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サタン様からのお願いは代理戦争介入!
南の大陸の大戦 弱い魔王
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
吸い込まれそうな暗闇の中で気が狂ったように木霊する声。
時折フラッシュバックのように教会での光景が明滅していた。
愛おしそうに男たちを迎える二人が映し出されては消え……よがる声、愛を囁く声が聞こえる。
この映像は……リッカとフェリの目線だろう……覆い被さる男に向けてリッカとフェリが愛を囁く光景は、一気に僕の感情をぐちゃぐちゃにした。
「なんだよここ……」
僕の脳に響いて鳴り止まないリッカとフェリの重なった倍音が「汚れている」と繰り返す。
まるで自分が体験しているかのように、教会での出来事が直接脳に刻まれていく。
こんなところにいたんじゃ帰って来られるわけがない。
僕は拒絶する脳を必死に押さえ込み、二人に声をかける。
「おい! いるんだろう! リッカ! フェリ!」
——……ルーシェだ! ……ルーシェが来てくれた!
——……でも、私たちは汚れているの。
——だめなの……汚れているの!
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
いた……しかし、感傷に浸っている余裕なんかまったくない……すぐに連れ戻さなければ僕の意識がもたないかもしれない。
「クソ! なにをそんなに汚れているなんて言ってるんだ!」
——だって……私たち…… 私たち……自分で犯してってお願いしたのよ?
——なんだかとてもあの人たちがかっこよく見えて……お願いって……おねだりしたの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
あの呪いには「惚れ」の効果があった。愛のキューピットなんて生易しいもんじゃない……とても邪悪で下卑た能力であり、誰もがとても幸せに暮らすことができる神の御技なんだろう。
「そりゃそうだろ! 二人は呪いをかけられていたんだ! 当たり前だ!」
——そうだとしても……ルーシェを裏切ったの……
——ルーシェは誰にも見せたくなかったんでしょう? でも、私たちは自分で見せて……触ってって……挿れてって言ったの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
「クソ! 頭にガンガン響く……。そんなの全部呪いのせいだ! 気にすることはない!」
——気にすることはないだって……助けてくれなかったのに……私たちたち……待ってたんだよ? こんないやらしくて、醜い心になっても、待ってたんだよ?
——気にすることはないって……ルーシェにとって、私たちはそんなものなの? こんなに汚くても気にしないんだ?
——私たちはもう……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
脈絡なんかあったもんじゃない……感情のまま喚き散らすように思いついたことを言っているようだ……
「……いやだったんだろう? だからこんなところに閉じこもっているんだろう!」
——そうだよ……嫌だったよ……呪いのナイフなんか目じゃないくらいに気持ちよかったもん……ルーシェよりもずっと、ずっとあの人たちの方がいいって思ったもん……私たちはあの人たちのことを、ルーシェよりも好きになったの……とってもとっても好きだったの……でも……死んじゃった。
——私たちが愛していた人を、ルーシェが目の前で殺しちゃった……
——私たち……ルーシェが憎かったの……すごく、すごく……ルーシェに復讐するんだって思ったの……ルーシェを愛していたはずなのに……こんなにもあっさり呪いに負けちゃったの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
あの……あの……クソ女神が……二人にこんな辛い思いを植え付けやがって……殺してやりたい……不老不死なのが忌々しい……殺したい!!
「だからなんだってんだよ! 今はどうなんだ! あいつらのことを愛しているのか?」
——今は……愛してない……死んでくれて……よかったって思った。でも、あの人たちは私たちが誘ったんだよ? 大好きって何度も言って、向こうも愛してるって言ってくれた……とっても嬉しかったのに……今は、死んでくれてよかったって思ってるの……
——そんなのって……おかしいよね?
——許せないよ……私たちが弱いからこんなことになったんだよ? ルーシェの隣にいる資格なんてないよ……
——嫌だよ……もう嫌……なにもかも私たちのせい……私たちが弱いから……あんなにも心が汚いから……ルーシェが褒めてくれたのに……綺麗な心を誇れるように褒めてくれたのに……私たちは汚いの……体も……心もいっぱい、いっぱい汚れているの!!
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
これはエルフの綺麗な心が裏目に出た結果なのだろう。
自分がそう思ってしまったことが許せないんだろう。
だから、そんな過去に耐えられなくなって……
「それのどこが汚れているっていうんだ!」
——おかしいよ……汚れているじゃない……醜いよ……ルーシェだって、私たちがあの人たちのことを好きになったって聞けば、嫌な気持ちになったでしょ? 本当に……本当にルーシェより愛していたんだから! それを殺しちゃったルーシェを憎んでさえいたんだから!!
