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北の大陸蹂躙
北の大陸 リッカ・フェリside ー めげない王様
しかし、そんなルーシェの言葉とは裏腹に、残された者同士が打ち解け合うような状況ではなかった。
王様はしばらく呆然自失といった状況で、跪いたまま考え込んでいた。
兵士たちも王様が立ち上がらないために同じく跪いたままだ。
そのまましばらく場に静寂が流れ、ようやく痺れを切らせた兵士が王様に声をかけた。
「アリフォール王様……大丈夫ですか?」
「ん……あ、ああ……大丈夫だ」
ようやく現実に引き戻された王様は顔を上げ、声をかけた兵士を見る。
「……魔王様が言っていたこと……覚えているか?」
「はい」
「……そうか。おまえはどう思う?」
「……無理難題を突き付け、実行されないことを見越しているのかと……そう感じました」
実行されなければ皆殺し。
まさしくその通りなのだろう。
ルーシェの最終目標は人間の殲滅なのだから。
答えた兵士だけではなく、他のみんなも感じていたであろう事実である。
「しかし……それではこの国は……国民の命は尽きることになる……」
「……」
誰もが重くるしい空気を感じ取り、絶望的な未来を思い描いていた。
「駄目だ……やらなくては……このまま殺されるわけにはいかない……なにをすればいい……私は……」
そんな状況にも関わらず、王様の目は死んではいない。
呆然とした頭を必死になって動かし、次の一手を模索していた。
手を口元に添え、遠くを見るようにしてぶつぶつと無理難題を解く方法を考えていた。
そして、誰も立ち上がらないという珍妙な光景はしばらく続き、リッカが欠伸をかいたころ、ようやく王様が思考の檻から戻って来た。
王様が私たち二人に目を配ると、慌てたように声を上げた。
「あ……申し訳ありません!」
そう言って王様は立ち上がり、私たちに頭を下げた。
「お待たせしてしまいました。お二人を馬車へとお連れしろ」
「はっ!」
跪いていた兵士が立ち上がり、私たちの前まで来る。
「どうぞこちらへ」
兵士は手を前に出しながら私たちをギルド前に止めてあった馬車へと促した。
特に断る理由もないので、大人しく馬車へと乗り込む。
続けて王様も馬車の中へと入って来る。
全員が座ったら、まもなく馬車が城へと向けて出発。ガタガタと車体を揺らし、ペースは少し早いように感じた。
「申し訳ありませんでした。お客人をお待たせして考え込んでしまいました」
「いえ」
王様の謝罪に対してなんと言えばいいのかわからず短く返答する。
それに、ルーシェになにもかもを決められてしまい、こちらもどうしていいか困っている。
ただ、ルーシェに守られているので特に不安なこともなく、ただただ王様に言われるがまま過ごせばいいのかな、なんて、漠然とした考えしか思い浮かばないでいた。
「あの……お二人と魔王様との御関係はどういったものなのでしょうか?」
「えっと……私たち二人はルーシェの妻です」
特に隠す理由もないので素直に伝える。
こういった場になれていないリッカは朗らかな表情を浮かべて口を閉ざしていた。
「え? ……そっ……そうでしたか……この度の無礼、誠に申し訳ありませんでした」
魔王の妻だと判明し、改めて頭を下げる王様。
「顔をお上げください。なにをされたとしても、ルーシェがついていますので問題ありません。いつでもなにかあれば守ってくれますから」
王様に釘を刺すように溢れ出てしまった自慢のような内容。
しかし、これは自慢ではなく事実であり、私たちになにかあれば、間違いなくこの国は滅びを迎えることになるだろう。
王様が陳腐な気の迷いに陥り、過ちを犯すとも限らない。そんな終わり方をして欲しくはなかったために出た言葉だった。
「いえ……そうだとしても……どうか、謝罪をお受け取りください。贅を尽くした宴の席をご用意いたしますので」
「ありがとうございます。しかし、もう謝罪は止してください。ルーシェは謝罪よりも行動を重視いたします。要求を達成して初めて謝罪は受け入れられるでしょう」
王様へ忠告の意味も兼ねての発言だったが、なんだか偉そうな感じになってしまったなと感じた。どうやら思った以上に緊張しているようだった。
「あ……はい、おっしゃるとおりです」
ルーシェと同じくらい幼さを残す王様は謝罪の言葉を告げることなく頭を下げた。
そのまま話は終わりかと思ったのだが、王様は思いついたかのようにバッと顔を上げた。
「あの! 無礼を承知で申し上げます。魔王様の言っていた紙幣とはなんなのでしょうか? それと、金本位制とはなんなのでしょうか? どうか教えていただきたいのです!」
王様はそのままグイッと顔を前へと突き出し、目を見開いて私に懇願する。
言われたことを理解できずに頭を悩ませていたらしい。
しかしながら、その答えを持ち合わせてはいない。
「えっと……申し訳ありません。私も存じておりませんので……」
「そう……ですか。なら……あ、あの! ならば魔王様とお話しできませんか? いつでも守ってもらえるのであれば、なんらかの連絡手段をお持ちなのですよね?」
善意でした忠告だったのだが、王様はその情報も加味して食い下がってきた。
ここで連絡手段はないと告げれば、この王様はその情報を鵜呑みにしてなにをするかわからない。
ダメ元ででもルーシェと連絡するしか方法はなさそうだ。
なり振り構ってはいられない。
そんな気迫を漂わせて迫る王様。
一国の王として、ここまで貪欲に自らが動く人間を見たことがなかった。
