みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

戦争は婚約者を奪った王子様のせい? そして突然の窮地……

「いやー、いい食いっぷりだね! 最近は食材の値段も上がりっぱなしでね。助かるよ!」

 屋台の店主からお礼を言われてますます上機嫌になるリッカ。

「おじさんの料理が美味しかったからだよ!」

「いや参ったなぁ……はい、これおまけだよ」

「え? いいの? ありがとー!」

「いやー、そんなに嬉しそうにされたんじゃ、おじさんも嬉しくなっちゃうよ!」

 リッカは嬉しそうにおまけの串肉を受け取った。

 こいつ……おべっか使っただけで店主からおまけの串肉をせしめている……まだ食うのか。

「ふふ、でも、なんで食材の値段が上がってるの?」

「なんでも戦争が始まるみたいなんだよなぁ。噂じゃここの王子様が、ラスフェリカの王子様の婚約者を奪ったとか……まったくそんなんで戦争なんか起こされて、こっちはいい迷惑だよ」

 店主は恨み節だ。
 死ぬかもしれない戦争のキッカケがこれじゃ死んでも死に切れないだろう。

「すごい話だね。 なんでそんなことしたのかな?」

「俺も見たわけじゃないからなんとも言えないけど、もの凄くお美しいお方らしい」

「へー。なんて名前の人?」

「あー……なんだったかなぁ。えーっと——」

「——ヘレ」

「ああ! そうそう! ヘレ! 今じゃヘレ王太子妃だ。なんだ、連れのあんちゃんは知ってたのか」

 店主が僕を見て、知っていたのかと少し寂しそうな顔をした。
 もちろん知っていたわけではないが、リッカの運を考慮すればこうなるのは必然かと思っただけだ。

 しかし……面白いことになってるってのはこういうことか。
 いや……ただ、こんな下衆い話ならいくらでもあるだろうに……規模的な問題か?
 まだちょっとサタン様の意向を全て汲み取れた感じはしない。
 略奪された姫をさらに略奪したところで……

「いや……まあいい。あんたは戦争なのにこの国から逃げないのか?」

「ああ。そんなことしたら女神様に会えなくなっちゃうからな」

「女神?」

「そう……正真正銘の女神様だ! 奇跡ってやつを俺も見たぞ!」

 店主は興奮気味に身振り手振りでその凄さを表現している……終いには僕の前で祈り始めやがった。
 しかし……ここは抑えて情報収集を優先する。

「なんなんだ? その奇跡ってのは」

「ああ、ありゃ先月くらいだったか……馬車に轢かれた子を助けたんだ。そりゃもう見るも無残な状態で、風前の灯って感じだった。
 でも、最近この国に来たシスターさんが、彼女を奇跡の力ってやつで元通りに治してくれたんだよ。いやー、驚いたぜ」

 あまりよくわからないが、凄い治癒魔法ってことだろうか? 奇跡なんて誇張するのだから、生き返したってことだろうか?

「へー、そのシスターは今どこに?」

「教会にいるよ。まだ開いてると思うから行ってみな! 俺も休みの日にそこへ行くのが楽しみでな……なんだかさ、シスターの歌を聞いてると心があったかくなんだよ。不思議なんだけどな……もうこの国の男共はメロメロよ」

 店主は突然ヤバイ発言をしだした。
 僕の大嫌いな宗教に洗脳でもされたのだろうか?

「それ、本当に大丈夫か?」

「はは! 行きゃあわかる! ほら、早く行かないと閉まっちゃうぞ!」

「ああ、わかった。ありがとうな」

「ああ! いいってことよ! またよろしくな!」

 リッカは名残惜しそうにしていたが、また連れて来てやると約束して諦めさせた。
 そして、早速、店主の話を確かめるために教会へと急ぐ。教会のシンボルが遠くからでも見えていたので、迷うことなくたどり着いた。

 教会の入り口では続々とむさ苦しい信者たちが教会から出て来ている最中だった。
 割合がおかしく、男性が九割を超えていそうだ。
 皆、恍惚とした笑みを浮かべている。……やっぱり、ヤバイ集まりなんじゃないだろうか?

 だいたい人もハケたので、みんなで教会へと入れば……この世のものとは思えないほどの美貌を携えたシスターが、祈りを捧げている信者の周りを歩いていた。

 すると、呆然と立ち尽くしていた僕たちを見つけ、優しく微笑みを向けられる……
 あの店主が言っていたことは嘘じゃなさそうだ。男の全てを魅了しかねない優しい微笑みは、見たものを穏やかな喜びで包み、浮世の外側へと誘っていく。

「どうかされましたか? どうぞこちらにお座りになって、神に祈りを捧げましょう」

 さて……どうするかな……神には祈らないとして……
 まずはステータスを確認したい。気付かれないようにさりげなく。
 僕は思念でクザンと打ち合わせ、奇跡をお願いするという茶番を演じることにした。

 二人で暗い顔を作り、悲壮感を出す。

「あ……あの……こいつの腕を……どうにかしていただけませんでしょうか?」

 僕の入りに合わせてクザンは腕のない肩を差し出し暗い顔を見せる。

 そのクザンの演技は素晴らしかった。
 瞳からは光が失われ、力無い俯き加減に丸まった背中……そして、座った目でシスターを流し見る姿は演技を超えていた……ってこいつは今までこんな顔を腐るほどしてきただろうから当たり前か。
 大根役者の下手な演技ではなく、本物の哀愁がクザンに漂っていた。

「まあ……そうですねぇ……」

「お願いします!」

 僕はシスターの手を自然に掴み、サクッとステータスを確認する。
 すると……

 //
 職業 美神の修道女 lv960
 フローテ
 生命力 9999
 攻撃力 780
 防御力 840
 魔力  860
 魔攻  890
 魔防  790
 素早さ 860
 幸運  620

 スキル
 神の加護 神の奇跡 性欲を司る者 子羊の導き手 
 //


 これは……神の使い……いや、神そのものっぽいな。
 しかし……もし見つけたら早めに叩いた方がいい……か。

 ステータスを見る限りでは……800台が多いが、バランスよく配分されており、幸運と生命力を省いた下限値780はチートそのもの。
 スキルに関してはよくわからん。
 何事も試してみなければ始まらないのだが……こいつは手を出しちゃいけない相手だと僕の中で警鐘が鳴り響いている。

 正直相手の出方を伺ってからいろいろ対策を考えたいところだが……もうこんなチャンスはないかもしれない。
 だから、僕はダメ元で精神の詰責を試すことにした。
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