みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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サタン様からのお願いは代理戦争介入!

南の大陸の大戦 女神の嫉妬

「えー、おまえたちにはがっかりだ。これだけの兵を集めておきながら、この体たらくはなんなんだ」

「なんだと! 貴様は何者だ! なにをしにきた!」

 側近が叫ぶ……同じことを。頭の固そうなやつで、話が先に進まないのも面倒なので答えてやることにした。

「魔王でーす。おまえたちに力を与えにきましたー。デガンニークを倒す力が欲しいですかー?」

「魔王だと!? まさかそのような異形の腕を持った者だったとは……」

 側近がクザンの方を見て驚いている。見る目のないやつだ。

「っぷ! 俺が魔王だってよ?」

 異形の腕を組んでいたクザンが堪らず吹き出した。
 こいつは少しTPOをわきまえて欲しい。

「馬鹿! 僕が魔王だよ! ったく……ほら、受け取れ」

 付き合うのも面倒なので、僕は要件を先に済ませる。
 側近へと放ったのは、翼をモチーフにあしらった魔剣。
 魔力を込めて念じれば風魔法が発動する。

「こ……これは?」

「風魔法が使えるようになる魔剣だ。フライで小隊を浮かせて城壁を越え、城門を開ければおまえたちの勝ちだろ? 日中は適当に攻めて相手の疲弊を誘い夜襲をかけろ」

「フライが使えるだと!? いや……でも確かに門さえ開けば……」 

「あ、そうそう、魔力が切れたら使用者の命を吸うから気をつけろよ。じゃあ頑張れ」

「なっ!」

 僕は言うだけ言ってその場を去った。
 これで、明日の夜にはデガンニークは終わりだ。
 案外簡単だったなと少々肩透かしを食らっていた。

 そして城内の目立たないところへと降り立ち、みんなが待つ宿へと戻ることにした。

「あれで勝てるかねぇ……」

 クザンが心配そうにぼやく。

「あれで勝てなきゃ僕が直接なにかしなきゃいけなくなるだろうな」

「まあ、大国を率いているやつらが伊達じゃねぇことを祈ってるよ」

「神にか?」

「はは! あんたが大将だと祈ることすらできねぇみてぇだな!」

 クザンは大げさに笑った。

「祈る暇があったら頭を使え。誰も助けてはくれないんだからな」

「ああ……違げぇねえ」

 クザンと無駄話をしていれば宿屋はすぐそこだ。
 扉を開けて宿屋に入れば……そこには誰もいなかった。

 宿屋の店主も、リッカも、フェリも、フローテもいなかった。

「どうなってんだ? 買い物にでも出かけたか?」

「店主もいないんだぞ? なにかおかしい……」

 店主には帰ってきてからたんまりと礼を弾んだから裏切るとは思えない。追い金も匂わせておいたしな。

 言い知れぬ不安が僕を襲う。
 これが虫の知らせというやつなのだろうか?
 僕はきっとフローテも一緒だろうと考え、慌てて念を送った。

 ——おい! 宿で待っていろと言っただろう? なんで誰もいないんだよ!

 ——あら? ……もう帰って来ちゃったの?

 ——おまえ……今なにしてんだ?

 ——私? 私はそうね……あなたを独り占めするためのお仕事……かな?

 ——なにを言ってるんだ?

 ——うふふ……なんでしょうね?

 どうも要領を得ないフローテの言動。
 いったいこいつはなにをしているのか?
 仕方がないのでこいつの五感を共有してみると……目の前にはリッカとフェリ……そして、この国の者だろうか……

「あああ!!! イクッ!! ああ!!! そこ……ああ!! もっと! もっと!」

「んん!! ダメ!! イイ!! ああああ!! あっあっあっあ!! あああああ!!!!」

 そこで僕の目に飛び込んできたのは、十人の男共が二人を囲み、代わる代わる醜悪に腰を振り、唇を奪い、胸を、柔肌を貪り犯している光景だった……。
 二人は……快楽を貪るように恍惚な笑みを浮かべ……激しく体を動かし喜びを表現していた……。

 全身の血の気が引き、憤りが臨界点を軽々と突破し全身を煮えたぎらせた。

 ——おまえ………………こんなことをしてただで済むと思っているのか?

 ——あらら……バレちゃったのね。さーて、ここはどこでしょうか?

 目の前でリッカとフェリが犯されているのを目の当たりにして、こいつの軽口は殺してやろうかというほどに憎たらしかった。

 ——そんなことどうだっていいんだよ……

 ——ふふん! どーするのかな? このまま見てるってのもッ!!

