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北の大陸蹂躙
北の大陸 リッカ・フェリside ー 王の本意
「恐れながら、私はアリフォール王国の国王を務めさせていただいております。クロイツ・アリフォールと申します。このような場を取り計らっていただき、誠に感謝いたします」
なんの躊躇いもなく頭を下げる王と側近の兵士。
その礼にはくだらないプライドなんて欠けらもなかった。
「……顔を上げよ」
王様たちは皆跪いたまま魔王に顔を向ける。
「驚いたぞ。ダン。これはいったいどうやったんだ? 門前払いをされるのが関の山だと思っていたのに」
ルーシェの問いにダンが答えようとしたら、王様が手で遮った。
「恐れながら私から申し上げます。魔王様の御来国をこの者から報告を受け、急ぎはせ参じた所にございます」
「……ふーん。で、このギルドでの一件を聞いているか?」
「はい、この度は国の者が無礼を働いたとのことで、この場にいる冒険者の処罰は追っていたしますゆえ、魔王様におかれましては、城に御来城いただき、歓迎の宴に御参加いただければと思います」
どんな話し合いになるかと思えば、一国の王が全身全霊をかけて魔王に媚を売っていた。
「……そうか。この二人はエルフなのだが……大丈夫なのか?」
「エルフのお連れ様がいらっしゃることもお聞きしております。先程この国の法を変え、エルフの地位を確かなものへと変更いたしました」
「ほう……法律を変えた……そんなことがこの短時間で可能なのか?」
民主主義にしろ、社会主義にしろ、こんな簡単に国の法律を変えることは不可能に近い。
この国は絶対君主制度で成り立っていた。
「はい。私の一存にてすぐにでも発令、実行可能な範囲でございます」
「ああ、そう……で、僕は人間を殺すためにここにいるのだが……歓迎とはどういうことだ? 死にたいのか?」
「いえ……そういうわけではありません。ダンの報告でお聞きしたのですが……魔族に転身し、魔王様の配下となることができると……ならば、我々も魔王様の配下にしていただきたいと思っております」
驚いたことに、王様の狙いは魔族になることだった。
ルーシェが時として提示してきた人間が助かる可能性のある唯一の道。
リッカの話では、魔族になった勇者も、僧侶も殺されたという話だが、たった一人、人間でありながら魔族となって生かされている者がいる。
東の大陸の唯一の生存者……獣人を助けたシスターだ。
なぜルーシェが彼女を生かしたのか理由はわからないが、人間が殺されずに済んだのはそれだけ。
それ以外の人間は、全て殺されている。
……いや、もう一人だけいたかな……ただ、助かったとは言い難い。
勧誘したわけでもないのに、自ら魔族となりたいなどと懇願するような人間は初めてのことだった。
「魔族になりたいだと? なぜだ?」
「……お恥ずかしい話ですが、これが唯一の生きる道だと悟ったからでございます」
王様が発した声は小さく、弱々しいものだった。
「なるほど……つまらない結論を出したものだな」
「この国は力が全て。力のある者が常にこの国を治めて参りました。かくいう私も王家の血筋ではありません。前王を打ち倒し、名を授かったのです」
「はぁ……」
ルーシェは目頭に指を立てて俯いた。
まるで、王様との会話が面倒だとでも言いたげに。
「……わかった。もういい。僕はその宴には参加しない。そのかわり、この二人を僕の代理としてもてなしてくれ」
「そう……ですか……魔王様がいらっしゃらないのは残念ですが……かしこまりました。お二人には最高の宴をご用意いたします」
「ああ……それと、おまえの権力をこの二人に譲渡し、この国の階級を撤廃しろ。そして、国、個人の財を国民へと平等に譲渡しろ。また、金本位制度は終わりだ。これからは紙幣を発行して経済を回せ。全国民には労働の義務を課す。おまえも例外ではない、ちゃんと働くんだぞ」
緊張しつつも頬が緩みかけていた王様の表情が曇る。
突然まくし立てるようにルーシェから要望が出されて、王様は二の句が告げられずにいた。
「クックック……なに惚けた顔をしているんだ? これから始まるのは、おまえがやってきた甘っちょろい絶対君主制ではなく、真の意味での絶対君主制だ。その頂点にはこの二人を据える。国の名前も変更しようか……そうだな、リーフェ皇国ってのはどうだ?」
「は? え……あの……それは……」
「ククク……不服そうだな。せっかく勝ち取った王の座を奪われ、貧困街の者と同じ地位となるのだ、困惑するのも仕方ないことかな?」
「いえ……そのようなことは……」
「では明日また来る。その時までに僕が言った要望を全て実行しろ。そして、やがて国が軌道に乗り、この国が栄えたころ、現国王であるおまえの処刑を持って、この国の国民が魔族となることを許そう」
困惑していた王様の目は開かれ、その言葉が信じられないとでもいうように驚きの表情を浮かべた。
「……え……処刑……ですか?」
「ククク……ああ、そうだ。その身をもって、この国の国民が魔族に値する存在だと示せ。それが出来なければ……皆殺しだ。ここに転がっている冒険者の死体のように、あっさり死ねると思うなよ?」
困惑と、驚きを隠せない王様の姿を見て、ルーシェは醜悪な笑みを浮かべ、見下すように笑っていた。