——嫌だよ……もうこんなこと……もう汚れたくない……自分の醜い姿を見たくないよ……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れて——
なにもかもに怯えて、耐えられなくて、悔しくて、許せなくて……でも、それでもまだ、守りたい思いがあるらしい……汚れてるなんて自戒の言葉を口にするやつが壊れてなんかいるわけがない……閉じこもっているだけだ。
「——汚れてなんかいねぇよ!! ふざけんな!!」
——……なんで……なんでそんな嘘をつくの? 汚れているじゃない……とっても気持ちよくて……子供が欲しいとまで思ったのに……なんでルーシェはそんなこと言うの? 嘘つき! いつも私たちにはいいことばっかり! 人間のことはあんなに意地汚いと罵るくせに!!
——私たちだって人間と変わらないもん!
——種族が違うだけで……なにも変わらないもん!
——ルーシェが嫌いな人間とおなじだもん!!!
やっぱりそうだ……感情と心の乖離に耐えられなかっただけなんだ。
なら……仕方ないか……僕はやらなければいけない……なぜなら、一番乖離させている原因は僕なのだから……
「……そうだよ。人間も、エルフも、大して変わらない。僕の庇護下に入らなかったら皆殺しだって脅したもんな……嫌だったか? 僕に守られるのは?」
——そんなこと……ない。私たちを救ってくれたルーシェはとっても、とってもかっこよくて、眩しくて……とても好きになった。
「だったら……最後まで守らせてくれよ……頑張るから……僕の力の限り……頑張るから!」
——嫌……嫌なの……もう守られたくないの……
「……なんでだよ!!」
——だって……だって……私たちは、ルーシェを泣かせたの……大好きだったのに……ルーシェ、私たちを見て……弱くてどうしようもない私たちを見て……泣いちゃったんだもん! 嫌なの! もう守られたくないの!
「……なんでだよ」
——だって……こんな……こんなにも……ルーシェが好きなのに……あっさりとほだされてしまう……こんなにも好きなのに……迷惑をかけてばかり……こんなにも好きなのに……なんの役にもたたない……こんなにも好きなのに……
やっぱりそうだ……心を蝕んでいる原因。
「……僕が怖いんだろう?」
——そんなことない!! そんなこと……
「そうか? 僕が二人の立場だったら怖いと思うけどな……」
——なによそれ……怖くなんかない! ルーシェのこと……大好きだもん!! なんで……なんで……なんでそんなこと言うの!!
……そんなに強く否定されると……やっぱりそうだったかと思ってしまう……ちょっとショックだけど……まあ、仕方ない。
「リッカ……フェリ……僕は二人の心の叫びを聞いても……汚れていると聞いても……二人を愛している気持ちはこれっぽっちも変わらない……逆に、僕が汚れているんだと感じたよ……」
——ルーシェが汚れている……?
これだ……これなんだ……彼女たちに巣食う一番の根本原因……あれだけ弄ばれても懸命に生きて来れたエルフが、たった一回の過ちで心を閉ざしてしまった理由。
「ああ、僕は人間を殺し、絶望させることが楽しいんだ。人間が嫌いだ。大っ嫌いだ。リッカやフェリみたいに、人間を好きになったり、愛してあげることなんてできない。
僕はリッカやフェリが思っているようなやつじゃない。二人からしてみれば……僕はどうだ? 汚れていないか? 真っ黒で見えないだけじゃないか? 僕に救ってもらったから、見て見ぬ振りをしているんじゃないか?」
——そんなこと……
「僕だって……もともと人間だった……大して変わらないさ……僕がしていることを肯定なんかできない……だけど、二人はなんで僕に優しくしてくれるんだ?」
——だって……ルーシェは私たちに優しくしてくれたから……救ってくれたから……
「……辛いんだろ? なんの罪もない人間を殺すことが」
——……
「いいんだ……これは僕の片思いに過ぎない。好きな娘が辛いなら、僕は無理強いはしない。だから……エルフの里に帰ろう……こんな思いはもうたくさんだ……
二人が笑って過ごせないなら……僕は都合のいい恋人だって構わない……
二人の重荷になるのなら……僕は身を引いたって構わない……
二人を独占して泣かせたいわけじゃない……愛しているんだ……だから……帰ろう? エルフの里で、新しい未来を築くこともできるはずさ……だから……泣かないでくれ……笑っていて欲しい……お願いだ……」
僕もおかしくなってきている……たかが外れたみたいに言葉が止まらない……駄目なのに……こんなことじゃ……救えないじゃないか……
——ルーシェ……嫌……嫌……嫌! 嫌!!
