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北の大陸蹂躙
(挿絵追加) 北の大陸 リッカ・フェリside ー ドレス
「……そろそろ宴が始まる時間となりますので、私は一旦失礼させていただきます。シェフにフィナンシェ以外に伝えることはありますか?」
ライラが席を立ち、リッカの要望を伝えに行くという。
特になにも要望はないので、楽しみにしていますとだけ伝えてくださいと伝言を頼むとライラは部屋を出て行った。
「ライラ、とってもいい人だったね」
「ええ……」
ライラが話してくれた内容を加味して考えれば、きっと彼女は歯痒い思いを抱いていたことだろう。
なにせ、誇りに思っている王様の野望を打ち砕く存在をもてなしていたのだから。
それでも、彼女は立派な立ち振る舞いを崩さず、嫌味の一つも言わなかった。
私だったら彼女のようにできるだろうか?
とてもじゃないができると言い切れる自信はなかった。
「よーし、フェリ、せっかくだからお風呂入ろ! 汗や埃でベタベタのまま行くのも失礼だしね」
「そうですね。じゃあ、リッカから先にどうぞ」
「ダメダメ! 一緒に入るの! あんまり時間なさそうだからパパっと入っちゃおう!」
「うーん。そうですね。わかりました。一緒に入りましょうか」
そのあと、はしゃぐリッカとお風呂に入り、魔道具の使い方に四苦八苦しながら汗を流した。
思っていた以上に汚れていたため、宴の前にお風呂に入れたことを感謝する。
そして、お風呂から上がって脱衣所へ行くと、下着以外がなくなっていた。
「あれ? ここに置いたよね?」
「ええ。誰かがここに入ったのでしょうか?」
仕方なく下着を着けて部屋への扉を開けると、テーブルに置いてあったフィナンシェを頬張るルーシェの姿があった。
「あ! ルーシェ! どうしたの?」
「ん……んぐ。ようやく上がったか。宴会用のドレスを持ってきたんだ。あのままでも問題ないのだろうが、こういった趣向もいいだろう?」
ルーシェが指差す先には赤と青のドレスが掛かっていた。
赤いドレスは体のラインに沿ったタイトなもので、豪華な装飾はないものの、生地の良さや、大胆なカットが目を惹く大人びたものだった。
青いドレスの方は、濃淡が織りなす模様がとても鮮やかで、やや細身のフレアドレスはどこから見ても綺麗なラインになるような工夫がされていた。
「すごーい! これ、私たちが着ていいの?」
「どちらも素敵です……ありがとうございます!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。人間どもに見せつけてやるといい……しかし、二人とも不慣れだろうからさっきのメイドに着付けをさせよう」
ルーシェがおもむろに手をあげると同時に私は声をかけた。
「あ! その前に……」
私はルーシェがライラを呼ぶ前に言わなきゃと思い、王様から言われたことを相談した。
ルーシェは少し考えこむように目を瞑る。
「そうか……なら、フェリを通して答えるから、その時になったら呼んでくれ。よし! じゃあ、ライラを呼ぼう」
パチン! とルーシェが指を鳴らせば、目の前にライラが現れる。
「え……」
ライラは片付けでもしていたのか、衣装を手に突然の転移に驚いていた。
「あ、ライラ。こらルーシェ! ライラも忙しいんだよ、いきなり転移させたから困ってるじゃない」
「ちゃんと考えて転移させたから大丈夫だ。ライラだったな、二人の着付けを頼む」
ライラはフィナンシェを千切っているルーシェに目をやると、いったい何事かといった具合で声が出なかった。
「聞こえなかったのか? ライラ、二人の着付けを頼む」
「え……あ、はい。あの……失礼ですが、あなたは……魔王様……ですか?」
「ああ」
夢中でフィナンシェ頬張るルーシェは素っ気ない態度でライラに答えた。
「そっ……そうですか。失礼いたしました。ええ、私もそろそろ着付けをとドレスを探していたところだったので……今すぐお持ちいたします」
「待て、ドレスならそこにある」
すぐにでも飛び出して行きそうなライラを呼び止め、ルーシェは持ってきたドレスを指差す。
ライラは指差す方に目をやると、二つのドレスに目を奪われたようだ。
「これは……すごい……」
「当たり前だ。文句を言われながらも無理やりドワーフたちに作らせた一品だ。そこいらのドレスと一緒にするなよ」
ライラはいつのまにかドレスの前まで移動しており、確かめるように生地を撫でていた。
「わかります……こんな素敵で斬新なドレスは初めて見ました。生地も……滑らかな肌触り……光沢もある……この国では作れないでしょう」
「ふふ……二人が見込んだだけあるな。どうだライラ、僕の妻になる気はないか?」
「「ルーシェ!」」
とっさにに出た声がリッカと被ってしまった。
「はは、冗談だ。じゃあよろしく頼む。僕がここに来たことは誰にも言わないように。まだ生きていたければね」
最後のフィナンシェを口に放り込んでルーシェは席を立った。
ライラはルーシェへと向き直ると深々とお辞儀をする。
「大丈夫です。決して言いません」
「そうか。じゃあね」
ルーシェは控えめに手を振ると誰もいなかったかのように消えてしまった。
——あーそうそう二人とも、明日なんだけど……
しかし、最後にルーシェはまた悪いことを思いついたようで、私たちに明日やってもらいたいことを一方的に伝えて話を切った。
何度か理由を問いかけたのだが、虚しい独り言のようになってしまった。
そして、私たちがドレスの着付けを終わらせたころ、部屋の扉を叩く音がした。
「宴会の準備が整いました」
私たちを迎えに来たのだろう。
ようやく待ちに待った宴会が始まる。
ライラが席を立ち、リッカの要望を伝えに行くという。
特になにも要望はないので、楽しみにしていますとだけ伝えてくださいと伝言を頼むとライラは部屋を出て行った。
「ライラ、とってもいい人だったね」
「ええ……」
ライラが話してくれた内容を加味して考えれば、きっと彼女は歯痒い思いを抱いていたことだろう。
なにせ、誇りに思っている王様の野望を打ち砕く存在をもてなしていたのだから。
それでも、彼女は立派な立ち振る舞いを崩さず、嫌味の一つも言わなかった。
私だったら彼女のようにできるだろうか?
