みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

我慢汁の神と乱れた性

***

「あら? ここは……」

 神に対しても精神の詰責は発動した。
 サタン様も神様みたいなものだし、発動してもおかしくはないが。

 シスターは真っ白な空間に少し驚いている風だが、クザンのように取り乱すことはない……さすが神といったところか。

 さてさて……発動したはいいものの、まったくなにも考えてなかったな。

 僕はどうしたものかと思案するも、なにも浮かばなかったので姿を現して対峙してみようと思った。
 反応を見れば今後の対策を練ることができるし、ヤバければ記憶させなければいいだけの話だ。だから、問題はないだろうと考えていた。

「こんばんわ」

「あなたは先ほどの……」

「ええ、連れの腕を治して欲しいと懇願した者です」

 僕はフードを取り、堂々と美神の前で顔を晒した。

 さてさて、いきなり攻撃でもされるかな? それとも腹の探り合いかな?

「……角?」

 まず目がいくのはそこだろう。魔物の証。
 フローテは首を傾げて僕の角を見つめている。
 あとは全部を話し反応を見る。
 どの内容にどんな反応を示すか楽しみだ。

「ええ、僕は魔王と言われています。サタン様の使いです……なぜあなたをここに招待したか……わかりますか?」

「うーん。心当たりはないわ」

 頬に手を当て、それらしく振舞う美神。
 演技だろうか? それとも癖なのか? 今はまだ判断がつかない。

「美神 フローテ。神ですよね?」

「ええ、そうね。それより……あなた凄く私好みの顔をしているわ」

 フローテは自分が神だとバレても驚くことはしない。それどころか僕の顔が好みだとジャブを打ってきた。

「そうですか。美神に褒められたのなら光栄ですね。ありがとうございます」

「それだけ? 私が欲しくないの?」

 シスターは僕を誘惑する作戦に出たようだ。
 きっと数々の男たちがこの手で落ちたのだろうが、僕はそうはいかない。

「……神は嫌いでして。魔族になっていただけるのなら考えますが」

「じゃあ、魔族になるわ」

「は?」

「なに?」

 ここから化かし合いでも始まるのかと思えば、あっさりと魔族になるなんて言ってのける美神。
 もうすでに始まっている……ということなのだろうか?

「なに? じゃないよ。そんな簡単に決めていいもんじゃないだろ?」

「男なのに言ったことも守れないの? 魔王だから?」

 首を傾げて微笑する美神。
 まるで僕を試すかのように、小物と嘲るかのように……しかし、その瞳はまっすぐ僕を見つめている。

「……」

 なにを企んでいるのか……まったくわからない……が、これはチャンスなのだろうか? 向こうが僕のことを甘く見ていて油断しているのかも……まあいいや。面倒だ……どうせダメ元ならやってみるか。

「じゃあ、手を出して僕に忠誠を誓え」

「あなた……名前は?」

「ルーシェ」

「じゃあ、私はルーシェに忠誠を誓います」

 フローテは当たり前のように僕へと歩み寄り、手を差し出して誓いを立てた。
 そして、いつもより少し輝きを増した紋様が浮かび、フローテの手に証が刻まれた。

 ……本当に刻まれてしまった……あっさりと。

 僕はフローテのステータスを急いで確認した。

 //
 職業 ルーシェの美魔神 lv960
 フローテ
 生命力 9999
 攻撃力 780
 防御力 840
 魔力  860
 魔攻  890
 魔防  790
 素早さ 860
 幸運  620

 バッドステータス
 忠誠の証(肉体支配・五感共有・思念伝達・魔族(忠誠対象ルーシェ)) 

 スキル
 魔神の加護 魔神の奇跡 性欲を司る者 子羊の導き手 
 //


 ……神の前に魔がついてる。
 これは……魔を生み出す者も性能が上がっているのかもしれない……あとでクザンのも確認しよう。

「魔族になれたかしら?」

 僕がステータス確認に没頭しているとフローテが話しかけてきた。

「ああ」

「じゃあ、もう私は神じゃなくなったのね?」

 神じゃなくなった……本当にそうだろうか?
 これも一種の呪いだ……解呪は可能。今まで僕よりも強い存在に対峙したことがなかったから解呪不可だっただけで、神とやらには簡単に解呪されてしまうかもしれない。
 そう考えれば、近づいてチャンスを伺うために僕を受け入れたとも考えられる……。
 もし調子に乗って気を許せば簡単に寝首を掻かれてしまうことだろう……こいつは爆弾だ。

 舞い上がって喜んだ途端……やられるかもしれない。

「いや……なるにはなったが、これは単に魔族になる呪い。もっと高位の神様なら簡単に解いてしまうんじゃないかな?」

「じゃあ、どうすればいいのかしら?」

 白々しく首を傾げるフローテ。
 彼女はどんな内容だろうと、ずっと落ち着きを持って僕と接している。こちらは内心驚いてばかりだし、わからないことだらけでいっぱいいっぱいだというのに……憎たらしい神だ。