 僕はフローテを操り、目の前の男共を引き剥がしていく。
 顔のいい者は潰し、醜い奴は残した。
 そして、リッカとフェリにまとわりつくクソ共を粗方殴り殺すと、未だ恍惚な笑みを浮かべている二人に話しかける。

「リッカ……フェリ……なにがあった」

 二人はフローテの方へ向くのだが、ぼんやりと薄ら笑いをするだけでなにも答えてはくれなかった。
 体を揺すり、堪らず声をかける。

「おい! しっかりしろ! おい!」

 二人とも力なく揺れ、薄ら笑いを浮かべたままだ……醜く涎を垂らして反応しない。

 なんだこの有様は……ふざけている……ふざけている……フローテ……

 ——おまえ……なにをしたんだ?

 ——んー? さーて、なにをしたんでしょうかね?

 お遊びだとでも言いたげに僕を嘲るフローテ。
 僕は残しておいた醜い容姿の怯える二人に迫り、こいつらに聞き出すことにした。
 胸ぐらを掴んで容赦なく脅しをかける。

「ここはどこだ? おまえらはなんだ? 即刻答えなければ殺す!!」

「ひぃ!! こっここは、教会の中です! 私は王に不敬を働いた者を捕らえにきた衛兵です! どうか! どうかご容赦を!!」

 なるほど……しかしなぜ教会にいるのだろうか?
 まあいい……場所がわかればいい。こいつらが何者だろうと関係ない。

「そうか……じゃあ、この体を犯せ! 服もなにもかもひん剥いて、二人でこの体を思う存分いたぶれば殺さずにいてやろう……ただ、向こうの女に手を出したら殺すからな」

「っはい!!」

 そう言うと、醜い二人はフローテの服を乱暴に脱がし、貪りつくようにその美しい柔肌を犯し始める。

 ——ちょっと!! なんで体が動かないの!? なにするのよ!! こんな醜いやつに犯されるなんて嫌よ!!! やめて!!

 メンクイだと言っていたが、思ったよりも根は深いようだ。

 ——なにを言ってるんだ? おまえ……誰に刃向かったかわかってないようだな。

 ——いや!! いや!! なんで!? 私はあなたを独り占めしたかっただけなの! この二人だって好きでこんなことをしているのよ! あなたが罰しなきゃいけないのはこの子たちでしょう!!

 焦っているのか、懺悔なのか告げ口なのかわけがわからない。

 ——どうせおまえがなにかしたんだろう?

 ——してない! 早くこいつらを退けて!!

 ——嘘までつくのか?

 ——嘘なんかついてない! この子たちが好きでやったことなのよ!! 私、わかるの! この子たち、ものすごい人数の男たちと寝てるわ! そういう子たちなの! あなたにふさわしくない汚れた女なのよ!

 ——…………汚れた女だと?

 ——そうよ! 何人と寝たかなんて数え切れないくらいよ!

 ズキリと胸に痛みが走る。
 知ってはいるし、理解もしていたが……どうしようもない胸の痛みが僕を襲った。
 なぜかはわからないが、多分これは……僕の心の弱さなのだろう。

 ——誰とでも気持ちよく寝られる子たちなの! だけど、あなたには私が! 私がいるわ! だから、この子たちの好きなようにさせてあげて! この子たちを許してあげて! 

 ——クソ女が……

 ——そうよ! でも許してあげて! だからこいつらをどうにかして!!
 
 クズが……おまえに言ったんだ……訂正する気にもならない。

 ——待ってろ……そいつらは僕がなんとかする。

 ——早く!

 ——ああ……フローテ……待っていろ……すぐに行くから……

 ……どうやら、神がその中途半端な力に溺れ、クソみたいな筋書きを思いつき、醜い嫉妬心を燃やした末の犯行らしい。
 そんなことは全部知った上で僕は受け入れたんだ。
 もう誰にも見せないと誓ったはずなのに、こうもあっさりと覆されるとは思わなかった。

 こいつの監視を怠っていた。
 退屈な戦闘の最中、少しでも見に行っていれば防げただろう。
 僕の失態だ。
 リッカとフェリをまたこんな目に合わせてしまった。

 神……ふざけた神……人間に肩入れするやつなんて碌でもないやつばかりだ……このクソ女が……リッカとフェリに手を出したこと……必ず後悔させてやるからな……
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