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西の大陸蹂躙
心に傷を負ったエルフのために魔王がしたこと 永遠に刻まれる刹那の一戦
***
魔王が少し苛立ちを隠せなくなってきていたのは、わかった。
俺の煽りも少しは役に立ったようだ。
この一戦は、魔王の強さを計る一戦であり、俺がついて行かなきゃなんねぇ相手を見定める一戦だ。
もし、つき従うのなら強い相手がいい。
自分より弱いやつには従いたくない。
魔王が十分強いのはわかっていたが、もっと、俺みたいな馬鹿にも伝わるような強さを感じたかった。
未だかつて、躱せなかった攻撃なんてない。
未来がなんとなく見えるから、ほとんどの攻撃は外したことがない。
だから、俺は昔から自分を最強だと思っていた。
最強過ぎて、もう誰も戦っちゃくれなかった。
寝込みを襲われようが、行為中だろが、怠けて勝負したとしても、一度も負けることはなかった。
だから、俺より強いやつと戦える絶好のチャンスだってワクワクしてたのに……魔王は要らぬ水を刺しやがった。
魔王は啖呵を切り、ずっと隠していた俺の秘密をばらしやがった。
こいつらに俺がエルフだってことをバラして何の意味がある? 操られているなんて知れば、あいつらの怒りの矛先はどうなる?
せっかく俺という悪の存在がいるのに、そんなこと知ったら、やり切れない思いのはけ口がなくなってしまうじゃないか。
こいつらは、俺が悪だと思っていたからこそ、心をちゃんと保てたんだ。
身に降りかかる不幸の出所は、全部俺だと恨みながら生きていたんだ。
それで終いでいいじゃねぇか……。
しかし、魔王は続けた。忌まわしき運命の鎖を断ち切るなんてほざきやがった。
なんて綺麗事を言いやがる。
何十年も繰り返されてきた悲しみは消えない。
何十年も募らせてきた怒りは消えない。
おまえがエルフを守るだと?
笑わせるな!
クザンは沸々と煮えたぎる怒りを感じていた。
自分が守っていると思っていた。
自分さえ我慢してれば、みんなは少なからず救われると思っていた。
しかし、それは環境に甘んじた傲慢な自尊心の塊なだけで、自分が何かできたわけじゃない。
魔王のように、呪いを解いたわけじゃない。
諸悪の根源を連れて来て、謝罪させたわけでもない。
ただただ、不幸を受け入れ、そのはけ口を担っていただけのつまらないプライドだ。
だから、嘘じゃないことはわかっている。
ああそうさ、おまえが言ったように、忌まわしき運命の鎖とやらは断ち切られたんだろうよ!
だけどな……こちとらハイそうですかと割り切れるほど、生半可な仕打ちを我慢していたわけじゃねぇ!
おまえのせいで、今まで感じたことなんかなかったクソみたいな怒りが、ぐちゃぐちゃになって、もう、どうしようもねぇくらいにそこらじゅうで爆発してんだよ!!
俺が感じている怒りなんて、吐き出したところで誰もが馬鹿にするだろうさ! なにもかもが筋の通ってない話だって罵るだろうさ!
だって……
俺が殺したんだ!
俺が閉じ込めていたんだ!
俺が犯していたんだ!
俺が黒幕と通じていたんだ!
なにもかもが俺のせいだ!
それを今更……許しを請うことなんて許されるわけがねぇじゃねぇか!
生まれた時から裏切り者の運命が決まっていた憐れな男だったとしても……誰も割り切れるわけがないくらい……俺のしたことは許されるもんじゃねぇ……。
かくいう俺だって自分自身を許せねぇ!
何度も死のうとしてみたが死ねなかった。
何度も忌まわしい感情に逆らおうとも逆らえなかった。
殺すたびに喜びが植え付けられた。
犯すたびに快楽が自分を動かした。
公爵の命令を聞くたびに、優越感で満たされた。
全ては俺の感情がしたこと。
たとえ誰かに許されたところで……
……怒りに暮れ、我を忘れていたのかもしれない。
もしくは、最強だと思い込んでいた傲慢な態度が、そうさせたのかもしれない。
いや、言い訳だ。
俺は見ていた。
啖呵を切り終え「行くぞ!」と開始が告げられたのを聞いていた。
そうだ、未来を見たんだ。
魔王がどんな攻撃をするのかが気になって、未来予知を発動したんだ。
でも、その未来と、現実は同時に起こった。
俺の左腕は吹き飛び、地に転がされている未来は、同時に現実だった。
はは……わかんねぇもんだな。
せっかく力のほどが知りたかったのに、さっきといい今といい……まったくわけがわかんねぇ。
クソ! こんなんずりぃぞ!
