みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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東の大陸蹂躙

魔王討伐の軌跡 証明



「な……逃げた……」

 勇者が魔法を唱えたかと思えば、勇者もヒューロンも目の前から消えていた。
 しかし、変化はそれだけではなかった。

 ——魔王様、見張っていた大軍勢が消え失せました。

 ——なにを言って……まさか……至急仲間の安否を報告しろ! そして、こっちに来るよう伝えろ!

 ——リッカ様問題なしです!

 ——フェリアーラ様問題なしです!

 ——クザン様問題なしです!

 ——ヘレ様問題なしです!

 ——保護した獣人の数はどうだ!?

 ——現在2590です!

 ……減っている。今日の最終報告では2680だったはずだ。リバースワールドか……やってくれるじゃないか……しかし、なぜ僕以外と叫んだのか? 考えられる理由として……絶対時間対策だろうか? そして、逃げた理由は……勝てないとわかっていたから。この状況から導き出される答えは……きっと、僕のステータスを確認したのだろう。

 しかし、戻したポイントが勇者召喚前……いったいなぜだ? 逃げるだけならそこまで遡る必要なんてない……むしろ、場所が特定される分、不利なはずだ。もう一度神との対話が必要だったということか?

 ——魔王様

 ——どうした?

 ——今、不思議な現象が起きまして……送ったはずの物資が戻って参りました。

 ——いつ送ったやつだ?

 ——少し前に送った物資です。

 ——わかった。また送ってくれ。よろしく頼む。

 ——はっ!

 クソッ……目的はいったいなんなんだ?

 僕があれこれ思案していると、突然目の前にクザンが現れた。

「よう!」

「は? おまえ……いつの間に」

「ああ……多分時が止まったんだろうな」

「なに!? 誰から攻撃を受けた?」

「わからん。魔王様が止まってたんで軽く殴ろうとして起こしたばかりだからな」

「ルーシェ! ルーシェ! みんな止まっちゃってる!」

 リッカが騒がしくこちらに走ってきた。
 フェリとヘレも一緒のようだ。

「クソ! 全員絶対時間が発動したのか!?」

「どうなっているのでしょうか?」

 フェリが不安そうに尋ねる。

「わからない……だけど……何かが起こっている」

「おいおい、やべーんじゃないか? この城内全部を含んだ広範囲攻撃ってことだろ?」

 クザンの考察は合っている……絶対時間が解ければなにが起きるのかもわからない。しかし……

「……いや、僕だけ止まっていたんだろ?」

「まあそうだが」

「……今は考えてもわからない。今すぐ転移するぞ! 時間がない。みんな魔法陣将軍の部屋まで急ぐぞ!」

 僕はみんなを飛ばし、急いで魔法陣将軍のいる物資保管庫へと急いだ。
 ここからならさほど遠くない。絶対時間の発動時間内に収まるだろう。
 扉を抜け階段を飛び降り外に出れば、城をぐるっと回り、裏手にある倉庫に入る。
 多くのガーゴイル達が物資の整理をしている最中のようだ。魔法陣将軍の上に物資はなかった。僕は優秀なガーゴイル達に感謝した。

 そして、みんなを魔法陣将軍の上へと乗せると急いで魔法陣将軍を絶対時間内に引き込み稼働させる。

「転移!」

 その言葉をキッカケに僕たちは魔法陣将軍へと吸い込まれ、中央の大陸にあるもう一つの魔法陣将軍の下へと転移した。

 転移先は人間共を殲滅した王国の宝物庫だった。

「……お待ちしておりました」

 ガーゴイルが丁寧にお辞儀をして僕たちを迎え入れる。
 みんな無事に転移できたようだ。

「あれ? なんでガーゴイルさん動いてるの?」

 リッカが不思議そうにガーゴイルを見つめている。

「お前たちには言っていなかったが、時間を止められる範囲は限られている。あっちはまだ止まっているぞ」

「へー。そうなんだ」

 感心したように頷くリッカ。

「今はそれよりもこの後どうなるかだ。向こうにいるガーゴイルたちが動き出せば思念伝達も始まるだろうからなにが起きたかわかるだろう」

「ねぇねぇ。それよりあの水晶で見ればいいんじゃない?」

 リッカはどうも全てを見通す者スキルが好きなようだ。しかし、言われてみればそっちの方がわかりやすいだろう。

「そうだな。じゃあなにが起きたか見てみよう」

 僕はリッカに言われてから水晶を持ち歩くことにしていた。持ち運びしやすいように、サイズは小さめに変更して。

 ポケットから水晶を取り出し、過去の映像を投写する。場所はリッカがいる初級ダンジョンのゴールだ。
 今はちょうど勇者とヒューロンがリッカと会話しているところから始まった。

「そういえば、リッカから報告を受けてすぐにあいつらが来たんだったな」

「なんの話?」

 僕の話にリッカはキョトンとした態度で疑問符を浮かべている。

「なにって……リッカがヒューロンを僕の下へ仲介したんだろう?」

「えー覚えてないよ?」

「いや……だって——」

 そう言おうとして理解した。
 リバースワールド……あいつは巻き戻したんだ。僕以外の全員を。
 そして、勇者たちが出て行った後の映像によって、なにが起きたのかが映し出される。

 リッカが仕事をしていると、突然周囲の時が止まり、慌てたリッカが出口に向かって走っていった。映像はリッカを追うと、場外でフェリと出会う。二人は城へと入り、秘密の通路を通ってヘレの部屋へと向かった。ここは打ち合わせどおりだ。二人にはなにかあったらヘレを守るように言ってある。
 そして、優雅に紅茶を飲んでいたヘレが突然の訪問者に驚き紅茶を零してしまった。
 あわあわと慌てふためくヘレを落ち着かせて、リッカとフェリはヘレを守るように周囲に固まり、フェリが小さなな結界を周囲に施すと、二人は忽然と消え去り、ヘレはベッドに腰掛けていた。

「……全然記憶にないよ」

「……私もです」

 映像は全て真実を映し出す。
 二人に記憶がないことから、リバースワールドによって時が巻き戻されたことが証明された。

 そして……

 ——魔王様、見張っていた大軍勢が消え失せました。

 時はまた巻き戻されてしまった。
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