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サタン様からのお願いは代理戦争介入!
南の大陸の大戦 開戦
王の思惑は叶わなかったが、残酷にも時は流れる。
日も高く昇ったころ……ついにその時は訪れた。
ラスフェリカの使者が門の前に訪れ、デガンニークの答えを聞きに来たのだ。
「答えを聞きに来た! デガンニークの王よ、その真意の程を示せ!」
デガンニーク側からは、その使者へと矢が放たれる。
使者のすれすれをかすめ、その篦の部分には書状が巻きつけてある。
使者が書状を読み陣へと引き返し……この大戦は幕を開けた。
高い壁の上からは、黒い波のように進軍してくるラスフェリカ軍が見えた。
どこまでも続いているかのようなその兵力は、弓兵の体力が持ちそうにないほどに圧倒的な兵力差となっていた。
それを目の当たりにしていたのは弓兵を率いる英雄。
アロロは士気を高めるべく、兵士たちに檄を飛ばす。
「敵は多いだけの役立たずだ! この城壁が破られることはない! 矢の数も、やつらを三回皆殺しにできるほどに用意した! 思う存分、我ら弓兵部隊の恐ろしさを思い知らせてやろう!」
英雄の檄によって怒声のように雄叫びが上がる。
これで、黒い大波に恐れることなく弓兵はラスフェリカ軍に矢の雨を降らせることになるだろう。
そして、対するラスフェリカの英雄はというと……彼は大波に参加することはせず、小隊を率いて戦況の見える高台へとその身を置いていた。
「バランのやつ……なにも考えずに進軍しやがって……」
高台から波のように押し寄せる自軍を見て文句を言うことしかできない。
バランは頭に血が上っており、圧倒的な兵力差でもって高くそびえ立つ城壁を攻略しようとしていた。
ゆえに、アリレウスの言葉に耳を貸す余裕もなく、城壁攻略を考えもせずに進軍している現状があった。
「アリレウス様……どうします?」
「今日は参加しない。バランの頭が冷えてから……明日からが本番だ」
「しかし……それでは」
「あのように高い城壁を壊せる魔法使いの一人でもいれば、戦況は変わっただろうが……そんな都合よく強力な魔法を使えるものなどいないのが現状だ」
「では……」
「城門を叩き壊すか……あるいは夜中に壁を登り切り、中から開けるかしなければ勝利はないな」
「あの壁を登るのは無理ですよ!? いくらアリレウス様が英雄だからといっても……無理です!」
デガンニークの城壁は高く、十メートル以上はありそうな絶壁で、さらには返しまで付いている。
手をかけられそうな引っかかりもなく、おいそれと登れるような代物ではなかった。
「しかし……あれを攻略しなければ……」
アリレウスは、今日一日をかけて知略を巡らせることにした。
そして、バランが率いる大連合は城門を蹴破るべく進軍する。
「バラン様、もう間もなく先陣が到着いたします」
「ああ、あの小僧に目にものを見せてくれる!!」
そう憤るバランには側近のメディオスが護衛として付き従っている。
彼はラスフェリカが誇る英雄アリレウスに一歩届かない二番目に強い将だ。
奇抜で勇敢ななアリレウスとは違い、地道で努力家のため、あまりその名を轟かせる逸話はないが、戦いに出ればその強さは折り紙つきの名将である。
やがて、その足音は唸りを上げてデガンニークへと届き始めたころ、城壁から一本の矢が放たれた。
英雄アロロが放ったそれは、常人の矢の速度を悠々と超え、地を這うように波の先頭の兵へと届くと、まっすぐ三人の兵を射抜いた。
ラスフェリカはそのありえない距離からの攻撃に驚くも、波の速度は変わらない。
地を鳴らし、恐怖を煽り、進軍してくる。
そして、それを迎え撃つのはパレス率いる城門防衛部隊。
パレス自らが陣の先頭へと立ち、城門の守りにつく。
その数はおよそ十万。
その他は城壁の弓兵部隊へと回され、パレスの役目は城門を守る肉壁となることだった。
