みんなシネばいい 〜転生したら魔王でした〜

大きな鯨

文字の大きさ
124 / 157
北の大陸蹂躙

北の大陸 リッカ・フェリside ー 王の威厳

「おお……」

 二人が会場へと入ると、ざわざわとした響めきが巻き起こる。
 老若男女問わず、二人の立ち姿に皆が見とれていた。

「こちらの席でお願いいたします」

 エスコートされた席は一段高い特等席。
 二人以外は立ちながらの立食形式に対して、特別な待遇といったところだろうか。

 壁際中央に舞台があり、そこでなんらかの催し物が開催されるのだろう。
 そして、その周りを囲むようにして料理が配置されていた。

 二人が席に腰を下ろすと、まもなく王様が舞台に上がった。
 ざわざわとした喧騒はピタリと鳴り止み、王様へと注目が集まる。

「今宵は魔王様の歓迎会をする予定でしたが、魔王様は諸事情により御欠席となりました。しかし、魔王様は我々に奥方様をおもてなしさせていただく機会をお与えくださいました。貴賓席に御座しますリッカ様、フェリアーラ様には、今宵の席にてアリフォールが御提供できる全てをかけておもてなしをさせていただきます。その他御列席いただいている皆様におかれましては、後ほど重大な発表をいたしますので、お待ちいただきますよう、よろしくお願い申し上げます」

 挨拶が終わり、拍手の中王様は舞台を降りた。
 王様がこのような演説をする国を未だかつて見たことがなかった。

「ねえねえ、王様ってもっと偉そうな感じじゃないの?」

「そうですね。こんな腰の低い王様は初めて見ました」

 その後は簡単に開会が宣言され、たくさんの料理が出され、大掛かりな催し物が披露された。
 王様が言っていたとおり、アリフォールの全てをかけた豪勢な歓迎会だった。

「あ! すいません! このお肉もう一つ追加で!」

「リッカ……まだ食べるつもり?」

「え? だってめちゃくちゃ美味しいんだよコレ!」

「たしかに美味しかったですけど……」

「まあ、いいじゃない。エルフは太らないんだからさ!」

「はぁ……私はもうお腹いっぱいです。体調を崩さない程度にしなさいね」

「はぁーい!」

 そう言いながらも、リッカはさらに二皿追加してようやく満足したようだ。

「皆様! ここで、冒頭にお伝えしていた重大発表をさせていただきます!」

 会場に響き渡った王様の声につられて舞台に目をやれば、武装した兵士がぞろぞろと舞台裏から壇上に出てくるところだった。
 冒頭にした挨拶の時の静寂とは別に、集まっていた者たちが一斉に跪いていた。

「なになに? どうしたのみんな?」

 先程までの楽しい雰囲気とは大きく様変わりをしてしまった会場に、リッカは驚きを隠せずキョロキョロと周囲を見回している。

「場違いな感じはありますが……王からの勅命を賜るということなのでしょうね」

「あー、なるほど。ははー! ってやつだね」

「え? ええ……そうですね」

 そんな話をしているうちに、兵士たちは会場を取り囲むように舞台から降りていく。
 勅命の儀式というには物々しい。
 参加者は誰もが教育の行き届いた兵士のようにピタリと動かなかった。
 やがて、全ての兵が出切り、配置につくと、王様が手をあげて宣誓する。

「では……我が国の民のために!」

「「「我が国の民のために!」」」

 王様の掛け声に合わせて全員が合言葉のように合唱する。
 波長の合った大勢の声は、胸に響くほどの音圧を私たちに届けた。

「うわぁ!」

「……びっくりしました」

 緊張していたせいもあってか、二人とも予想外の轟音に驚いた。

「これから、いくつか勅命を言い渡す」

 今までの柔らかな口調はどこへ行ったのか、ゆっくりと単調に綴られた言葉は王としての威厳を感じさせる。

「一つ、階級制度を廃止する。我が国民は、等しく平等な立場となり、力を合わせて発展を目指すこと。
 一つ、国、個人の財産を全て集め、国民へと平等に分配し直す。これで格差の広がった貧富の差を埋める。
 一つ、金本位制を撤廃し、紙幣を発行して経済をたてなおす。これについては後ほど詳しく説明する。
 一つ、アリフォール王の権限を、リッカ様、フェリアーラ様に移譲し、国名をリーフェ皇国とする。
 一つ、国民には労働の義務を課す。国民全員がこの国の発展のために尽くすこと。
 一つ、この勅命は明朝を持って期日とする。明朝までは私が指揮をとるが、それ以降はリッカ様、フェリアーラ様の御意志にて国民は動かなければならない……以上だ」

 王の言葉が終わっても、会場の静寂は続いていた。
 誰も立ち上がろうとしないままの時間はとても長く感じた。
 しかし、その静寂も永遠には続かない。
 会場にいた一際豪華な召物を纏った貴族が立ち上がった。

「アリフォール王様……今の勅命はどういうことなのか……私は初めて聞きました。なんの事前説明もないまま、このような勅命を出されても承服致しかねますぞ」

 本来、王の勅命に異を唱えるなどあってはならないことだ。
 しかし、それでも意見したということは、今回の勅命はあまりに度が過ぎていたということなのだろう。

「ハロルド公爵……魔王様がこの国に来たと話したと思ったのだが……伝え忘れたかな?」

「いえ、聞き及んでおります。しかし、それとこれとは話が別ではないのですか? この国の実権をあっさりと渡し、この国のために尽くしてきた我々の階級と財産を取り上げるなど……横暴が過ぎるというものです」

 王は公爵を見下ろしながら溜息を吐く。

「魔王様については何度も話し合ったはずだ。それを今更反故にするとはどういうことなんだ?」

「いや、ですが……ここまですることは……」

「……魔王様と戦って勝てるとでも? 自惚れが過ぎるのではないか?」

 公爵がチラリと私たちに目をやり王様へと向き直る。

 ……しかし、この些細な行為がこの公爵の行く末を決めたようだ。

 私はその一部始終を目撃することとなった。

 公爵が王の方へと向き直ったと同時に、近くにいた兵士がなんのためらいもなく公爵の背中に槍を突き刺したのだ。

「おごっ! なに……を……」

 地に伏した公爵は床を真っ赤に汚しながら槍を突き立てた兵士を見上げる。
 そして、まもなくその場へと倒れ込んで息を引き取った。

 みんなその光景を見ているはずなのに、なんでもないことのように静寂を保ったまま跪いていた。

「……申し訳ありません。国の者がまたしても無礼を働いてしまいました」

 王様は私たちに向かって深々と頭を下げた。
 しかし、返事をすることはできなかった。
 私も、リッカも、小さく首を横に振り、王様への返答とした。
感想 168

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。