みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

エルフの隠れた(どうでもいい)能力

 「では、明日またこちらにいらしていただけませんか?」

 ギルド職員は僕ではなく、なぜかフェリと話している。
 フェリも慣れているようで、淡々と話が纏まっていった。
 その間、暇だったのでリッカで遊んでたら、後でフェリに拗ねられてしまった。

「フェリアーラ様、そんなに拗ねないで!」

 ギルドから出ると、リッカが拗ねるフェリをどうにかなだめようと必死だ。

「……じゃあ、そのフェリアーラ様って呼び方じゃなくて、リッカもフェリって呼んでくれない?」

「いいよ! じゃあ、これからフェリって呼ぶね!」

「うん……。じゃあ許す」

「ふふ、よかった!」

 なんとか大人のフェリが折れてくれたようだ。
 これからは、ちょっと気をつけようと思う。

「仲直りは済んだか? 宿を探すぞ」

 そう言うと、二人は僕の両腕を仲良く取り合って、まさに両手に華といったところ。
 すれ違う人々の羨望の眼差しはとても心地よい。

「おうおう、随分と見せつけてくれるじゃねぇか」

「なんだ? クザンも女が恋しいのか?」

「いんや……俺は当分いい。毎日のようにヤッてたからな」

 毎日のように……4Pか?
 羨ましいを通り越して哀れでしかない。
 恐ろしい呪いもあったものだ。

「そうか。そういやクザン、腕欲しいか?」

「あ? こんなん治せねぇだろ」

「治せないけど、腕作ってやるよ」

「そんなこともできんのか? 魔王様は恐ろしいねぇ」

 もはやクザンは呆れていた。

「どんなのがいい?」

「んー。普通でいいかな」

「なんだよ。なんかもっとないのか? 弾が撃てるとか、そのまま剣になってるとか」

「普段かったるくなるだろ?」

 なんとも夢のない普通の意見だ。
 そういやこいつは、ちょっと腕っ節の強い普通の人だったな。

「……それもそうだな。じゃあ、気が向いたら作っとくよ」

「ああ」

 クザンと話していたら宿に着いたようだ。
 荷物らしい荷物もないし、すぐ入らなくてもいいのだが、とりあえず押さえておきたいとのことで、ここでもフェリに全部任せることになった。
 僕とリッカは大人しく待つ。ちゃんと学習したのだ。

「終わりました!」

 フェリがいなければ、これを全部やらなきゃいけなかったのか……こりゃ僕一人だったらイライラして王都潰していたな。

 改めてフェリが来てくれたことに感謝して、街でも見に行こうってことになった。
 サタン様が言うには面白いことになってるらしいし、それとなく情報収集もしてみたい。

 そして、ぷらぷらと城下を歩いていると……

「あー! あそこ! なんか美味しそうなもの売ってる!」

「痛い! 痛い! あんまり引っ張んな!」

 リッカが興奮気味に僕の腕を引っ張る。
 僕は回復できないし紙防御なのでダメージが心配だ。
 早々に物理防御を上げる装備を作らないと、気がついたら仲間に殺されていた……とかシャレになってない。

「そういや金はあるのか?」

 この世界に来て金の心配なんて初めてかもしれない。
 僕はフェリに懐事情を聞いてみた。

「そこまで少なくはありませんが……贅沢は難しいでしょうね」

「そうか……じゃあ持って来させるか」

「え? ルーシェ様はお金をお持ちなんですか?」

「フェリ……ルーシェ様はやめろ。ルーシェだ。だからほら、言ってみて」

「え? ……あの……うぅ」

 フェリはこういう奥手な感じで僕を誘ってくる。もともと小難しい職場で働いていたのもあって、すごく真面目で奥ゆかしい。

「ルーシェ……」

 フェリが呟くようにか細い声で僕の名前を口に出す……少し俯き加減で、僕を見ずに。

「なにかな?」

 僕はフェリの顔を覗き込む。頬はじんわりと赤く染まり、とても恥ずかしいのだろうということが伝わってくる。

「言えました……」

 可愛らしく僕を見つめ、なんだか誇らしげにそんなことを言うフェリをとても愛おしく感じた。
 僕は堪らず額を寄せて「よくできました」と褒めてあげる。両手が塞がっているので、抱擁はしてやれないが。

「金はいくらでもある。明日までにはなんとかしよう。どのくらいあれば盛大に遊んでもお釣りが出そうかな?」

「そうですね……大金貨15枚くらいあれば、ギルド高官の年収程度でしょうか?」

 お偉いさんの年収を使い果たせるかどうかは疑問だが、大金貨15枚程度ならこっそり持ってこれそうだ。

「それなら大丈夫そうだな。よーし、使い果しても問題ないから、いくらでも食べていいぞ! 太らない程度にな!」

「やったー! エルフは太らないからいくら食べても大丈夫だもーん!」

 と……上機嫌に屋台を荒らしていくリッカ。
 終いにはクザンと勝負を始めていた。
 屋台なので肉系中心だったのだが、こっちの世界ではエルフが菜食主義者なんてことはないみたいだ。クザンと一緒にガツガツ食っている。
 そして、その勝負の行方は……

「はっはっは! おめぇどこにそんな食いモンが入る場所があんだよ! 参ったぜ」

 クザンが負けた……というかこいつ、人よりちょっと多く食べる程度で、こんなところでも普通だった。

「クザンもまだまだだね! 私の勝ち!」

 上機嫌に笑うリッカだが……本当に持ってきたお金を食事で使い切る気かだろうか?
 
 僕は気になってリッカのお腹を触ってみる。

「なっ!?」

 あれだけ食べたというのに……全くお腹が出ていない……いったいどこへ……。

「ね! 言ったでしょ? ……でも、ちょっと食べ過ぎて苦しいかも」

「そりゃ……あんだけ食べれば……」
 
 呆れてなにも言えないが、食べた物のエネルギーを効率よく魔力に変換しているとかそういうことだろうか?
 エルフの隠れた生態を垣間見てしまった。
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