そして、ルーシェとサタン様は困惑する王様に私たちのことをよろしくと告げてここを離れていった。
なんの躊躇いもなく頭を下げる王と側近の兵士。
その礼にはくだらないプライドなんて欠けらもなかった。
「……顔を上げよ」
王様たちは皆跪いたまま魔王に顔を向ける。
「驚いたぞ。ダン。これはいったいどうやったんだ? 門前払いをされるのが関の山だと思っていたのに」
ルーシェの問いにダンが答えようとしたら、王様が手で遮った。
「恐れながら私から申し上げます。魔王様の御来国をこの者から報告を受け、急ぎはせ参じた所にございます」
「……ふーん。で、このギルドでの一件を聞いているか?」
「はい、この度は国の者が無礼を働いたとのことで、この場にいる冒険者の処罰は追っていたしますゆえ、魔王様におかれましては、城に御来城いただき、歓迎の宴に御参加いただければと思います」
どんな話し合いになるかと思えば、一国の王が全身全霊をかけて魔王に媚を売っていた。
「……そうか。この二人はエルフなのだが……大丈夫なのか?」
「エルフのお連れ様がいらっしゃることもお聞きしております。先程この国の法を変え、エルフの地位を確かなものへと変更いたしました」
「ほう……法律を変えた……そんなことがこの短時間で可能なのか?」
民主主義にしろ、社会主義にしろ、こんな簡単に国の法律を変えることは不可能に近い。
この国は絶対君主制度で成り立っていた。
「はい。私の一存にてすぐにでも発令、実行可能な範囲でございます」
「ああ、そう……で、僕は人間を殺すためにここにいるのだが……歓迎とはどういうことだ? 死にたいのか?」
「いえ……そういうわけではありません。ダンの報告でお聞きしたのですが……魔族に転身し、魔王様の配下となることができると……ならば、我々も魔王様の配下にしていただきたいと思っております」
驚いたことに、王様の狙いは魔族になることだった。
ルーシェが時として提示してきた人間が助かる可能性のある唯一の道。
リッカの話では、魔族になった勇者も、僧侶も殺されたという話だが、たった一人、人間でありながら魔族となって生かされている者がいる。
東の大陸の唯一の生存者……獣人を助けたシスターだ。
なぜルーシェが彼女を生かしたのか理由はわからないが、人間が殺されずに済んだのはそれだけ。
それ以外の人間は、全て殺されている。
……いや、もう一人だけいたかな……ただ、助かったとは言い難い。
勧誘したわけでもないのに、自ら魔族となりたいなどと懇願するような人間は初めてのことだった。
「魔族になりたいだと? なぜだ?」
「……お恥ずかしい話ですが、これが唯一の生きる道だと悟ったからでございます」
王様が発した声は小さく、弱々しいものだった。
「なるほど……つまらない結論を出したものだな」
「この国は力が全て。力のある者が常にこの国を治めて参りました。かくいう私も王家の血筋ではありません。前王を打ち倒し、名を授かったのです」
「はぁ……」
ルーシェは目頭に指を立てて俯いた。
まるで、王様との会話が面倒だとでも言いたげに。
「……わかった。もういい。僕はその宴には参加しない。そのかわり、この二人を僕の代理としてもてなしてくれ」
「そう……ですか……魔王様がいらっしゃらないのは残念ですが……かしこまりました。お二人には最高の宴をご用意いたします」
「ああ……それと、おまえの権力をこの二人に譲渡し、この国の階級を撤廃しろ。そして、国、個人の財を国民へと平等に譲渡しろ。また、金本位制度は終わりだ。これからは紙幣を発行して経済を回せ。全国民には労働の義務を課す。おまえも例外ではない、ちゃんと働くんだぞ」
緊張しつつも頬が緩みかけていた王様の表情が曇る。
突然まくし立てるようにルーシェから要望が出されて、王様は二の句が告げられずにいた。
「クックック……なに惚けた顔をしているんだ? これから始まるのは、おまえがやってきた甘っちょろい絶対君主制ではなく、真の意味での絶対君主制だ。その頂点にはこの二人を据える。国の名前も変更しようか……そうだな、リーフェ皇国ってのはどうだ?」
「は? え……あの……それは……」
「ククク……不服そうだな。せっかく勝ち取った王の座を奪われ、貧困街の者と同じ地位となるのだ、困惑するのも仕方ないことかな?」
「いえ……そのようなことは……」
「では明日また来る。その時までに僕が言った要望を全て実行しろ。そして、やがて国が軌道に乗り、この国が栄えたころ、現国王であるおまえの処刑を持って、この国の国民が魔族となることを許そう」
困惑していた王様の目は開かれ、その言葉が信じられないとでもいうように驚きの表情を浮かべた。
「……え……処刑……ですか?」
「ククク……ああ、そうだ。その身をもって、この国の国民が魔族に値する存在だと示せ。それが出来なければ……皆殺しだ。ここに転がっている冒険者の死体のように、あっさり死ねると思うなよ?」
困惑と、驚きを隠せない王様の姿を見て、ルーシェは醜悪な笑みを浮かべ、見下すように笑っていた。
そして、ルーシェとサタン様は困惑する王様に私たちのことをよろしくと告げてここを離れていった。
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