みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

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北の大陸蹂躙

神殺しの系譜 節操のない神たち

 さて、神様……全能神の居場所だが、フローテは娘ということもあって、全能神のいる場所にはだいぶ近かった。
 部屋を出て右へ、左手に見える階段を上がれば全能神がいる場所だ。

「じゃあ、開けるわよ?」

「ああ」

 フローテが最後の確認を取れば、神へと続く扉は開かれた。

「親子共々ハイセンスなファッションセンスをしているな」

 二人は同じく一枚の布で身を包む軽装をしている。ペアルックなのだろうか?

「これはここの正装みたいなものよ」

「筋骨隆々のおっさんには似合わないな」

「そう? 意外にいいと思うけど?」

「……ペアルックのファザコンめ」

「それは否定できないわね」

 眠たそうに僕らを見つめる神。
 僕らは特に取り繕うことなく駄弁りながら神の下へと赴く。
 そこまで広くもないので、あっさりと目の前にまでたどり着いてしまい軽く挨拶をした。

「突然申し訳ありません。魔王です」

「……」

 神は僕を一瞥すると、大袈裟なあくびをかいて、肩や首をぐるぐると回し、こちらへと向きなおった。

「魔王か……何の用だ?」

「僕に付いているバッドステータスを取り除いていただけませんかね? もしよければどんなものなのかも教えて欲しいです」

 神は目を細めて僕のことを見定めると、目尻と口角を少し上げて笑った。

「……ほう、懐かしいなぁ。おまえに掛かっているのはよく知ってる奴がかけた天罰だ。除去は可能だが……こちらになんの得があるんだ?」

 突然来て、はいどうぞとはいかなかった。
 神は勝手気ままに施しをお与えにはならないようだ。

「停戦……ですかね。あ、でも、人間は殺しますけどね」

 神はあご髭を撫でると目をつぶって頷いた。

「停戦……ならいいか。ほれ……除去したぞ」

 神がそう告げれば、僕の中にあったバッドステータスは綺麗に消え去っていた。

「おお、ありがとうございます。神様はサタン様をご存知ですか? 僕に天罰をかけた方だと思うのですが」

「……サタン? 知らんな。だが、おまえにかけられていた天罰は、ルシが使っていたものに似ておる」

「ルシ?」

「その昔、堕天した天使だ」

「堕天って?」

「天界には戻れなくなった反逆者ということだ」

「なにをしたの?」

「命令に背いた。奴は人間に仕えよと言ったら謀反を起こして来おった。わしに敵うはずもなく、ちっぽけな軍勢は蹴散らしたがな」

「それは酷い話だね」

「まったくだ」

「ルシにはどうやったら会えるの?」

「奴は地中に眠っておる。会いたければ会いに行け」

「あと……フローテは僕に忠誠を誓ったんだけど……どうする? 返そうか?」

 心底どうでもよかったが、あえて口に出して、今後のフローテについて決めておきたかった。
 神は少し嫌な顔をすると、言い放った。

「そいつはくれてやる。好きにするといい。おまえが望む世界にわしらを置いといてくれればそれでいい」

「ちょっと! パパ、どういうこと? こんな奴の言うことを聞くわけ?」

 ファザコンが親から見捨てられて焦り始める。

「フローテ……黙れ。おまえにはわからないのだろう。この者の存在そのものに意味はない。天界に実在しているということ、それだけで理解できるはずだ」

「天界にいる理由は意味不明だけど……パパならなんとかできるでしょう!」

 他力本願極まりない。自分も神だというのに。

「できない。強いとか、弱いの問題じゃない。できるかできないかの問題なんだ。いくらわしが戦いに強くても、神の存在は消せないようにな」

「まさか! こいつが神を殺せるっていうの?」

「それは無理だ。しかし、神に終わりは無いが、始まりはある。存在しなかったことにするくらい、そいつには容易いことだろう」

「嘘……でしょ?」

 ようやく僕がしようとしていたことを理解したようだ。

「バレてたんだ」

「当たり前だ。およそ生命体といえるような器ですらないくせに。そこに精神が宿っておるなど、無機物を殺せと言われているようで敵わん。
 好きなようにして、好きなように生きよ。フローテ、おまえも謝るなら今のうちだぞ?」

