みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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東の大陸蹂躙

魔王討伐の軌跡 リバースワールド

 ——なんとかならないのか!?

 ——……現状ではどうにもできません。

 ——絶対時間の範囲外からの攻撃ならどうだ?

 ——一手目で間合いを詰められ、二手目で範囲内に追い込まれてしまいます。

 ——なら隠れながらなら……

 ——見つからなければ可能ですが……こちらの攻撃が通る可能性は低いです。

 ——じゃあ、召喚獣に時を操るやつはいないのか?

 ——おりません。

 ——じゃあ、魔王を巻き戻せばいいんじゃないか?

 ——24時間しか巻き戻りませんので、有効とは思えません。

 ——ならこっそり重ねがけしていけば、いつかは消滅しないか?

 ——……可能性はありますが……うまくいくとは思えません。

 ——なら試しに……

 ——お待ちください。実行するにしても、絶対時間の範囲外からにしてください。その都度魔王の絶対時間が発動する可能性がありますので、今は危険過ぎます。隠れながら実行し続けなけれな意味がありません。しかし、それでも難しいでしょう。全てを見通す者スキルで場所を特定されてしまえば終わりです。

 ——クソ! それじゃあ、神域が対抗できるってことだけど、具体的にはどういうことだ?

 ——魔王の空間の覇者スキルをほぼ弱体化できます。動けないといことはないでしょう。

 ——動けない?

 ——はい。空間の覇者スキルとは、範囲内の空間を自由に操る能力となります。対峙した者の動きを操作したり、空間内の次元を操作できます。

 ——……そんなに凄いスキルだったのかよ。

 ——……はい。

 ——じゃあ……勝てない……けど、攻撃さえしなければ負けることもないってことか。

 ——そうなります。

 ——……結局この世界に来てもなにもできずに死を待つだけの存在になったっていうことか。

 ——いえ、今は勝利するための材料がありませんが、カケル様以外にも勇者はたくさん存在します。貴重なスキルを持っている者と手を組めば可能性はあります。

 ——俺一人じゃ無理ってことか。

 ——はい。ですが、サブとして巻き戻しスキルは非常に有効です。

 これだけ有効そうなスキルをたくさんつけたというのに……選択ミスだったのだろうか?

 ——なあ、なにを選択すれば魔王に勝てたのかな?

 ——カケル様の選択肢の中で言えば、絶対時間と空間の覇者を持ち、レベルを999にすればほぼ負けなかったでしょう。また、順時空魔法を使い続ければ勝ちは確定的でした。

 ——なるほどね。あの三択で唯一の外れを引いたわけだ。これが一番強いと思ったんだけどなぁ。

 ——おっしゃるとおり、逆時空魔法は最強と言えるでしょう。しかし、それも場合によります。

 逆時空魔法は最強といえる……しかし、今の状況ではなにもできない。なら……もっと前に戻って……魔王と会う前……いや……あれ? ……待てよ……なら……

 ——……今、凄いことを思いついてしまったんだけど……俺を……ってか勇者召喚すら巻き戻せばいいんじゃないかな?

 ——ステータス振り分けをやり直すと言いたいのでしょうか?

 ——そう……できるかな?

 ——可能です。

 ——そうか……最悪うまく行かなければ18回引き直して逆時空魔法を引いてもう一度巻き戻せばいい。うまくいく可能はどの程度ある?

 ——18回の内に逆時空魔法を引ける確率は9割以上あります。さらに言えば、欲しいスキルを思い描きながら選択項目を押せばより確率は上がります。

 ——そうか……じゃあやるか……ってかやるしかないって感じだな。

 ——私をまた……選んでいただけますか?

 ——え? あっ……ああ。必ず選ぶぜ!

 ——ありがとうございます。

 なぜか大賢者がデレたところで俺の決意は固まった。それより俺が死んでから感覚的には24時間経っていない現状に驚きを隠せないが、そこはここまで迅速に情報を得られた事実をありがたく思うことにする。

 そうと決まれば即実行だ。このまま移動してしまえばどんどん状況は悪くなる。
 買い出しを口実に城下町まで行き、そこで時間を巻き戻そう。

 俺は魔王に跪きながら買い出しの嘆願をすることにした。

「あ……あの。すぐに出るなら買い出しとかしたいのですが……すぐに済ませるので、ちょっと出てもいいですか?」

 魔王がこちらに向き直り、いやらしい笑みを浮かべている。



「巻き戻すのか? ……大召喚の末に生み出された勇者よ」




 ドキリと心臓が跳ね、全身からネットリとした汗が噴き出す。
 全てを見透かされたような物言いに全ての思考が死を悟った。……終わったと。
 しかし、その瞬間、そんな思いとは裏腹に体が反射的に動いていた。
 神域を展開して後ろに跳ねる。感覚的には扉まで跳ねたはずだった。
 しかし、飛べたのは人一人分程度。そして、やけに体が重い。
 驚いて魔王を見れば……笑っていた。

「どうした?」

「……」

 震えて声が出ない。
 呼吸も整えられず、全身に死の恐怖が巡る。
 息苦しい……あんなに早く打っていた鼓動も今では弱々しく脈を打っている。
 徐々にクラクラと眩暈のような症状が出始め、内臓までもを押さえつけられている感覚に気づいた。
 神域がなければなす術もなく死んでいた。
 今の今まで、ふざけた魔王だと軽く見ていた。

 ……その姿を見た人間はいない。

 そう教えられた時、もっと警戒するべきだった。国ごと砂に変えるような化け物だと理解していたはずだ……なぜこんなにも浅はかな行動に出てしまったのか? こいつに交渉など不可能だ……もし受け入れられたとしても、野放しにできるはずがない! なにか……なにかないか? この一瞬だけでも切り抜けられる策は!!

 ——魔王以外の時間を巻き戻しましょう。ここなら勇者召喚の地も範囲内です。戻りたいポイントを思い描き、「魔王以外リバースワールド」と詠唱してください!

 大賢者がこの刹那にピンチを乗り切る策を提案してくれた。

 ——わかった! でも、そんなこと可能なのか?

 ——私が魔力操作の補助をします。必ず成功させますので安心して世界を遡ってください!

 冷静だった大賢者の口調はいつしか荒々しいものとなっていた。
 そんな大賢者の思いに答えるべく、俺は魔王のスキルによって押さえつけられた体に抗い、必死に口を動かした。
 未だ魔王は俺を見下すように笑っている。

 クソ野郎が……おまえは絶対に……俺が倒してやるからな……!

「魔王以外……リバース……ワールド!」

 そう唱えると……俺の視界は変遷を始めた。
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