相手は魔王……そして、期日は明日、国民の命までかかっている状況なのに、この王様は諦めてはいないようだ。
王様はしばらく呆然自失といった状況で、跪いたまま考え込んでいた。
兵士たちも王様が立ち上がらないために同じく跪いたままだ。
そのまましばらく場に静寂が流れ、ようやく痺れを切らせた兵士が王様に声をかけた。
「アリフォール王様……大丈夫ですか?」
「ん……あ、ああ……大丈夫だ」
ようやく現実に引き戻された王様は顔を上げ、声をかけた兵士を見る。
「……魔王様が言っていたこと……覚えているか?」
「はい」
「……そうか。おまえはどう思う?」
「……無理難題を突き付け、実行されないことを見越しているのかと……そう感じました」
実行されなければ皆殺し。
まさしくその通りなのだろう。
ルーシェの最終目標は人間の殲滅なのだから。
答えた兵士だけではなく、他のみんなも感じていたであろう事実である。
「しかし……それではこの国は……国民の命は尽きることになる……」
「……」
誰もが重くるしい空気を感じ取り、絶望的な未来を思い描いていた。
「駄目だ……やらなくては……このまま殺されるわけにはいかない……なにをすればいい……私は……」
そんな状況にも関わらず、王様の目は死んではいない。
呆然とした頭を必死になって動かし、次の一手を模索していた。
手を口元に添え、遠くを見るようにしてぶつぶつと無理難題を解く方法を考えていた。
そして、誰も立ち上がらないという珍妙な光景はしばらく続き、リッカが欠伸をかいたころ、ようやく王様が思考の檻から戻って来た。
王様が私たち二人に目を配ると、慌てたように声を上げた。
「あ……申し訳ありません!」
そう言って王様は立ち上がり、私たちに頭を下げた。
「お待たせしてしまいました。お二人を馬車へとお連れしろ」
「はっ!」
跪いていた兵士が立ち上がり、私たちの前まで来る。
「どうぞこちらへ」
兵士は手を前に出しながら私たちをギルド前に止めてあった馬車へと促した。
特に断る理由もないので、大人しく馬車へと乗り込む。
続けて王様も馬車の中へと入って来る。
全員が座ったら、まもなく馬車が城へと向けて出発。ガタガタと車体を揺らし、ペースは少し早いように感じた。
「申し訳ありませんでした。お客人をお待たせして考え込んでしまいました」
「いえ」
王様の謝罪に対してなんと言えばいいのかわからず短く返答する。
それに、ルーシェになにもかもを決められてしまい、こちらもどうしていいか困っている。
ただ、ルーシェに守られているので特に不安なこともなく、ただただ王様に言われるがまま過ごせばいいのかな、なんて、漠然とした考えしか思い浮かばないでいた。
「あの……お二人と魔王様との御関係はどういったものなのでしょうか?」
「えっと……私たち二人はルーシェの妻です」
特に隠す理由もないので素直に伝える。
こういった場になれていないリッカは朗らかな表情を浮かべて口を閉ざしていた。
「え? ……そっ……そうでしたか……この度の無礼、誠に申し訳ありませんでした」
魔王の妻だと判明し、改めて頭を下げる王様。
「顔をお上げください。なにをされたとしても、ルーシェがついていますので問題ありません。いつでもなにかあれば守ってくれますから」
王様に釘を刺すように溢れ出てしまった自慢のような内容。
しかし、これは自慢ではなく事実であり、私たちになにかあれば、間違いなくこの国は滅びを迎えることになるだろう。
王様が陳腐な気の迷いに陥り、過ちを犯すとも限らない。そんな終わり方をして欲しくはなかったために出た言葉だった。
「いえ……そうだとしても……どうか、謝罪をお受け取りください。贅を尽くした宴の席をご用意いたしますので」
「ありがとうございます。しかし、もう謝罪は止してください。ルーシェは謝罪よりも行動を重視いたします。要求を達成して初めて謝罪は受け入れられるでしょう」
王様へ忠告の意味も兼ねての発言だったが、なんだか偉そうな感じになってしまったなと感じた。どうやら思った以上に緊張しているようだった。
「あ……はい、おっしゃるとおりです」
ルーシェと同じくらい幼さを残す王様は謝罪の言葉を告げることなく頭を下げた。
そのまま話は終わりかと思ったのだが、王様は思いついたかのようにバッと顔を上げた。
「あの! 無礼を承知で申し上げます。魔王様の言っていた紙幣とはなんなのでしょうか? それと、金本位制とはなんなのでしょうか? どうか教えていただきたいのです!」
王様はそのままグイッと顔を前へと突き出し、目を見開いて私に懇願する。
言われたことを理解できずに頭を悩ませていたらしい。
しかしながら、その答えを持ち合わせてはいない。
「えっと……申し訳ありません。私も存じておりませんので……」
「そう……ですか。なら……あ、あの! ならば魔王様とお話しできませんか? いつでも守ってもらえるのであれば、なんらかの連絡手段をお持ちなのですよね?」
善意でした忠告だったのだが、王様はその情報も加味して食い下がってきた。
ここで連絡手段はないと告げれば、この王様はその情報を鵜呑みにしてなにをするかわからない。
ダメ元ででもルーシェと連絡するしか方法はなさそうだ。
なり振り構ってはいられない。
そんな気迫を漂わせて迫る王様。
一国の王として、ここまで貪欲に自らが動く人間を見たことがなかった。
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