みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

南の大陸の大戦 王が縋り付いた流れの傭兵

 ラスフェリカは周辺諸国に声をかけ、大連合を築き上げると、デガンニークの二倍はあるであろう兵力を獲得した。
 それもこれも、男共を魅了するヘレを救うという栄誉のためだけに。

 そして、その兵をまとめ上げ、ようやく準備が整い、デガンニークに戦線布告が成されたのが一週間前。
 そこには、大人しくヘレを返せば王子の首と、半分の領地で許すと書いてあり、その返答期限は明日と迫っていた。
 報告によれば、六十万はいるだろう大軍を引き連れ、すぐそこまでラスフェリカは進軍してきているらしい。

 ……たった一人の少女のためだけに。

 デガンニークは高い城壁を誇る要塞都市だが、現存する兵力は三十万ほど。
 対するラスフェリカ連合は五十万の大群。
 これほどの兵力差があれば、普通の戦争なら決着はついたも同然なのだが、この二国には、神に愛された英雄がいた。

 ラスフェリカが誇る英雄……アリレウス。
 一個小隊で突き崩してきた戦況は数知れず。
 アリレウスが赴いた戦場は常にラスフェリカが勝利を収めてきた。また、デガン王子がヘレを獲得できたのはこの男の働きが大きい。
 アリレウスが駆ければ士気は上がり、押されていようが戦況をひっくり返してしまうほどの豪傑であり、また、高度な戦略家でもあった。

 そして、対するデガンニークが誇る英雄……アロロ。
 要塞都市の要、弓兵を率いる弓の天才。
 魔力の込められたその矢が射抜くのは一人だけではない。
 変幻自在に矢は飛び回り、魔力が尽きるまで何人もの敵兵を射抜く。
 その神技を持ってすれば、要塞にたどり着く頃には敵兵は大きく数を減らし、半数も残っていれば良く出来た方であった。

 攻めるラスフェリカよりも、要塞に篭り守るデガンニークの方が有利に思えたこの戦いだが、今までこのような規模の戦闘は初めてで、どうなってしまうのかは時の運によるものが大きいだろうと皆予想していた。

 たった一人の少女のために南の大陸を揺るがすほどの大戦となってしまったこの戦い。
 どうにも収拾がつかなくなってしまったこの状況をどうすればいいのか頭を悩ます王。
 王子の言っているか細い大義など、奪ったのか助けたのか、どちらとも取れるどうでもいいことであり、戦争を収めるための大きさはない。
 これはすでに国の威信を賭けた戦いに発展しており、その規模故に代償は果てしなかった。

 しかし、そんな時に、西の大陸で結成されたと噂されていた魔王討伐のための勇者パーティーの一人が、この国を訪れているとの報告が入った。
 流れの傭兵としてギルドに登録されたとのことで、今の王には状況を打開できるかもしれない数少ない希望に見えた。

 一人が万の大軍に匹敵する力を持っていると言われる勇者パーティーの面々。
 文化、技術、共に大きく発展を遂げていた西の大陸出身者であれば、解決策を持っているかもしれない。
 そんな淡い期待を寄せて、翌日、ギルドを通してそのパーティーを呼びつけた。

 しかし、そこへ現れたのは礼儀を知らぬ者たちだった。

「こんなところに呼びつけておいて、クソ共の戦争に加担しろなど……国王だろうが殺すぞ!」

 一国の王に対する不敬、さらには殺害予告までする始末。
 いくら冒険者が無学であろうと、ここまで酷い輩は見たことがない。
 しかし、今の自分たちの状況を打開するにはこのような者たちでも味方につけなくてはならない。
 腹立たしさを堪え、王は再度懇願する……しかし。

「おまえたちのようなクソ共は死ねばいいのだ。手前勝手な戦争で国民を脅かした罰をその身で受けるんだな」

 懐を抉るような物言いに、王子の失態を弁明できない自分がいた。
 この者が言っていることは間違いではなく、この国を治める者にとっては耳が痛くなる思いだった。
 しかし、ここまで言われてすんなりと帰すわけにもいかず、不敬の罰は受けてもらわなければならない。
 王が兵士に捕らえるように命じようとすれば、その口も、体も、全ては時が止まったかのように動かなかった。

 その最中、細身のローブを着た男が玉座へと近づいてくる。
 暴言を吐き、我々を罵った者が王の下へと近づいているのに、誰も動こうとはしない。

 何人にも咎められることなく玉座へとたどり着き、そして、ローブの男は王に額を寄せて囁いた。

「この戦争……おまえたちに勝ち目はない。逃げてもムダだ。魔王である僕が必ずおまえを殺す。僕の処刑を受けるか、戦争で死ぬかは選ばせてやるが……生き残った時、おまえには戦争で死ねなかったことを後悔させてやる……クックック……」

 そう言うと、ゆっくりと玉座を離れ、連れて来た者たちと一緒に城を去っていった。
 デガンニークが誇る屈強な兵士たちを、まるでグズ共だと言いたげに嘲笑いながら。
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