 ここまで言われてわからない馬鹿な娘でもないのだろう。
 フローテはこちらに向き直って頭を下げた。

「パパがそういうなら……仕方なくなんだからね」

「……」

 こいつはなんでこんなひねくれ者になってしまったのか? 今のところ神は殺す対象ではないが、こんな奴をのさばらせておく必要も感じない。

「全能神……なんでこいつを娘にしたんだ?」

「……当時は……とても美しく、このまま育てばいつかはわしがと思っていたんだが……妻といろいろあってな。こんなことになってしまったのだ」

「……じゃあ、そこまで記憶を戻すか」

「……魔王……お主は天才だ! くれぐれも記憶だけだぞ!」

「え? ちょっと……パパ、なにを言って……」

「おっけー! フローテ、戻れー!」

「あ……まっ……あれ……ここは……あ! 全能神様!」

 フローテが周囲の変化に一瞬たじろぎ、目の前にいる神の存在に大いに驚いた。

「おお! フローテ! 美しく、身も心も綺麗なフローテよ! ささ、こちらへおいで」

 全能神はフローテを手招きすると、目の前に立たせ、一枚の布切れをすぐに取り去ってしまった。

「あ……」

 全能神から求められてしまえば、女神に抗う術はないのだろう。

「おお! おお! これは、これは……」

 恥ずかしげもなく全能神がフローテの胸を手で押し上げ、柔らかく円を描くよに揉みしだくと、すぐさまフローテの先端へと口を運んだ。

「あっ……全能神……様。んっ……」

「おい。全能神。僕を忘れてお楽しみとはいい度胸だな」

 僕の忠告に全く反応することなく、フローテの胸を堪能している全能神。
 急に見せられている立場としては、正直もう少し……とか言っている暇はもうなさそうだ。
 全能神が早々に欲棒をぶち上げている。
 フローテを持ち上げて、今にもそれを押し込んでしまう勢いだった。

「クソ全能神!! 待て!」

「おわ!?」

「きゃ!」

 僕はもうあと少しで近親相姦しようとしていた義理の父親を引き剥がし、フローテをこちらへと引き寄せた。
 確認すれば、まだフローテは魔族だった。
 記憶だけが過去に戻っているのだから当たり前だろう。

「おい! 魔王! いい所だったのに……なぜだ!」

「なんでおまえが好き勝手にしてるんだ? 約束を反故にするつもりか?」

「約束? なんだそれは?」

「フローテは僕の好きにしていいのだろう?」

「それは……そう言ったが……あの頃のフローテを思い出して……ついな!」

 ごめーん! みたいな雰囲気の言葉だが、目が笑っていない。そして、欲棒も治ってはいないようだ。

「そうか……なら僕も……」

 僕は目の前に手をかざすと、隆々と勇ましい全能神の前に妻を転移させた。
 サーチして、転移させる。
 一瞬でこんなことができてしまうのだから、これはもうチートとかそういうことではないんだろう。

「あら……あなた……どうしたの……それ?」

「え!? なんで!」

 目を丸くして驚く全能神。

「じゃ、夫婦仲良くな! 行くぞ、フローテ」

「え? あの……え?」

 僕は驚くフローテを布で包んだ。
 そして、グロリエスへと意識を向けて叫ぶ。

「転移!」

 転移してから気づいたが、神がグロリエスに留まるには器とかが必要だって言ってたっけ……僕はフローテが消え去る前にグロリエスに滞在するための器を作り、そこにフローテを入れ込んだ。
 あの頃のフローテとは別人なのだ……容れ物も別人にしておいてやった。
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