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北の大陸蹂躙
北の大陸 リッカ・フェリside ー 王の威厳
「おお……」
二人が会場へと入ると、ざわざわとした響めきが巻き起こる。
老若男女問わず、二人の立ち姿に皆が見とれていた。
「こちらの席でお願いいたします」
エスコートされた席は一段高い特等席。
二人以外は立ちながらの立食形式に対して、特別な待遇といったところだろうか。
壁際中央に舞台があり、そこでなんらかの催し物が開催されるのだろう。
そして、その周りを囲むようにして料理が配置されていた。
二人が席に腰を下ろすと、まもなく王様が舞台に上がった。
ざわざわとした喧騒はピタリと鳴り止み、王様へと注目が集まる。
「今宵は魔王様の歓迎会をする予定でしたが、魔王様は諸事情により御欠席となりました。しかし、魔王様は我々に奥方様をおもてなしさせていただく機会をお与えくださいました。貴賓席に御座しますリッカ様、フェリアーラ様には、今宵の席にてアリフォールが御提供できる全てをかけておもてなしをさせていただきます。その他御列席いただいている皆様におかれましては、後ほど重大な発表をいたしますので、お待ちいただきますよう、よろしくお願い申し上げます」
挨拶が終わり、拍手の中王様は舞台を降りた。
王様がこのような演説をする国を未だかつて見たことがなかった。
「ねえねえ、王様ってもっと偉そうな感じじゃないの?」
「そうですね。こんな腰の低い王様は初めて見ました」
その後は簡単に開会が宣言され、たくさんの料理が出され、大掛かりな催し物が披露された。
王様が言っていたとおり、アリフォールの全てをかけた豪勢な歓迎会だった。
「あ! すいません! このお肉もう一つ追加で!」
「リッカ……まだ食べるつもり?」
「え? だってめちゃくちゃ美味しいんだよコレ!」
「たしかに美味しかったですけど……」
「まあ、いいじゃない。エルフは太らないんだからさ!」
「はぁ……私はもうお腹いっぱいです。体調を崩さない程度にしなさいね」
「はぁーい!」
そう言いながらも、リッカはさらに二皿追加してようやく満足したようだ。
「皆様! ここで、冒頭にお伝えしていた重大発表をさせていただきます!」
会場に響き渡った王様の声につられて舞台に目をやれば、武装した兵士がぞろぞろと舞台裏から壇上に出てくるところだった。
冒頭にした挨拶の時の静寂とは別に、集まっていた者たちが一斉に跪いていた。
「なになに? どうしたのみんな?」
先程までの楽しい雰囲気とは大きく様変わりをしてしまった会場に、リッカは驚きを隠せずキョロキョロと周囲を見回している。
「場違いな感じはありますが……王からの勅命を賜るということなのでしょうね」
「あー、なるほど。ははー! ってやつだね」
「え? ええ……そうですね」
そんな話をしているうちに、兵士たちは会場を取り囲むように舞台から降りていく。
勅命の儀式というには物々しい。
参加者は誰もが教育の行き届いた兵士のようにピタリと動かなかった。
やがて、全ての兵が出切り、配置につくと、王様が手をあげて宣誓する。
「では……我が国の民のために!」
「「「我が国の民のために!」」」
王様の掛け声に合わせて全員が合言葉のように合唱する。
波長の合った大勢の声は、胸に響くほどの音圧を私たちに届けた。
「うわぁ!」
「……びっくりしました」
緊張していたせいもあってか、二人とも予想外の轟音に驚いた。
「これから、いくつか勅命を言い渡す」
今までの柔らかな口調はどこへ行ったのか、ゆっくりと単調に綴られた言葉は王としての威厳を感じさせる。
「一つ、階級制度を廃止する。我が国民は、等しく平等な立場となり、力を合わせて発展を目指すこと。
一つ、国、個人の財産を全て集め、国民へと平等に分配し直す。これで格差の広がった貧富の差を埋める。
一つ、金本位制を撤廃し、紙幣を発行して経済をたてなおす。これについては後ほど詳しく説明する。
一つ、アリフォール王の権限を、リッカ様、フェリアーラ様に移譲し、国名をリーフェ皇国とする。
一つ、国民には労働の義務を課す。国民全員がこの国の発展のために尽くすこと。