——ルーシェがいないと嫌!!
——愛してくれるって言ったじゃない!!
——愛してくれなきゃ死んでやるって!!
——そんなの愛してるって言わないもん!!
——そんなの……
せっかく僕が身を引こうとしたのに……なんでそんなことを言うんだよ……なんなんだよ……こんなところに閉じこもるほどに苦しかったくせに! なんでまだ僕を求めるんだ……なんで僕が二人を愛してないなんて言うんだ!! ふざけるなよ……
「愛してる……心の底から愛してる!! どうしようもなく二人が欲しい!!! 手放したいわけがないじゃないか!! 僕はわがままなんだ!! 二人がいないと嫌だし、二人が笑っていないと嫌なんだ!! 他の男を好きになったなら、その男を殺したいくらいに嫉妬するさ!! 二人を泣かすようなやつは八つ裂きにして絶望させてやりたいんだ!!
でも……それは二人を泣かせていい理由になんかならない!! 笑っていて欲しいって思うのは愛じゃないのか!? 僕が二人を愛していないだと……ふざけるなぁああ!!!
もう、どうしようもなく好きで好きで好きで、愛おしくてたまらないんだ!!!」
叫んでる最中ずっと……ぎゅーっと……胸が張り裂けそうなほどに締め付けられているみたいだった……痛くて……苦しくて……
——……
「助けてくれ……僕を……どうにかなってしまいそうなんだ……おかしいんだ……どんなに汚れていると言われたって……どんなに他の男が好きだと言われたって……どんなに怖がられていたって……二人のことが好きなんだ……胸が張り裂けそうに痛いんだ……もう……どうしようもないんだ……」
——……
「また……前みたいに……笑って僕を見てくれないか? ……リッカ……フェリ……お願いだから……僕を……」
***
……その一言を最後に、深い精神世界にいた記憶は途切れてしまった……
そして、目を覚ませば……
吸い込まれそうな暗闇の中で気が狂ったように木霊する声。
時折フラッシュバックのように教会での光景が明滅していた。
愛おしそうに男たちを迎える二人が映し出されては消え……よがる声、愛を囁く声が聞こえる。
この映像は……リッカとフェリの目線だろう……覆い被さる男に向けてリッカとフェリが愛を囁く光景は、一気に僕の感情をぐちゃぐちゃにした。
「なんだよここ……」
僕の脳に響いて鳴り止まないリッカとフェリの重なった倍音が「汚れている」と繰り返す。
まるで自分が体験しているかのように、教会での出来事が直接脳に刻まれていく。
こんなところにいたんじゃ帰って来られるわけがない。
僕は拒絶する脳を必死に押さえ込み、二人に声をかける。
「おい! いるんだろう! リッカ! フェリ!」
——……ルーシェだ! ……ルーシェが来てくれた!
——……でも、私たちは汚れているの。
——だめなの……汚れているの!
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
いた……しかし、感傷に浸っている余裕なんかまったくない……すぐに連れ戻さなければ僕の意識がもたないかもしれない。
「クソ! なにをそんなに汚れているなんて言ってるんだ!」
——だって……私たち…… 私たち……自分で犯してってお願いしたのよ?
——なんだかとてもあの人たちがかっこよく見えて……お願いって……おねだりしたの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
あの呪いには「惚れ」の効果があった。愛のキューピットなんて生易しいもんじゃない……とても邪悪で下卑た能力であり、誰もがとても幸せに暮らすことができる神の御技なんだろう。
「そりゃそうだろ! 二人は呪いをかけられていたんだ! 当たり前だ!」
——そうだとしても……ルーシェを裏切ったの……
——ルーシェは誰にも見せたくなかったんでしょう? でも、私たちは自分で見せて……触ってって……挿れてって言ったの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
「クソ! 頭にガンガン響く……。そんなの全部呪いのせいだ! 気にすることはない!」
——気にすることはないだって……助けてくれなかったのに……私たちたち……待ってたんだよ? こんないやらしくて、醜い心になっても、待ってたんだよ?