とてもじゃないができると言い切れる自信はなかった。
「よーし、フェリ、せっかくだからお風呂入ろ! 汗や埃でベタベタのまま行くのも失礼だしね」
「そうですね。じゃあ、リッカから先にどうぞ」
「ダメダメ! 一緒に入るの! あんまり時間なさそうだからパパっと入っちゃおう!」
「うーん。そうですね。わかりました。一緒に入りましょうか」
そのあと、はしゃぐリッカとお風呂に入り、魔道具の使い方に四苦八苦しながら汗を流した。
思っていた以上に汚れていたため、宴の前にお風呂に入れたことを感謝する。
そして、お風呂から上がって脱衣所へ行くと、下着以外がなくなっていた。
「あれ? ここに置いたよね?」
「ええ。誰かがここに入ったのでしょうか?」
仕方なく下着を着けて部屋への扉を開けると、テーブルに置いてあったフィナンシェを頬張るルーシェの姿があった。
「あ! ルーシェ! どうしたの?」
「ん……んぐ。ようやく上がったか。宴会用のドレスを持ってきたんだ。あのままでも問題ないのだろうが、こういった趣向もいいだろう?」
ルーシェが指差す先には赤と青のドレスが掛かっていた。
赤いドレスは体のラインに沿ったタイトなもので、豪華な装飾はないものの、生地の良さや、大胆なカットが目を惹く大人びたものだった。
青いドレスの方は、濃淡が織りなす模様がとても鮮やかで、やや細身のフレアドレスはどこから見ても綺麗なラインになるような工夫がされていた。
「すごーい! これ、私たちが着ていいの?」
「どちらも素敵です……ありがとうございます!」
「喜んでもらえて嬉しいよ。人間どもに見せつけてやるといい……しかし、二人とも不慣れだろうからさっきのメイドに着付けをさせよう」
ルーシェがおもむろに手をあげると同時に私は声をかけた。
「あ! その前に……」
私はルーシェがライラを呼ぶ前に言わなきゃと思い、王様から言われたことを相談した。
ルーシェは少し考えこむように目を瞑る。
「そうか……なら、フェリを通して答えるから、その時になったら呼んでくれ。よし! じゃあ、ライラを呼ぼう」
パチン! とルーシェが指を鳴らせば、目の前にライラが現れる。
「え……」
ライラは片付けでもしていたのか、衣装を手に突然の転移に驚いていた。
「あ、ライラ。こらルーシェ! ライラも忙しいんだよ、いきなり転移させたから困ってるじゃない」
「ちゃんと考えて転移させたから大丈夫だ。ライラだったな、二人の着付けを頼む」
ライラはフィナンシェを千切っているルーシェに目をやると、いったい何事かといった具合で声が出なかった。
「聞こえなかったのか? ライラ、二人の着付けを頼む」
「え……あ、はい。あの……失礼ですが、あなたは……魔王様……ですか?」
「ああ」
夢中でフィナンシェ頬張るルーシェは素っ気ない態度でライラに答えた。
「そっ……そうですか。失礼いたしました。ええ、私もそろそろ着付けをとドレスを探していたところだったので……今すぐお持ちいたします」
「待て、ドレスならそこにある」
すぐにでも飛び出して行きそうなライラを呼び止め、ルーシェは持ってきたドレスを指差す。
ライラは指差す方に目をやると、二つのドレスに目を奪われたようだ。
「これは……すごい……」
「当たり前だ。文句を言われながらも無理やりドワーフたちに作らせた一品だ。そこいらのドレスと一緒にするなよ」
ライラはいつのまにかドレスの前まで移動しており、確かめるように生地を撫でていた。
「わかります……こんな素敵で斬新なドレスは初めて見ました。生地も……滑らかな肌触り……光沢もある……この国では作れないでしょう」
「ふふ……二人が見込んだだけあるな。どうだライラ、僕の妻になる気はないか?」
「「ルーシェ!」」
とっさにに出た声がリッカと被ってしまった。
「はは、冗談だ。じゃあよろしく頼む。僕がここに来たことは誰にも言わないように。まだ生きていたければね」
最後のフィナンシェを口に放り込んでルーシェは席を立った。
ライラはルーシェへと向き直ると深々とお辞儀をする。
「大丈夫です。決して言いません」
「そうか。じゃあね」
ルーシェは控えめに手を振ると誰もいなかったかのように消えてしまった。
——あーそうそう二人とも、明日なんだけど……
しかし、最後にルーシェはまた悪いことを思いついたようで、私たちに明日やってもらいたいことを一方的に伝えて話を切った。
何度か理由を問いかけたのだが、虚しい独り言のようになってしまった。
そして、私たちがドレスの着付けを終わらせたころ、部屋の扉を叩く音がした。
「宴会の準備が整いました」
私たちを迎えに来たのだろう。
ようやく待ちに待った宴会が始まる。
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