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北の大陸蹂躙
英雄譚を綴り続ける若き王
人間なんていらない。
人間なんてクズは死ねばいい。
今でもその思いは変わらない。
しかし、この国の連中はどうだ?
クズなのだろうか?
わからない……だから、それを証明する必要がある。
……なぜ?
なぜそんな証明が必要なんだ?
グチグチ考えずに殺してしまえばいいじゃないか。
どうせ人間と魔物は神によって定められた敵同士なのだから。
決して相容れることはない。
血に刻まれているんだ。
だから人間を殺す?
……なんだよそれ……ふざけるな。
僕が人間を殺す理由。
それは、ただの憂さ晴らしだろ?
この世界は前世で受けた恨みを晴らすボーナスゲーム。
そして、僕が今していることは、ゲームを楽しむための味付けに過ぎない。
そうさ、念じれば一瞬にしてひねり潰せる存在じゃないか。
なにを悩む必要がある。
僕は魔王だ。
人間を殺すためにここにいる。
殺せ……殺せばいいんだ……そして……
僕は上空から歓喜に沸く人間を見下ろしていた。
身分制度はなくなり、富は分け与えられ、国のために働く喜びに目覚め、そして、新たな国の第一歩を歓迎していた。
そんな熱狂の中、僕はゆっくりと王様が演説するバルコニーへと降り立った。
王様は僕に気づき、演説を中断して跪く。
それを見た兵士は慌てて民衆に平伏を命じた。
バルコニーから見渡す景色は壮観だった。
何十万という人間が僕に平伏している。
あんなに賑やかだった国民の熱が、静かに僕へと向けられているのだ。
「お待ちしておりました」
王様が……いや、今はもう平民クロイツが僕に歓迎の言葉を述べる。
「ここまでこなすとは思っていなかったぞ。よくやった」
「ありがとうございます」
端的な労いだったが、クロイツが成し遂げた功績は計り知れない。
この国以外ではまず不可能と言っても過言ではないだろう。
だからこそ、ここまで僕が悩む結果となったのだが、それならそれで、また新たな策を講じる楽しみができたということだ。
「クク、そこで提案なのだが、僕は君の功績を讃え、今、この場を借りてこの国の国民を魔族としようと思う。どうだろうか?」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だ。だから、今ここで国民に伝えるんだ。魔族となりたいかとな」
「かしこまりました」
まるで悲願を達成したかのように喜ぶクロイツ。
まさか処刑を免除されたとでも思っているのだろうか?
「それと、忘れてはいないだろうが、これは君の死と引き換えに成されることを忘れるなよ」
「……はい」
改めて処刑を告げたにも関わらず、やはり、彼の顔に悲壮感はなかった。
それどころか、どこか満足そうな雰囲気にも見えた。
クロイツは深々と頭を下げると、立ち上がって民衆の前に立った。
「顔を上げて欲しい」
今までの演説とは違い、それは、柔らかな口調で始まった。
民衆は顔を上げ、一斉に立ち上がった。
「私はもうみんなの王様じゃない。だけど、最後に伝えなきゃいけないことがある。もう、みんなわかっていると思うけど、この方が魔王様だ。
私の一存でこの国の主権を譲渡し、みんなの人生を賭けさせてもらった。
残念なことに、魔王様は人間が嫌いなんだ。
人類を滅ぼすために活動している。
だけど、魔王様は私たちに慈悲をくださった。
魔王様の要求を全て達成できれば、魔族にしてくれると約束してくださったんだ」
静かだった民衆がざわざわと動揺し始めていた。
「だけど、安心して欲しい。なにも変わることはない。肉体も精神も侵されることはない。魔王様の庇護下に入り、同時に監視下に入るだけ。主権を渡したのと同じこと。ただ、もうこの国から逃れることはできない。魔王様に絶対の忠誠を誓うんだからね」
そこまで言うと、クロイツは口角を上げて満面の笑みを見せた。
「でも、そんなことどうでもいいじゃない。だって、もう魔王様に殺されることはないんだから。
もう人類の滅亡を怯えて暮らすことはなくなるんだからさ!」
クロイツは威圧的な態度を微塵も見せず、優しく諭すように民衆をなだめていく。
横暴にも聞こえるのだが、だんだんと民衆は落ち着き始めていた。
この状況が理不尽だと感じていない……なんてことはないだろう。
「もう、この国の国民なら理解できるはずさ! 強い者が統治し続けたこの国の国民なら、私の判断を受け止められるはずだろ?」
強者が治め続けた国の国民には刻まれているということなのだろう。