ああ、なんか痛え……初めて痛みなんてものを感じたかもしんねぇ。
あ……魔王の野郎……俺を見下ろして笑ってやがる。
チッ……あーあ、終わっちまった……さてさて……なにを言われるやら……
「おまえを救ってやる。魔族になり、俺につき従え」
けっ……そうだったな……
「……へへっ……ああ……仰せのままに……」
クザンは魔王に向けて、手を伸ばした。
***
魔王が少し苛立ちを隠せなくなってきていたのは、わかった。
俺の煽りも少しは役に立ったようだ。
この一戦は、魔王の強さを計る一戦であり、俺がついて行かなきゃなんねぇ相手を見定める一戦だ。
もし、つき従うのなら強い相手がいい。
自分より弱いやつには従いたくない。
魔王が十分強いのはわかっていたが、もっと、俺みたいな馬鹿にも伝わるような強さを感じたかった。
未だかつて、躱せなかった攻撃なんてない。
未来がなんとなく見えるから、ほとんどの攻撃は外したことがない。
だから、俺は昔から自分を最強だと思っていた。
最強過ぎて、もう誰も戦っちゃくれなかった。
寝込みを襲われようが、行為中だろが、怠けて勝負したとしても、一度も負けることはなかった。
だから、俺より強いやつと戦える絶好のチャンスだってワクワクしてたのに……魔王は要らぬ水を刺しやがった。
魔王は啖呵を切り、ずっと隠していた俺の秘密をばらしやがった。
こいつらに俺がエルフだってことをバラして何の意味がある? 操られているなんて知れば、あいつらの怒りの矛先はどうなる?
せっかく俺という悪の存在がいるのに、そんなこと知ったら、やり切れない思いのはけ口がなくなってしまうじゃないか。
こいつらは、俺が悪だと思っていたからこそ、心をちゃんと保てたんだ。
身に降りかかる不幸の出所は、全部俺だと恨みながら生きていたんだ。
それで終いでいいじゃねぇか……。
しかし、魔王は続けた。忌まわしき運命の鎖を断ち切るなんてほざきやがった。
なんて綺麗事を言いやがる。
何十年も繰り返されてきた悲しみは消えない。
何十年も募らせてきた怒りは消えない。
おまえがエルフを守るだと?
笑わせるな!
クザンは沸々と煮えたぎる怒りを感じていた。
自分が守っていると思っていた。
自分さえ我慢してれば、みんなは少なからず救われると思っていた。
しかし、それは環境に甘んじた傲慢な自尊心の塊なだけで、自分が何かできたわけじゃない。
魔王のように、呪いを解いたわけじゃない。
諸悪の根源を連れて来て、謝罪させたわけでもない。
ただただ、不幸を受け入れ、そのはけ口を担っていただけのつまらないプライドだ。
だから、嘘じゃないことはわかっている。
ああそうさ、おまえが言ったように、忌まわしき運命の鎖とやらは断ち切られたんだろうよ!
だけどな……こちとらハイそうですかと割り切れるほど、生半可な仕打ちを我慢していたわけじゃねぇ!
おまえのせいで、今まで感じたことなんかなかったクソみたいな怒りが、ぐちゃぐちゃになって、もう、どうしようもねぇくらいにそこらじゅうで爆発してんだよ!!
俺が感じている怒りなんて、吐き出したところで誰もが馬鹿にするだろうさ! なにもかもが筋の通ってない話だって罵るだろうさ!
だって……
俺が殺したんだ!
俺が閉じ込めていたんだ!
俺が犯していたんだ!
俺が黒幕と通じていたんだ!
なにもかもが俺のせいだ!
それを今更……許しを請うことなんて許されるわけがねぇじゃねぇか!
生まれた時から裏切り者の運命が決まっていた憐れな男だったとしても……誰も割り切れるわけがないくらい……俺のしたことは許されるもんじゃねぇ……。
かくいう俺だって自分自身を許せねぇ!
何度も死のうとしてみたが死ねなかった。
何度も忌まわしい感情に逆らおうとも逆らえなかった。
殺すたびに喜びが植え付けられた。
犯すたびに快楽が自分を動かした。
公爵の命令を聞くたびに、優越感で満たされた。
全ては俺の感情がしたこと。
たとえ誰かに許されたところで……
……怒りに暮れ、我を忘れていたのかもしれない。
もしくは、最強だと思い込んでいた傲慢な態度が、そうさせたのかもしれない。
いや、言い訳だ。
俺は見ていた。
啖呵を切り終え「行くぞ!」と開始が告げられたのを聞いていた。
そうだ、未来を見たんだ。
魔王がどんな攻撃をするのかが気になって、未来予知を発動したんだ。
でも、その未来と、現実は同時に起こった。
俺の左腕は吹き飛び、地に転がされている未来は、同時に現実だった。
はは……わかんねぇもんだな。
せっかく力のほどが知りたかったのに、さっきといい今といい……まったくわけがわかんねぇ。
クソ! こんなんずりぃぞ!
ああ、なんか痛え……初めて痛みなんてものを感じたかもしんねぇ。
あ……魔王の野郎……俺を見下ろして笑ってやがる。
チッ……あーあ、終わっちまった……さてさて……なにを言われるやら……
「おまえを救ってやる。魔族になり、俺につき従え」
けっ……そうだったな……
「……へへっ……ああ……仰せのままに……」
クザンは魔王に向けて、手を伸ばした。
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