みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

文字の大きさ
89 / 157
東の大陸蹂躙

魔王討伐の軌跡 魔王への謁見と勇者の絶望

 本日二週目にして魔王の間へと続く階段を登っていた。
 まさか召喚初日に魔王と会うことになるとは思わなかった。
 共に階段を登るヒューロンさんは緊張しているのか無口になっていた。黙々と二人で階段を登り、見えてきたのは大きな両開きの豪華な扉だ。
 扉の脇には二体のガーゴイルが立っている。
 ここまでの道中も何もなく、すぐに魔王がいると思われる部屋の前までたどり着いてしまった。
 すると、ガーゴイルが槍を交差して俺たちの行く手を阻む。

「魔王様に謁見を申し込んだ者です。ヒューロン・ハーリッツと申します」

 ヒューロン公爵は深々とガーゴイルに頭を下げる。
 俺も同じく頭を下げた。

「話は聞いている……通れ」

 流暢に言葉を話し、大きな扉を開けてくれたガーゴイル。
 ここから見える部屋の中はとても広く、100mはあろうかというくらい先に翼の生えた玉座に座る者がいた。魔王は白い蛇のような肘掛に手を乗せこちらを見ている。両隣にはガーゴイルが立っていた。
 俺たちは一礼をして部屋に入り、歩みを進めて魔王の前まで歩み寄る。
 だんだんと見えてきたその姿は、とても魔王というには華奢な体躯だった。
 やがて、魔王の前までたどり着けば、膝をついてこうべを垂れる。

「この度は不躾な申し出にも関わらず、このような場を設けていただけたこと、誠に感謝いたします」

 公爵は丁寧に感謝の意を伝えた。

「……で、なんの用?」

 魔王の第一声は、飾り気のないありふれた疑問の声だった。

「はっ! 私共がここに来た理由ですが、魔王様に謝罪を申し出たいと思い参上いたしました」

「謝罪? なんの?」

「……申し上げます。魔王様は獣人奴隷の解放にご尽力しているようでしたので、私共の行いが魔王様の思いを侵害してしまったのではないかと思い謝罪に参りました。つきましては、獣人奴隷解放を宣言いたしたく参った所存にございます」

「へぇ……じゃあ、三日待つ。それで解放できるか?」

「三日……それではダリダ王国に戻るのが精一杯にございます。もう少し——」

「——じゃあ、ガーゴイルを使いに出す。今すぐ経てば深夜には着くだろう。その後も周辺諸国に回り、獣人を解放して来い。あと、獣人の集落にいる人間共の首を差し出せ。話はそれからだ」

 魔王は公爵の言葉を遮ったかと思えば、まくし立てるように条件を突きつけ話しを終えてしまった。
 取り付く島もない。

「いや、たとえ帰れたとしても、そのような時間では……国内の政治を動かすには……」

「じゃあ僕も行こう。魔王城のダンジョンは一旦閉鎖する。そのくだらない政治とやらに僕の時間を費やそうものならおまえの国は終わりだ。
 よし……すぐに出る。みんなを集めろ」

「はい!」

 魔王の一声で、両脇にいたガーゴイルが駆け足にて部屋を出て行った。

「あ……あの! 本当にダリダ王国まで来るつもりですか!?」

「ああ。そうだが。なにか問題でも? おまえが言ったんじゃないか。獣人を解放してくれるんだろう?」

「え……ええ。それは勿論ですが……魔王様にとって、お見苦しい輩も多く——」

「——大丈夫だ。そんなクソ共は即刻殺してやる。おまえが進めやすいようにな」

 魔王は不気味な笑みを浮かべて公爵を見据えていた。
 およそ交渉と言えるような話し合いではない。瞬く間になにもかも一方的に差し出さなければならない状況に追い込まれていた。
 役者が違う。そんな言葉が相応しいほどに公爵は手のひらで踊らされている。

「か……かしこまりました……」

「クックック……ヒューロンと言ったか? おまえのような者は初めてだ。人間にも殺すのが惜しい者もいるのだな」

「あ……ありがとう……ございます」

 横目で見えた公爵は尋常じゃない汗をかき、目も泳ぎっぱなしだ。
 ……ただ、当初の目的はとりあえず進み始めている。魔王は謝罪を受け入れてくれる気があるような口振りで、公爵の話をとりあえず受け入れてくれている。
 このまま穏便に進めばいいのだが……

「それで……おまえの隣にいるやつは何者なんだ? ああ、そうそう、嘘をつけばこの話は無しだ。おまえの進言なんて受け入れなくても直に解決するからな」

 ……ここに来て俺の存在がまずい立場になってしまった。召喚した勇者だと答えれば、今までの話が全て無駄になりかねない。
 しかし……嘘を見破られればこの場で殺されるかもしれない……やばい……やるしかないのか?

「この者は……ここに来てもらうために呼んだ者でございます。恥ずかしながら一人では心細く、最低限の見栄えを考えてのことでございます。
 魔王様に会うにも単身では失礼かと思いまして」

「……あははは! なるほどな。嘘ではない……か。面白い。おい……横の者、顔を上げてこちらに来い。武器は置いてな」

「……はい」

 ヒューロン公爵が切り抜けてくれたピンチを無駄にはできない。
 俺は全能神が持たせてくれた剣を置き、魔王の前に赴き跪いた。
 それを見て、魔王は立ち上がり俺の肩に手を置いた。

「……名前はなんというんだ?」

「カケル・コンドウと申します」

「……そうか。下がっていいぞ」

「はい」

 魔王は俺の名前を聞くと、早々に下がらせた。
 なにかを試したかったのだろうか?

 ——おそらくステータスを読み取られたものと推察いたします。

 俺の疑問に大賢者が答えた。
 その瞬間、さっと血の気が引いた。
 慌てて魔王を見据えれば、もうこちらには目を向けていなかった。

 ——……本当に読み取られたのかな?

 ——確証はありませんが、魔王が持つスキルの中に全てを見通す者がありました。実行は可能です。

 ——マジかよ! こっちも読み取れたのか?

 ——はい。私のスキルはカケル様が見たものの全てを鑑定可能です。

 ——じゃあ……魔王のステータスはもう把握済みってわけだ。

 ——はい。

 大賢者から教えてもらった魔王のステータスは非常に尖った振り分けをされており、スキルも俺のとは違うものが設定されていた。

 ——勝てる……かな?

 ——非常に厳しいと進言せざるを得ません。

 ——マジかよ……なにがやばいんだ?

 ——レベル差がありますので全てのスキルがこちらに有効であり、魔王のスキルに唯一対抗できる手段が神技の神域スキルのみとなります。また、こちらから攻撃を仕掛ければ負けが確定となるでしょう。

 ——は!? なんでだよ!

 ——攻撃を機に絶対時間によって時間が止まり、カケル様は成す術もなく殺されることになります。

 ——嘘だろ……

 こんなにもチートなスキルを持っているし、ステータスも負けてはいないはずの魔王に対抗できる手段はないらしい。
 大賢者によって知らされた現実は、あまりにも残酷な未来だった。
感想 168

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。