——気にすることはないって……ルーシェにとって、私たちはそんなものなの? こんなに汚くても気にしないんだ?
——私たちはもう……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
脈絡なんかあったもんじゃない……感情のまま喚き散らすように思いついたことを言っているようだ……
「……いやだったんだろう? だからこんなところに閉じこもっているんだろう!」
——そうだよ……嫌だったよ……呪いのナイフなんか目じゃないくらいに気持ちよかったもん……ルーシェよりもずっと、ずっとあの人たちの方がいいって思ったもん……私たちはあの人たちのことを、ルーシェよりも好きになったの……とってもとっても好きだったの……でも……死んじゃった。
——私たちが愛していた人を、ルーシェが目の前で殺しちゃった……
——私たち……ルーシェが憎かったの……すごく、すごく……ルーシェに復讐するんだって思ったの……ルーシェを愛していたはずなのに……こんなにもあっさり呪いに負けちゃったの……
——だから……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
あの……あの……クソ女神が……二人にこんな辛い思いを植え付けやがって……殺してやりたい……不老不死なのが忌々しい……殺したい!!
「だからなんだってんだよ! 今はどうなんだ! あいつらのことを愛しているのか?」
——今は……愛してない……死んでくれて……よかったって思った。でも、あの人たちは私たちが誘ったんだよ? 大好きって何度も言って、向こうも愛してるって言ってくれた……とっても嬉しかったのに……今は、死んでくれてよかったって思ってるの……
——そんなのって……おかしいよね?
——許せないよ……私たちが弱いからこんなことになったんだよ? ルーシェの隣にいる資格なんてないよ……
——嫌だよ……もう嫌……なにもかも私たちのせい……私たちが弱いから……あんなにも心が汚いから……ルーシェが褒めてくれたのに……綺麗な心を誇れるように褒めてくれたのに……私たちは汚いの……体も……心もいっぱい、いっぱい汚れているの!!
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……
これはエルフの綺麗な心が裏目に出た結果なのだろう。
自分がそう思ってしまったことが許せないんだろう。
だから、そんな過去に耐えられなくなって……
「それのどこが汚れているっていうんだ!」
——おかしいよ……汚れているじゃない……醜いよ……ルーシェだって、私たちがあの人たちのことを好きになったって聞けば、嫌な気持ちになったでしょ? 本当に……本当にルーシェより愛していたんだから! それを殺しちゃったルーシェを憎んでさえいたんだから!!
——嫌だよ……もうこんなこと……もう汚れたくない……自分の醜い姿を見たくないよ……
——汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れている……汚れて——
なにもかもに怯えて、耐えられなくて、悔しくて、許せなくて……でも、それでもまだ、守りたい思いがあるらしい……汚れてるなんて自戒の言葉を口にするやつが壊れてなんかいるわけがない……閉じこもっているだけだ。
「——汚れてなんかいねぇよ!! ふざけんな!!」
——……なんで……なんでそんな嘘をつくの? 汚れているじゃない……とっても気持ちよくて……子供が欲しいとまで思ったのに……なんでルーシェはそんなこと言うの? 嘘つき! いつも私たちにはいいことばっかり! 人間のことはあんなに意地汚いと罵るくせに!!
——私たちだって人間と変わらないもん!
——種族が違うだけで……なにも変わらないもん!
——ルーシェが嫌いな人間とおなじだもん!!!
やっぱりそうだ……感情と心の乖離に耐えられなかっただけなんだ。
なら……仕方ないか……僕はやらなければいけない……なぜなら、一番乖離させている原因は僕なのだから……
「……そうだよ。人間も、エルフも、大して変わらない。僕の庇護下に入らなかったら皆殺しだって脅したもんな……嫌だったか? 僕に守られるのは?」
——そんなこと……ない。私たちを救ってくれたルーシェはとっても、とってもかっこよくて、眩しくて……とても好きになった。
「だったら……最後まで守らせてくれよ……頑張るから……僕の力の限り……頑張るから!」
——嫌……嫌なの……もう守られたくないの……
「……なんでだよ!!」
——だって……だって……私たちは、ルーシェを泣かせたの……大好きだったのに……ルーシェ、私たちを見て……弱くてどうしようもない私たちを見て……泣いちゃったんだもん! 嫌なの! もう守られたくないの!