「さぁ……僕も神に会ったのは初めてなので……堕天とかすればいいんじゃないのか?」

「堕天かぁ……今まさに堕天してるって言えなくもないのよね」

 フローテはまた頬に手を当てて考え込むような仕草をとった。単なる癖なのかもしれない。

「でも、神様であることに変わりないんだろう?」

「そうね。パパならなんとかできるかもしれないわね……」

「パパ?」

「そ、私のパパ、全知全能の神様」

「フローテは全知全能の神の娘ってことなのか?」

「んー、正確には違うわ。私の本当のパパは息子にナニを切られて、その切られたナニの我慢汁から産まれたのが私。それでおじいちゃん……正確には兄弟……ナニを切ったお兄ちゃんだけど、その息子の養子になったの。
 なんでかって言うと……この話は長くなるからやめましょう。とにかく、いろいろあってパパの養子になったのよ」

 目をつぶって溜息を吐くフローテ。
 なにがなにやら複雑怪奇な話で、自分が理解した内容が本当に合っているのか疑心暗鬼になりそうだ。

「…………は?」

「ふふ、天界は複雑なのよ」

 ……もしこれが本当なら、神は頭がおかしいのだろうか? 父親のナニを切る? 意味がわからない。
 サタン様が神を嫌う理由が少しわかった気がする。

「でも、そうすると……フローテの方が高位ってことじゃないのか?」

「んー、どうかな? わからないわ」

「じゃあ、この呪いを解けるかやってみてくれ」

「解ける気がしないわね。そもそも自分で解けるなら、呪いになんてかからないと思うけど?」

 フローテは解呪不能だと理由付きで即答した。

「……」

 言っていることはわからなくもない。
 でも、まだ安心はできない……が……もう面倒だ。この際嘘でもいいから全部語らせよう。

「そうだな。ならフローテはなにができる? 奇跡とはなんだ? 神の加護とはなんだ? 子羊の導き手とはなんだ? 全部簡潔に言ってみろ」

「ふふ、せっかちなのね」

「ああ、面倒なのは嫌いだ」

「わかったわ。奇跡ってのは、人間の願いを叶える能力。神の加護は不老不死じゃないかしら? 子羊の導き手っていうのも、人間を導きやすくする能力ね」

「人間のための能力ばかりだな」

「そうね、ここはそういう場所だもの」

 ……ここはそういう場所ときたか……天界から降りてきた神にとって、この世界はただの一部分ってことか。

「ふっ……クックック……そうか。ここは面白いか?」

 あまりのスケールに笑うことしかできない。
 考えるのも馬鹿らしくなってくる。
 しかし、フローテは魔族になった。
 今はその事実だけで充分な気がする。

「そうね……あなたみたいなイケメンに会えてとても満足よ。
 それに、私の婚約者はとても醜いの。……天界に帰れば結婚させられてしまうし、ここにいた方がずっと気楽でいいわ」

 さっきから神のことを擁護する発言なんて一つも出てきていない。フローテは文句ばかりだ。
 醜い婚約者……そりゃあ、嫌だろう。嘘かもしれないが、そこまで神を愚弄できるのであれば……僕も嫌いじゃない。

「ふははははは!! ……そうだな……ならば僕に忠誠を誓ったのだから協力してもらうぞ!
 ……神が人間を殺す……魔神となって……面白い……面白いじゃないか!」

「あら……それがあなたの本性?」

 フローテは僕の素の姿を見ても驚きもしない。
 微笑みを崩さず僕を見つめていた。

「そうだ。幻滅したか? おまえは僕の操り人形として人間を殺すんだ……どうだ? パパに解呪を頼みたくなったんじゃないか?」

「嫌よ! パパはとっても怖い神様だし、ママには息子と結婚しろって迫られて嫌になってたところなんだから」

 ここに来て初めてフローテの顔が歪んだ。
 なんだか心底嫌そうな顔をしている。
 話の内容的には納得できるのだが……醜い婚約者とは、ママの息子……兄弟で結婚か? なんとも信じ難い話だ。

「神は近親相姦までするのか?」

「そうよ? ママはパパの姉だし、前妻も姉よ食べちゃったけど。パパは本当のパパの兄弟も犯したし、愛人も沢山いる。ママにバレないよう愛人を牛に変えたりもしたわ。人間の女とも子を成したし、その子供の孫娘も犯した……孫娘の夫に変装して、夜の長さを延ばして心ゆくまで犯したんだから大概よね」

「……」

 僕は絶句した。
 意味がわからない……フローテはなにを言っているのだろうか? 姉? 食べた? 沢山の愛人? 牛? 夫に変装して人間を犯した? は?

「だから、息子と結婚しろなんて天界じゃ普通よ?」

 天界は性が乱れていた。
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