「すまない……私の行いのせいでこのような戦争を引き起こしてしまった……」
軍の大将が側近に詫びを入れる。
これから戦う者にとって、そのような詫びなど士気を下げるだけでなにも理はない。
しかし、詫びずにはいられない心境であるのも事実であり、戦いに駆り出された者にとってのせめてもの償いであった。
「パレス王子……今はそのようなお言葉は不要です。城門を守るため、今一度士気をお上げください」
「ああ……やってみよう」
そう忠告するのは、パレス近衛兵長のアメス。
その武勲は、南の大陸に猛々しく轟いており、両手に持った槍で戦場を駆け巡る姿は武神と恐れられていた。
そして、武神の名に恥じぬ彼の行いは、どんな時にも先陣を切り、そして、全ての戦闘で勝利を手に帰ってきたことからも伺える。
「聞け! ラスフェリカ軍はもうまもなくここまで来るだろう! 弓兵の矢を逃れた輩を一人たりとも討ち漏らすな! デガンニークは我らが誇り! 決してやつらに指一本でも触れさせることはするな!」
城門前からデガンニーク軍の雄叫びが上がる。
轟音のようなラスフェリカ軍の足音を消し去り、その雄叫びは城壁からこの戦いを見守るヘレの耳にも届くことになる。
この戦いで、パレスはヘレに自分の勇姿を見せなければならない。
連れ出してしまった責任を果たさなければいけなかった。
そして……その戦争をぼーっと眺める者たちが二人……大きな城壁櫓の屋根の上で座っていた。
「魔王様よう……今日はこんなところで見てるだけかい?」
腕を貰ったクザンが戦争に当てられ、堪らず魔王に話しかける。
貰った腕を試してみたいのだろう。
「ああ。サタン様のご要望だ。この下で戦争を見ているヘレを守るのが僕たちの仕事さ」
「あんたも付き従うやつがいるんだな」
「ああ。魔王とか言っておきながら、現実なんてそんなもんさ」
「けっ! 冷めたもんだな」
クザンはつまらなそうに頭を掻く。
「……人間が死ねばそれでいい」
「そうだったな」
うずうずとしたクザンをいなし、人間が死ぬ様を眺める。
開戦の火蓋は切られ、城壁の弓兵たちが今か今かと射程距離を図っていた。
日も高く昇ったころ……ついにその時は訪れた。
ラスフェリカの使者が門の前に訪れ、デガンニークの答えを聞きに来たのだ。
「答えを聞きに来た! デガンニークの王よ、その真意の程を示せ!」
デガンニーク側からは、その使者へと矢が放たれる。
使者のすれすれをかすめ、その篦の部分には書状が巻きつけてある。
使者が書状を読み陣へと引き返し……この大戦は幕を開けた。
高い壁の上からは、黒い波のように進軍してくるラスフェリカ軍が見えた。
どこまでも続いているかのようなその兵力は、弓兵の体力が持ちそうにないほどに圧倒的な兵力差となっていた。
それを目の当たりにしていたのは弓兵を率いる英雄。
アロロは士気を高めるべく、兵士たちに檄を飛ばす。
「敵は多いだけの役立たずだ! この城壁が破られることはない! 矢の数も、やつらを三回皆殺しにできるほどに用意した! 思う存分、我ら弓兵部隊の恐ろしさを思い知らせてやろう!」
英雄の檄によって怒声のように雄叫びが上がる。
これで、黒い大波に恐れることなく弓兵はラスフェリカ軍に矢の雨を降らせることになるだろう。
そして、対するラスフェリカの英雄はというと……彼は大波に参加することはせず、小隊を率いて戦況の見える高台へとその身を置いていた。
「バランのやつ……なにも考えずに進軍しやがって……」
高台から波のように押し寄せる自軍を見て文句を言うことしかできない。
バランは頭に血が上っており、圧倒的な兵力差でもって高くそびえ立つ城壁を攻略しようとしていた。
ゆえに、アリレウスの言葉に耳を貸す余裕もなく、城壁攻略を考えもせずに進軍している現状があった。
「アリレウス様……どうします?」
「今日は参加しない。バランの頭が冷えてから……明日からが本番だ」
「しかし……それでは」
