みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

南の大陸へ!

「おいおい……大丈夫か? 顔がおかしなことになってんぞ?」

 クザンは僕の破顔した顔を訝しげに見上げて心配そうに僕へと声をかけた。

「あ? ああ……いや、なんでもない。そうだ……ミラ、おまえもクザンと一緒に来るか?」

「は!? ミラは関係ねぇだろ!?」

「うるせ。ミラ、どうだ?」

 ミラは激昂する父親に戸惑いながらも、自分の中では決まっていたらしく、はっきりと僕に意見した。

「申し訳ありません。私はエルフの里のために生きたいと思っています」

「……そうか。わかった」

 貴族の下にいたせいか、ミラの礼儀作法はとても丁寧で父親よりもしっかりしている。

「ありがとうございます」

「はっはっは! クザン、おまえが育てたらこんなにいい子に育ったかな?」

「うるせ!」

 茶化すとウザそうに一蹴されたが、そこまで嫌な顔をしてはいない。
 感動の対面もそこそこに、気の短い僕はクザンに迫った。

「で……どうすんだ?」

「……里は娘に任せて、俺は魔王様に義理を果たすよ」

「よし、じゃあすぐ立つぞ!」

「ああ……」

 クザンはベッドから起き上がり、娘を一瞥すると僕の後を歩き建物を出た。
 すると……

「どこ行く気?」

「そうですよ。置いていくつもりですか?」

 クザンと僕を待っていたかのようにリッカとフェリがいた。

「ん? もういいのか?」

「ええ」

「んー」

 フェリは笑顔でそう答え、リッカは少しご機嫌斜めだ。
 次に行く所は少しだけ面倒だから、仲間がいるのはありがたい。

「まったく……人を殺しに行くんだぞ?」

「うん。あなたがいればいい」

「私は少し怖いですけど……リッカと同じです」

 二人は真顔で恥ずかしげもなく愛を語る。

「…………クックック」

 笑ってしまった。
 こいつら本当にわかっているのだろうか?
 ……まあ、考えるのも面倒だし、今はいいか。耐えられないのなら里に帰せばいい。この二人にはもう帰る場所はあるんだ。
 それに、今回の旅は直接殺すことはそんなにないと思うしな。

「あーそうそう、僕の名前なんだけど、ルーシェ・サタン。これからそう名乗るからよろしく」

「……ルーシェ。うん、ルーシェ! わかった!」

「よい名前ですね!」

 リッカは僕の名前を連呼し、フェリは優しい笑顔をで歓迎してくれた。
 少しイエスマンっぽいが、うーん……多少はしょうがないだろう。クザンに拒否権はないがな!

「ああ。よろしくな。じゃあ、ガーゴイルにに乗って、次は南の大陸だ。少し長旅になるかもしれないから、食料3人分3日間くらい用意してきてくれ。里の入り口で待ってる」

 そうお願いすると、みんなは里長の所へと散っていった。
 こういった面倒な交渉ごとを率先してやってくれるのはありがたい。まあ……あいつらのことだから、自分でやれって感じだけどな。

 そして、旅支度を済ませて入り口に集まって来たのは……里のみんな。
 見送りに来てくれたらしい。
 僕たちは里のみんなに見送られ、南の大陸へと飛び立った。

 そして、空では……

「あ! てめっ! んのやろう!」

「へへっ! ちんたら乗ってんじゃねぇよ!」

 クソクザンの野郎が競争だとか言って僕に挑んできやがった。
 なぜかガーゴイルの操作が上手く、トップスピードを維持しながら飛んでいる。

「クザン! こっちは三人も乗ってるんだから調子にのるな!」

「そんなんで3日後に着くのか? もうすぐ日が暮れるぞ?」

 どうやらクザンはわかっていないようだ。
 この3日間はほぼずっと空で過ごすことになるということが。

「あーそれは大丈夫。今回睡眠も空でしてもらうから」

「は? こんな不安定な背中で寝ろってのか?」

「文句言うな! 結構大きいガーゴイルを見繕ったんだから我慢しろ!」

「いやいや、落ちちゃうだろ!」

「優秀なガーゴイルを信じろ。リッカだってフェリだって一晩寝たことがあるんだから大丈夫だ」

「マジかよ」

 そう言うと、クザンは憑き物が落ちたようにしおらしくなり、この先レースだなんだと騒ぐことはなかった。
 クザンはガーゴイルから何度か落ちそうになったが、女子二人は僕が寝ずに抱きかかえていたから問題ない。ちょっといたずらはしたが。
 そんな退屈な旅も終わり、南の大陸の王都っぽいところへとたどり着いた。

 怪しまれないよう遠くから歩いて城門へと向かう。
 3日間ほぼ空にいたため、皆それなりに上機嫌になっていた。
 そして、たどり着けばそこには門兵が二人。
 僕はフードを深々と被り、角を隠して通ろうとしたら……やっぱり呼び止められた。

「止まれ! おまえたち……何者だ、要件を言え」

「えーっと、流れの傭兵を雇ってくれるところってありませんかね?」

 門兵は難しそうな顔をすると、ぷっ! っと吹き出した。

「おまえたちが傭兵? 唯一ガタイがいいやつだって腕が片方しかないんじゃ雇ってくれないぜ?」

 女二人に、痩せ男と片腕のタフガイ。この世界の最強(僕)のパーティーだというのに見る目がない。

「試してみるか?」

 僕がギロリとそちらを見れば、途端に慌てる門番。

「馬鹿やめろ! こんなところで騒ぎを起こしたりしたら俺の仕事がなくなっちまう。あそこの建物で取りあえず手続きだ……おい! こいつら案内してくれ。傭兵希望だ」

「はい!」

 詰所にいた兵士が僕らを案内してくれたのはギルドだった。

「じゃあ、ここで手続きしてください! 私はこれで」

 そう言うと兵士は足早に去り、代わってギルドの受付女に案内される。
 それからはまあ、ステータス確認とかのお約束はなく、名前と過去のザックリとしたことを話して終わりだ。
 ただ、フェリもリッカも有名人だったらしく、ギルドの人も喜んでいた。

 そのおかげか、ランクは白、赤、黒、銀、金の中で一番高い金等級冒険者となれた。
 そして、職員に聞いてみたら、ここはデガンニークだったらしい。
 うまく行き過ぎてて逆に怖い……が、しかし、それはほぼ間違いなくリッカの幸運のおかげなのだろう。
 僕はおもむろにリッカの頭を撫でてやると、調子付いて手を回してきたのでくすぐってやった。
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