一つ、この勅命は明朝を持って期日とする。明朝までは私が指揮をとるが、それ以降はリッカ様、フェリアーラ様の御意志にて国民は動かなければならない……以上だ」
王の言葉が終わっても、会場の静寂は続いていた。
誰も立ち上がろうとしないままの時間はとても長く感じた。
しかし、その静寂も永遠には続かない。
会場にいた一際豪華な召物を纏った貴族が立ち上がった。
「アリフォール王様……今の勅命はどういうことなのか……私は初めて聞きました。なんの事前説明もないまま、このような勅命を出されても承服致しかねますぞ」
本来、王の勅命に異を唱えるなどあってはならないことだ。
しかし、それでも意見したということは、今回の勅命はあまりに度が過ぎていたということなのだろう。
「ハロルド公爵……魔王様がこの国に来たと話したと思ったのだが……伝え忘れたかな?」
「いえ、聞き及んでおります。しかし、それとこれとは話が別ではないのですか? この国の実権をあっさりと渡し、この国のために尽くしてきた我々の階級と財産を取り上げるなど……横暴が過ぎるというものです」
王は公爵を見下ろしながら溜息を吐く。
「魔王様については何度も話し合ったはずだ。それを今更反故にするとはどういうことなんだ?」
「いや、ですが……ここまですることは……」
「……魔王様と戦って勝てるとでも? 自惚れが過ぎるのではないか?」
公爵がチラリと私たちに目をやり王様へと向き直る。
……しかし、この些細な行為がこの公爵の行く末を決めたようだ。
私はその一部始終を目撃することとなった。
公爵が王の方へと向き直ったと同時に、近くにいた兵士がなんのためらいもなく公爵の背中に槍を突き刺したのだ。
「おごっ! なに……を……」
地に伏した公爵は床を真っ赤に汚しながら槍を突き立てた兵士を見上げる。
そして、まもなくその場へと倒れ込んで息を引き取った。
みんなその光景を見ているはずなのに、なんでもないことのように静寂を保ったまま跪いていた。
「……申し訳ありません。国の者がまたしても無礼を働いてしまいました」
王様は私たちに向かって深々と頭を下げた。
しかし、返事をすることはできなかった。
私も、リッカも、小さく首を横に振り、王様への返答とした。
二人が会場へと入ると、ざわざわとした響めきが巻き起こる。
老若男女問わず、二人の立ち姿に皆が見とれていた。
「こちらの席でお願いいたします」
エスコートされた席は一段高い特等席。
二人以外は立ちながらの立食形式に対して、特別な待遇といったところだろうか。
壁際中央に舞台があり、そこでなんらかの催し物が開催されるのだろう。
そして、その周りを囲むようにして料理が配置されていた。
二人が席に腰を下ろすと、まもなく王様が舞台に上がった。
ざわざわとした喧騒はピタリと鳴り止み、王様へと注目が集まる。
「今宵は魔王様の歓迎会をする予定でしたが、魔王様は諸事情により御欠席となりました。しかし、魔王様は我々に奥方様をおもてなしさせていただく機会をお与えくださいました。貴賓席に御座しますリッカ様、フェリアーラ様には、今宵の席にてアリフォールが御提供できる全てをかけておもてなしをさせていただきます。その他御列席いただいている皆様におかれましては、後ほど重大な発表をいたしますので、お待ちいただきますよう、よろしくお願い申し上げます」
挨拶が終わり、拍手の中王様は舞台を降りた。
王様がこのような演説をする国を未だかつて見たことがなかった。
「ねえねえ、王様ってもっと偉そうな感じじゃないの?」
「そうですね。こんな腰の低い王様は初めて見ました」
その後は簡単に開会が宣言され、たくさんの料理が出され、大掛かりな催し物が披露された。
王様が言っていたとおり、アリフォールの全てをかけた豪勢な歓迎会だった。
「あ! すいません! このお肉もう一つ追加で!」
「リッカ……まだ食べるつもり?」
「え? だってめちゃくちゃ美味しいんだよコレ!」
「たしかに美味しかったですけど……」
「まあ、いいじゃない。エルフは太らないんだからさ!」
「はぁ……私はもうお腹いっぱいです。体調を崩さない程度にしなさいね」
「はぁーい!」
そう言いながらも、リッカはさらに二皿追加してようやく満足したようだ。