「あのように高い城壁を壊せる魔法使いの一人でもいれば、戦況は変わっただろうが……そんな都合よく強力な魔法を使えるものなどいないのが現状だ」
「では……」
「城門を叩き壊すか……あるいは夜中に壁を登り切り、中から開けるかしなければ勝利はないな」
「あの壁を登るのは無理ですよ!? いくらアリレウス様が英雄だからといっても……無理です!」
デガンニークの城壁は高く、十メートル以上はありそうな絶壁で、さらには返しまで付いている。
手をかけられそうな引っかかりもなく、おいそれと登れるような代物ではなかった。
「しかし……あれを攻略しなければ……」
アリレウスは、今日一日をかけて知略を巡らせることにした。
そして、バランが率いる大連合は城門を蹴破るべく進軍する。
「バラン様、もう間もなく先陣が到着いたします」
「ああ、あの小僧に目にものを見せてくれる!!」
そう憤るバランには側近のメディオスが護衛として付き従っている。
彼はラスフェリカが誇る英雄アリレウスに一歩届かない二番目に強い将だ。
奇抜で勇敢ななアリレウスとは違い、地道で努力家のため、あまりその名を轟かせる逸話はないが、戦いに出ればその強さは折り紙つきの名将である。
やがて、その足音は唸りを上げてデガンニークへと届き始めたころ、城壁から一本の矢が放たれた。
英雄アロロが放ったそれは、常人の矢の速度を悠々と超え、地を這うように波の先頭の兵へと届くと、まっすぐ三人の兵を射抜いた。
ラスフェリカはそのありえない距離からの攻撃に驚くも、波の速度は変わらない。
地を鳴らし、恐怖を煽り、進軍してくる。
そして、それを迎え撃つのはパレス率いる城門防衛部隊。
パレス自らが陣の先頭へと立ち、城門の守りにつく。
その数はおよそ十万。
その他は城壁の弓兵部隊へと回され、パレスの役目は城門を守る肉壁となることだった。
「すまない……私の行いのせいでこのような戦争を引き起こしてしまった……」
軍の大将が側近に詫びを入れる。
これから戦う者にとって、そのような詫びなど士気を下げるだけでなにも理はない。
しかし、詫びずにはいられない心境であるのも事実であり、戦いに駆り出された者にとってのせめてもの償いであった。
「パレス王子……今はそのようなお言葉は不要です。城門を守るため、今一度士気をお上げください」
「ああ……やってみよう」
そう忠告するのは、パレス近衛兵長のアメス。
その武勲は、南の大陸に猛々しく轟いており、両手に持った槍で戦場を駆け巡る姿は武神と恐れられていた。
そして、武神の名に恥じぬ彼の行いは、どんな時にも先陣を切り、そして、全ての戦闘で勝利を手に帰ってきたことからも伺える。
「聞け! ラスフェリカ軍はもうまもなくここまで来るだろう! 弓兵の矢を逃れた輩を一人たりとも討ち漏らすな! デガンニークは我らが誇り! 決してやつらに指一本でも触れさせることはするな!」
城門前からデガンニーク軍の雄叫びが上がる。
轟音のようなラスフェリカ軍の足音を消し去り、その雄叫びは城壁からこの戦いを見守るヘレの耳にも届くことになる。
この戦いで、パレスはヘレに自分の勇姿を見せなければならない。
連れ出してしまった責任を果たさなければいけなかった。
そして……その戦争をぼーっと眺める者たちが二人……大きな城壁櫓の屋根の上で座っていた。
「魔王様よう……今日はこんなところで見てるだけかい?」
腕を貰ったクザンが戦争に当てられ、堪らず魔王に話しかける。
貰った腕を試してみたいのだろう。
「ああ。サタン様のご要望だ。この下で戦争を見ているヘレを守るのが僕たちの仕事さ」
「あんたも付き従うやつがいるんだな」
「ああ。魔王とか言っておきながら、現実なんてそんなもんさ」
「けっ! 冷めたもんだな」
クザンはつまらなそうに頭を掻く。
「……人間が死ねばそれでいい」
「そうだったな」
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