みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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東の大陸蹂躙

魔王討伐の軌跡 チート勇者の作り方



 ——ここは……

 ついさっき死んでしまったはずの意識が戻れば、自分は固く冷たい床に寝そべっていた。
 起き上がり、目を開ければイカツいおっさんの顔が……

「うわぁ!!」

「はん! ようやく起きたか」

 立ち上がった筋骨隆々のおっさんが、白い帯だけを体に巻きつけて半裸の姿を晒していた。
 
「……」

「言葉も出ないか……まあいい。貴様、死の間際に誰かのために死にたいと強く懇願しておったそうだな」

 腕を組み、見下すように俺を見るおっさんが、死に際のことを聞いてきた。
 ……そうだ。ついさっきのことのように、死にゆく記憶が蘇ってきた。

「えっと……はい」

「そうか……なら、救って欲しい世界があるのだが、転生してみないか?」

「……転生?」

「ああ、そうだ。その世界では魔王が暴れまわり、もう半数近い人類を殺してしまった。
 そこで、貴様をその世界へ転生させる代わりに、魔王を倒して欲しいのだ」

「魔王を……倒す……」

 これは……ファンタジー系ラノベ的展開なのだろうか?
 しかし、おっちょこちょいの女神も、人の良さそうな神さまもいない。
 目の前にいるのは……半裸の威圧的なおっさん。
 なぜだ……もっと女神様と恥じらうような会話がしたかったのに……。

「ああ、だが、そのまま転生させても死ぬだけだ。だから、強化して転生させることになる」

「はぁ……」

「しかも、都合よく勇者召喚の儀を大々的に行った直後でな、その生贄を使って貴様を強化することができるのだ」

「生贄……ですか」

「そうだ」

 誰かのために死にたかったとは言ったが、生贄の末に転生の恩恵を受けるのはどうかと思った。
 いくら魔王を倒すという命題のためだとしても、まるで自分の思いとは逆方向の状況じゃないだろうか?

「いえ……そんな犠牲の上で生き返りたくはありません」

「なら、貴様は魔王に脅かされている世界を見捨てるのだな?」

「……え?」

「彼らは思いを託し、大規模な犠牲を払ってまで強い勇者を懇願しておるのだ。魔王に蹂躙され、このままではその世界の人類は滅亡するだろう。
 しかし、そんな弱い人間が大勢の命と引き換えに託した思い……貴様ならわかるんじゃないか?
 なにもできず、ただただ無意味に殺されていく人たちを見て見ぬ振りなどできはしないだろう?
 そして、貴様ならその思いを汲み取り、魔王を打倒し得る器だと思ったのだが……見込み違いだったか?」

 おっさんはまくし立てるようにその世界の状況と、俺が最後に願った思いを重ねた。

 虚しかった……ただただ、虚しかった。

 自分の人生が無意味だと感じ、生まれてきた意味を渇望した。
 なぜ死ぬ間際にこんなにも虚しさを味わわなくてはいけないのか?
 なぜ……生まれてきてしまったのか?

 こんなことを感じる人生なんて……無意味なだけだろう。

 ……だからわかるんだ。
 魔王に虐げられた人々の無念が痛いほどに。
 ただ無意味に殺されてしまった時の虚しさを……なにもできなかった人間が抱く悲しみが……痛いほどにわかるんだ。

 救えるのなら救いたいに決まっている。
 それが俺の生きる意味になるのならなおさらだ。
 おっさんは今、俺が願った思いを全て叶える舞台を用意してくれたのだ。

 冴えないおっさんフリーターがチート勇者に転生して魔王を倒すとか……どんなラノベだよ……

 俯いてしまった顔をおっさんへと向ければ……怖い顔をしてこちらを睨みつけていた。
 早く返答しなければマズイ……
 なにがマズイのかはよくわからないが、俺はその時、おっさんの威圧的な態度に気圧されていたのだと思う。
 だからというわけではないが、気づけば焦ったように声を出していた。

「……やらせてくれ」

「そうか。よく言った」

 イカついおっさんがニヤリと笑う。
 その笑顔は怖すぎて、とてもじゃないが笑い返すことはできなかった。

「それで……どうすればいいんだ?」

「ならこれを見ろ」

 そう言って手渡されたのは一枚の用紙。
 その素材が紙かどうかはわからないが、茶色い紙には淡く光った白い文字が記されていた。

 //
 職業 勇者 lv1
 名前 カケル・コンドウ 
 生命力 100
 攻撃力 10
 防御力 10
 魔力  10
 魔攻  10
 魔防  10
 素早さ 10
 幸運  10

 スキル


 
 振り分けP 900000
 
 レベルアップ   1P~
 パラメータアップ 2P~
 スキル選択    1000P・10000P・50000P

 //

「あの……これは?」

「これはどのような強化をして転生するかを振り分ける用紙だ。本来なら選択などをするより、この世の理に任せた方が強くなる可能性は高い。
 しかし、八十万の犠牲を払ってハズレは引きたくないだろう? だから、貴様はそれを使って自分の強さを確定させろ。
 スキルはその時に出現した選択肢から選べ、やり直しはきかない。
 だが、パラメータやレベルは振り分け直しができる。まずはスキル以外から試してみろ」

「はぁ……」

 言われるがまま、俺はレベルを999にしてみたり、パラメータの値をカンストさせてみたりした。
 最初は少ないポイントで強化できていたのだが、オールカンストに設定すると、ポイントの残りは207000Pだった。

 ……この状態でスキルにポイントを使ってみるか……まずは最低の1000Pからだ。

 スキル選択の欄の1000Pを指で押すと、用紙に三種類のスキルが浮かび上がった。

 投擲(小) 水耐性(小) 索敵(極小50cm)

 なるほどな……1000Pで現れるスキルなんてこんなものなのだろう。
 とりあえず索敵は却下だ、その距離では索敵もクソもない。
 であるなら水耐性だろうか? とりあえず、水耐性を指で押す。

 スキルに水耐性(小)が記入された。

 しかし……これは5万ポイント一択だな。
 中途半端なスキルが使えたところで意味がない。いくら強くても、スキル次第では勝てないこともあるだろう。
 少しビビったが、俺は迷わず5万Pを押した。
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