みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

南の大陸の大戦 物量戦と籠城戦

 「撃てぇ!!」

 大波の先頭が走り出したと同時に矢の雨がラスフェリカ軍へと降り注ぐ。
 隊列を組み、矢は止むことなく放たれ続け、確実にラスフェリカの軍勢を減らしていく。

 しかし、あまりの多さに撃ち漏らしが城門前へと突っ込んでくる。
 前衛どうしが衝突し、盾と剣がぶつかり合えば……乱戦の始まりだ。
 一人、二人、などと数える暇はない。
 十人、百人、千人単位で人間が死んでいく。
 なんのために戦い、なんのために死んでいくのか?
 矢に撃たれ、斬り殺され、潰され……ただただ死んでいく。

 男たちは目の前の敵を殺す。
 そのためだけに体を動かし死んでいく。

 しかし、そんな戦場に辿りつくことすら叶わず降り注ぐ矢によって命を落としていく多くのラスフェリカ軍。
 ラスフェリカ軍は堪らず盾を上空に構えて矢を防ごうとしたが、魔力が乗った矢は盾を突き破り確実に仕留めていく。
 アロロ以外の弓兵も少なからずその技の一端を習得していた。

 そして、デガンニークの英雄はこの戦場でも猛々しくその功績を積み上げている。
 アロロが放った矢はもうすでに千人に登ろうかという人間を撃ち倒し、鬼神のようなアメスの槍は二百を超える人間の血を啜った。

「絶対に後ろへと通すな!!」

 パレスが叫ぶ。
 混戦の中、士気を上げ、騎馬に乗り敵軍を切り倒しながら戦場を駆けていた。

 しかし、ラスフェリカの進軍は止まらない。
 いくら倒したところで、波は収まることを知らず、次から次へと押し寄せてくる。

 城門前で軍勢を押し戻し、それを城壁から矢で減らす。
 単調でいながら、とても効率の良い戦術。
 矢の雨は城門前に淡々と死体の山を作っていった。

 しかし、溢れた軍勢は城門だけでなく、周囲の城壁までもを取り囲んだ。
 城壁に向けて放たれる土魔法は徐々に城壁を崩していく。
 まさに大軍勢のごり押し戦法。

 対するデガンニーク側は、その魔術師を狙い撃つ弓兵部隊が矢の雨を降らしていた。
 デガンニーク屈指の弓部隊の命中精度は驚異的であり、詠唱中の魔術師を淡々と減らしていく。
 さすがのラスフェリカ軍も魔術師を多くは揃えてはおらず、城壁への攻撃はだんだんと弱くなっていった。

 籠城戦はデガンニークが優勢といったところだろう。
 魔術師が削った壁は半分も厚みを削れていない。
 ラスフェリカの軍勢は時間が経てば経つほど減っていき、打開策のないまま兵士たちはじわじわと士気を落としていった。

 誰の目にもデガンニークが優勢だと理解したころで、側近のメディオスがバランに撤退の進言をした。

「バラン様、ここは引きましょう……このままでは兵を減らすだけです」

「くっ……パレスの小僧が舐めおって……体制を立て直す! 撤退だ!」

「はっ!」

 撤退の命を受け、波の流れは大きく反転した。
 しかし、それを追う城門防衛部隊は深追いすることはなかった。
 デガンニーク側が平原で勝てる要素は一つもない。
 洗練された弓兵部隊の援護があってこその優位。
 いたずらに後を追えば全滅することはわかっていた。

 パレスは騎馬の上でラスフェリカが撤退していく様を見ていた。
 肉壁という危険な前衛の中、なんとか命を繋いだ若き将。

「撤退したか……」

「ええ……あの軍勢相手に我々は勝利したのです」

 返り血で真っ赤に染まったアメスが答える。
 いったい幾つの命を奪えばそのような姿になるのか?
 パレスは人間離れした彼の恐ろしさをまじまじと目の当たりにしてしまう。

「デガンニークの城壁が破られることはない……やつらにこの城を落とす術などないのだ」

 パレスの言っていることは正しく、定石がハマればこれほど優位に戦いを進められる戦略はない。
 そもそも、籠城戦は基本的には良策であり、有利な地形で効率よく敵を排除することができる。
 デガンニークの城壁と弓兵部隊はその最たるもので、いくら倍の軍勢で攻めようとも、高く分厚くそびえ立つ城壁を攻略するのは困難を極めた。

 だから、ラスフェリカがこのまま無策で兵を動かしても決して勝利には繋がらない。
 なにかこの城壁を攻略する奇策が必要だった。

 こうして一戦目の戦いはデガンニークの勝利で終わった。
 そして、引き返す波を城壁櫓の上から訝しげに眺める気の短い観客が二人。

「おいおい……ラスフェリカ軍撤退していくぞ?」

「……そうだな」

「こりゃ無理じゃねぇか?」

「……そうだな」

 クザンの物言いに不満げに声を上げる魔王。

 この戦いを見ていれば、ラスフェリカにはもう勝ち目はない。
 しかし、サタン様からは直接関わってはいけないと言われている。
 城門を破壊してしまえばそれまでなのだが……

「クザン、いくぞ」

「お! ついに参戦か?」

 うずうずが止まらないクザンは僕の言葉にニヤリと破顔する。

「何度も言ってるが、この戦いに直接は関与しない」

「んだよ! じゃあどこ行くんだよ」

「あっちの大将のところだ」

「なにしに……っておい!」

 僕はクザンを浮かし、撤退するラスフェリカ軍の大将のところへと飛んだ。
 上空から撤退する大波の中心に豪華な馬車が一つあるのが見える。
 そこへと急降下で接近して偉そうなやつの前に降り立つと……

「なっ! き……貴様……何者だ!」

 側近のメディオスが空に浮く僕らを見つけて驚き叫ぶ。
 周囲の兵も立ち止まりこちらを見上げていた。

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