下にしたら、お勉強から始めないといけないな……。
突拍子もないクザンの物言いから始まった一戦。
しかし、それを歓迎するかのようにエルフの里を漂っていた霞はいつのまにか晴れ、僕たちの周囲を取り囲むように里のエルフたちが固唾を飲み込んでいた。
僕はクザンを見物客の中央へ移動させ、拘束を全て解く。
解放され、クザンは腕をぐるぐると回し、体をほぐすように全体をひねれば、巨躯をこちらに向けて薄笑い浮かべた。
無駄な一戦であり、クザンにとっては、記憶に深く刻み込まれるであろう一戦。
仕方なしに受けてみたものの、舞台は囃し立てるようにその戦いを望み、里にいる全てのエルフたちが見守る祭りごととなっていた。
僕は面倒くささが抜けず、だらしなくクザンの前まで行けば、その巨体は嬉しそうに破顔した。
「おうおう、魔王様よう、さっきみたいなヘボパンチしか出せないなら勝負になんねぇぞ? 俺は攻撃が当たらないってスキル持ちなんだ。頭使ってよーく考えろよ?」
まったくもって煽りのうまいやつだ。少々カチンときてしまった。まあ、この程度で取り乱すわけもないが。
「そーだな、あんなヘボパンチの魔王様には、可愛そうだから10秒なにもしねーでやるよ。だからよ、一発でも当ててみろよ! あたんねーと思うけど、せいぜい足掻きな……魔王様」
僕は俯き、角の付け根を掻きながら聞いていた。
クザンのクソ野郎には、どうやらきつーいお灸を据えなければならない。ああ、もちろんこんなことで取り乱す僕じゃないが、ここまで言われてへこへこする気もない。
せっかくちょっと痛めつけて終わらせてやろうかと思っていたが……ちょっと痛い目にあってもらおう!
「あー、グダグダうるせーやつだ! せっかく少しくらい慈悲の心を持って相手をしてやろうと思ったのに……おまえのその物言いにお灸を据えてやるよ」
「あれあれ? 怒っちゃった、ちょっと本気出してやるよ的な? ヘボパンチが当たらなかった時の保険でもかけてんのかな? 大丈夫、誰も笑ったりしねぇって! 俺が強いのはここにいるみんなが知ってっからさ! 安心してかかってきな」
クソクザン、許すまじ!
「はっはっはっは! 弱い者ほどよく吠えるとはこのことだな! いいかよく聞け! おまえたちもだ! エルフの里の者たちよ!
おまえたちは僕の庇護下に入った。だから、必ず救ってやる! 長らくクザンに脅かされながら里に拘束されていた恐怖を、クザンに殺されてしまった者たちの恨みを、今ここで晴らそう!
かくいうこのクザンも操られていただけのただの傀儡であり、おまえたちの仲間……エルフだ!
その忌まわしき運命の鎖は、この魔王が必ず断ち切ると誓おう!」
僕はクザンを睨みつける。
どこか怒りを宿しているような……そんな不敵な笑みだった。
「魔王に断罪されること、光栄に思え! 行くぞ!」
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