「皆様! ここで、冒頭にお伝えしていた重大発表をさせていただきます!」
会場に響き渡った王様の声につられて舞台に目をやれば、武装した兵士がぞろぞろと舞台裏から壇上に出てくるところだった。
冒頭にした挨拶の時の静寂とは別に、集まっていた者たちが一斉に跪いていた。
「なになに? どうしたのみんな?」
先程までの楽しい雰囲気とは大きく様変わりをしてしまった会場に、リッカは驚きを隠せずキョロキョロと周囲を見回している。
「場違いな感じはありますが……王からの勅命を賜るということなのでしょうね」
「あー、なるほど。ははー! ってやつだね」
「え? ええ……そうですね」
そんな話をしているうちに、兵士たちは会場を取り囲むように舞台から降りていく。
勅命の儀式というには物々しい。
参加者は誰もが教育の行き届いた兵士のようにピタリと動かなかった。
やがて、全ての兵が出切り、配置につくと、王様が手をあげて宣誓する。
「では……我が国の民のために!」
「「「我が国の民のために!」」」
王様の掛け声に合わせて全員が合言葉のように合唱する。
波長の合った大勢の声は、胸に響くほどの音圧を私たちに届けた。
「うわぁ!」
「……びっくりしました」
緊張していたせいもあってか、二人とも予想外の轟音に驚いた。
「これから、いくつか勅命を言い渡す」
今までの柔らかな口調はどこへ行ったのか、ゆっくりと単調に綴られた言葉は王としての威厳を感じさせる。
「一つ、階級制度を廃止する。我が国民は、等しく平等な立場となり、力を合わせて発展を目指すこと。
一つ、国、個人の財産を全て集め、国民へと平等に分配し直す。これで格差の広がった貧富の差を埋める。
一つ、金本位制を撤廃し、紙幣を発行して経済をたてなおす。これについては後ほど詳しく説明する。
一つ、アリフォール王の権限を、リッカ様、フェリアーラ様に移譲し、国名をリーフェ皇国とする。
一つ、国民には労働の義務を課す。国民全員がこの国の発展のために尽くすこと。
一つ、この勅命は明朝を持って期日とする。明朝までは私が指揮をとるが、それ以降はリッカ様、フェリアーラ様の御意志にて国民は動かなければならない……以上だ」
王の言葉が終わっても、会場の静寂は続いていた。
誰も立ち上がろうとしないままの時間はとても長く感じた。
しかし、その静寂も永遠には続かない。
会場にいた一際豪華な召物を纏った貴族が立ち上がった。
「アリフォール王様……今の勅命はどういうことなのか……私は初めて聞きました。なんの事前説明もないまま、このような勅命を出されても承服致しかねますぞ」
本来、王の勅命に異を唱えるなどあってはならないことだ。
しかし、それでも意見したということは、今回の勅命はあまりに度が過ぎていたということなのだろう。
「ハロルド公爵……魔王様がこの国に来たと話したと思ったのだが……伝え忘れたかな?」
「いえ、聞き及んでおります。しかし、それとこれとは話が別ではないのですか? この国の実権をあっさりと渡し、この国のために尽くしてきた我々の階級と財産を取り上げるなど……横暴が過ぎるというものです」
王は公爵を見下ろしながら溜息を吐く。
「魔王様については何度も話し合ったはずだ。それを今更反故にするとはどういうことなんだ?」
「いや、ですが……ここまですることは……」
「……魔王様と戦って勝てるとでも? 自惚れが過ぎるのではないか?」
公爵がチラリと私たちに目をやり王様へと向き直る。
……しかし、この些細な行為がこの公爵の行く末を決めたようだ。
私はその一部始終を目撃することとなった。
公爵が王の方へと向き直ったと同時に、近くにいた兵士がなんのためらいもなく公爵の背中に槍を突き刺したのだ。
「おごっ! なに……を……」
地に伏した公爵は床を真っ赤に汚しながら槍を突き立てた兵士を見上げる。
そして、まもなくその場へと倒れ込んで息を引き取った。
みんなその光景を見ているはずなのに、なんでもないことのように静寂を保ったまま跪いていた。
「……申し訳ありません。国の者がまたしても無礼を働いてしまいました」
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