みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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西の大陸蹂躙

サタン様からもらったスキルは、やっぱりチートスキルだったようです!

「あ……」

 クザンが安静に寝ている部屋に入ると娘と談笑しているクザンを見つける。

 ミラだったか……確か。

「よお! クザン。娘との感動の再会はどうだ?」

 クザンは体を起こし、回復魔術で塞がれた腕をさすりながらこちらを向いた。

「ああ……悪くねぇな」

「んー? 随分大人しいじゃん」

 僕の言葉にクザンは鼻を鳴らしてニヤッと笑う。

「ふん……もう行くのか?」

「ああ……娘と一緒にここで過ごすか? 里を守るって言うなら置いていってやってもいいが?」

 クザンはニヒルな笑みを浮かべたまま僕を見つめ、娘を一瞥すると少し視線を落とした。

「いや……もう決めたんだ。命令なら聞くがな」

 視線を落としたクザンの肩に手を添え、仲睦まじく視線を合わせる二人を見ていると引き剥がすのもどうかと思えてくる。
 僕について来たってやることは人殺しであり、安寧などどこにもない。

「なんだ? ずいぶんカッコ悪いこと言うんだな。娘に心動かされて感傷にでも浸ってんのか?」

「けっ! そうかもな」

「ふん……じゃあ丁度いい。新しい力を手に入れたから、ここで使わせてもらおう!」

 理由はなんでもよかったが、クザンの気持ちを知るには丁度いいだろう。
 そして……僕は念じてみた。が……何も起こらない。仕方ないのでクザンの肩に触れ念じてみた。すると、意識は飛び、真っ白な空間に放り出される。

***

 前を見ればそこにはクザンもいて、周囲をキョロキョロと伺っている。

「おい! クザン!」

「おわっ! なんだ? 耳元で声が……誰だ!」

 ……なるほど。僕のことは見えないらしい。しかも、僕の声と気づかないってことは違う声色が聞こえているのだろうか? これは……なかなか面白いことになった。

「お前は娘と会えて嬉しかったか?」

「ああ? なにを……」

「聞いているんだ。早く答えろ」

「なんでそんなこと言わなきゃなんねぇんだよ! ふざけんな! ここから出せ!」

 クザンは慌ただしく周囲を警戒しながら叫び続けるだけで、ちゃんと答えようとはしなかった。

 ……んー、やっぱこの異質な空間が良くないよなぁ。なんかこう吐き出したくなるような雰囲気があればなぁ。クザンが話したくなるような雰囲気……娘か。

 僕がそう思った時、異質な空間にクザンの娘が現れた。

「おわ!? ミラ!?」

 突然現れたクザンの娘ミラ。
 その顔に生気はなく、目は虚ろに一点を見つめている。

 ……あー、これ……これ……やばくね? いやー精神の詰責? これヤバイわー、詰責とか意味わかんないけど……。こんなん簡単に心が壊れちゃうよ……。

 今、僕の心は興奮に包まれている。
 誰の心でも簡単に壊してしまえそうなこのチートスキルの使い道は無限に広がっており、人間たちの心を壊したいという欲求が破裂しそうだった。

「おい……大丈夫か? ミラ?」

 クザンが娘を心配するように片方しかない腕でミラを揺する。
 すると……ミラはいとも簡単にバランスを崩し、ヤバイ倒れ方をした。

「おい! おい! ミラ!!」

 今にも泣き出しそうなクザン。
 死んでいてもしょうがないなんて言っていたのが嘘のようだ。
 僕はいろいろ試そうと思いミラを動かしてみる。
 すると、ミラは魔族にした者を操るように自在に動かすことができた。

「……お父……さん?」

「ミラ!? ああ……よかった……」

 クザンは心底安心した様子でミラを見つめている。

 あーあ。クザンもやっぱ娘は大事なんだな。ちょっと引き離すのは可哀想か……。

 僕はいつものクザンとは違う純粋な一面を見て少し胸が痛かった。

 あと試すことは……風景か……よし。

 僕が念じると、白く何もない空間はエルフの里へと変貌した。
 里の広場でポツンと取り残されたように立ち尽くす二人。
 クザンは急に場面が変化したため慌てふためいている。そして、クザンを操れるか試す。やはり、クザンも操れるようだ。

 僕はクザンの腕をミラへと伸ばし、首に手をかける。じわじわとミラの首を締めていく。

「クッ……なん……だよこれは……ふざけ……んな!!!」

 一生懸命動抗おうとしているのだが抗えるわけもなく……やがて、クザンの手はミラの首を握り潰した。

 ……ここまでしなくてもよかったが、問いかけた側としては答えが欲しい。
 しかし、いくらクザンが答えを拒もうとも、今にも泣きそうな彼の表情が質問の答えだろう。
 僕はこれで終わりにしようと思い、精神の詰責を終了させようとしたら……

 ——記憶に反映させますか?

 ……なんだこのゲームシステム的な感じは……まあいいか。しない……っと。

 すると、意識は肉体へと帰っていく。

 ***

 意識が戻れば、僕がスキルを発動した状態に戻っていた。

「なにが始まるんだよ」

 クザンはこちらを向いて僕の行動を訝しげに伺っている。
 しかし……

「おまえ……なに泣いてるんだ?」

「あ? あれ……なんだこれ?」

 クザンは僕に言われて顔に手をやると、頬を伝った涙を拭った。

「ミラ、僕がクザンの肩に手を置いてからどのくらい経った?」

「え? あの……今置いたばかりだと思うのですが?」

「置いたばかりとは?」

「え? えーっと……10秒くらい……でしょうか?」

「そうか……」

 僕は堪らず破顔してしまう。
 今しがた会話していた時間と同じということは……あの空間にいる間は時間が経過しないのだろう。
 正直スキル名を見たときは落胆したが、これは間違いなくチートスキルだ。
 僕は新たなおもちゃを手に入れ、これからこのスキルを使っていろいろ楽しいことができると思うと、とても、とても稚拙な好奇心が疼くのを感じていた。
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