「……なんでだよ」
——だって……こんな……こんなにも……ルーシェが好きなのに……あっさりとほだされてしまう……こんなにも好きなのに……迷惑をかけてばかり……こんなにも好きなのに……なんの役にもたたない……こんなにも好きなのに……
やっぱりそうだ……心を蝕んでいる原因。
「……僕が怖いんだろう?」
——そんなことない!! そんなこと……
「そうか? 僕が二人の立場だったら怖いと思うけどな……」
——なによそれ……怖くなんかない! ルーシェのこと……大好きだもん!! なんで……なんで……なんでそんなこと言うの!!
……そんなに強く否定されると……やっぱりそうだったかと思ってしまう……ちょっとショックだけど……まあ、仕方ない。
「リッカ……フェリ……僕は二人の心の叫びを聞いても……汚れていると聞いても……二人を愛している気持ちはこれっぽっちも変わらない……逆に、僕が汚れているんだと感じたよ……」
——ルーシェが汚れている……?
これだ……これなんだ……彼女たちに巣食う一番の根本原因……あれだけ弄ばれても懸命に生きて来れたエルフが、たった一回の過ちで心を閉ざしてしまった理由。
「ああ、僕は人間を殺し、絶望させることが楽しいんだ。人間が嫌いだ。大っ嫌いだ。リッカやフェリみたいに、人間を好きになったり、愛してあげることなんてできない。
僕はリッカやフェリが思っているようなやつじゃない。二人からしてみれば……僕はどうだ? 汚れていないか? 真っ黒で見えないだけじゃないか? 僕に救ってもらったから、見て見ぬ振りをしているんじゃないか?」
——そんなこと……
「僕だって……もともと人間だった……大して変わらないさ……僕がしていることを肯定なんかできない……だけど、二人はなんで僕に優しくしてくれるんだ?」
——だって……ルーシェは私たちに優しくしてくれたから……救ってくれたから……
「……辛いんだろ? なんの罪もない人間を殺すことが」
——……
「いいんだ……これは僕の片思いに過ぎない。好きな娘が辛いなら、僕は無理強いはしない。だから……エルフの里に帰ろう……こんな思いはもうたくさんだ……
二人が笑って過ごせないなら……僕は都合のいい恋人だって構わない……
二人の重荷になるのなら……僕は身を引いたって構わない……
二人を独占して泣かせたいわけじゃない……愛しているんだ……だから……帰ろう? エルフの里で、新しい未来を築くこともできるはずさ……だから……泣かないでくれ……笑っていて欲しい……お願いだ……」
僕もおかしくなってきている……たかが外れたみたいに言葉が止まらない……駄目なのに……こんなことじゃ……救えないじゃないか……
——ルーシェ……嫌……嫌……嫌! 嫌!!
——ルーシェがいないと嫌!!
——愛してくれるって言ったじゃない!!
——愛してくれなきゃ死んでやるって!!
——そんなの愛してるって言わないもん!!
——そんなの……
せっかく僕が身を引こうとしたのに……なんでそんなことを言うんだよ……なんなんだよ……こんなところに閉じこもるほどに苦しかったくせに! なんでまだ僕を求めるんだ……なんで僕が二人を愛してないなんて言うんだ!! ふざけるなよ……
「愛してる……心の底から愛してる!! どうしようもなく二人が欲しい!!! 手放したいわけがないじゃないか!! 僕はわがままなんだ!! 二人がいないと嫌だし、二人が笑っていないと嫌なんだ!! 他の男を好きになったなら、その男を殺したいくらいに嫉妬するさ!! 二人を泣かすようなやつは八つ裂きにして絶望させてやりたいんだ!!
でも……それは二人を泣かせていい理由になんかならない!! 笑っていて欲しいって思うのは愛じゃないのか!? 僕が二人を愛していないだと……ふざけるなぁああ!!!
もう、どうしようもなく好きで好きで好きで、愛おしくてたまらないんだ!!!」
叫んでる最中ずっと……ぎゅーっと……胸が張り裂けそうなほどに締め付けられているみたいだった……痛くて……苦しくて……
——……
「助けてくれ……僕を……どうにかなってしまいそうなんだ……おかしいんだ……どんなに汚れていると言われたって……どんなに他の男が好きだと言われたって……どんなに怖がられていたって……二人のことが好きなんだ……胸が張り裂けそうに痛いんだ……もう……どうしようもないんだ……」
——……
「また……前みたいに……笑って僕を見てくれないか? ……リッカ……フェリ……お願いだから……僕を……」
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