理不尽だろうが、それが弱者の定めであるということが。
逆らえば負ける。
なぜなら、治めている者が本物の強者なのだから。
「さあ、一緒に誓おうじゃないか! 我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」
バルコニーに佇む兵士や貴族たちがクロイツの後に合唱した。
腹の底から出したであろうその声は、魔導具によって拡声され、その音圧を民衆の隅々まで届けた。
民衆はその声に圧倒されていたいたが、やがて、ポツポツと小さな声が響き始める。
「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
民衆の中にいた誰かが声を上げた。
「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
それと同調するかのように、バラバラと声が上がり始める。
「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」
やがてそれはリズムを取り始め、合唱へと変わっていった。
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
何十万もの民衆が張り上げる合唱は、大波のごとく押し寄せる。
軽く見渡してみても、声を出していない者を見つけるのが困難なくらいだった。
その合唱が響く中、クロイツは民衆へと手を上げ、僕へと向きなおって跪く。
クロイツの姿をみて見て、合唱はだんだんと鳴り止んでいった。
「これで、民意をお伝えできたかと存じます。どうか、私の処刑をもってこの国の国民をお救いください」
気づけば周りの貴族や兵士たちもたち跪いていた。
クソどもの忠誠なんて、信じるだけ無駄な行為だと思う。
ただ、その意気込みだけは汲んでやろうか。
「ああ……わかった」
「ありがとうございます!」
クロイツは僕の言葉を聞いて、更に深々と頭を下げた。
「それでは始めよう! 王の処刑を!」
僕はクロイツ、リッカ、フェリを引き上げ、民衆の上へと飛び立つ。
民衆が集まる広場の中央に降り立つため、人の群れを操作して円を描くように退かせた。
そこへ、いくつもの目玉が蠢く真っ赤な禍々しい断頭台を添えれば、民衆も何をするのか理解できるだろう。
前王は処刑され、魔王の統治が始まるのだと。
人間なんてクズは死ねばいい。
今でもその思いは変わらない。
しかし、この国の連中はどうだ?
クズなのだろうか?
わからない……だから、それを証明する必要がある。
……なぜ?
なぜそんな証明が必要なんだ?
グチグチ考えずに殺してしまえばいいじゃないか。
どうせ人間と魔物は神によって定められた敵同士なのだから。
決して相容れることはない。
血に刻まれているんだ。
だから人間を殺す?
……なんだよそれ……ふざけるな。
僕が人間を殺す理由。
それは、ただの憂さ晴らしだろ?
この世界は前世で受けた恨みを晴らすボーナスゲーム。
そして、僕が今していることは、ゲームを楽しむための味付けに過ぎない。
そうさ、念じれば一瞬にしてひねり潰せる存在じゃないか。
なにを悩む必要がある。
僕は魔王だ。
人間を殺すためにここにいる。
殺せ……殺せばいいんだ……そして……
僕は上空から歓喜に沸く人間を見下ろしていた。
身分制度はなくなり、富は分け与えられ、国のために働く喜びに目覚め、そして、新たな国の第一歩を歓迎していた。
そんな熱狂の中、僕はゆっくりと王様が演説するバルコニーへと降り立った。
王様は僕に気づき、演説を中断して跪く。
それを見た兵士は慌てて民衆に平伏を命じた。
バルコニーから見渡す景色は壮観だった。
何十万という人間が僕に平伏している。
あんなに賑やかだった国民の熱が、静かに僕へと向けられているのだ。
「お待ちしておりました」
王様が……いや、今はもう平民クロイツが僕に歓迎の言葉を述べる。
「ここまでこなすとは思っていなかったぞ。よくやった」
「ありがとうございます」
端的な労いだったが、クロイツが成し遂げた功績は計り知れない。
この国以外ではまず不可能と言っても過言ではないだろう。
だからこそ、ここまで僕が悩む結果となったのだが、それならそれで、また新たな策を講じる楽しみができたということだ。
「クク、そこで提案なのだが、僕は君の功績を讃え、今、この場を借りてこの国の国民を魔族としようと思う。どうだろうか?」
「本当ですか!?」
「ああ、本当だ。だから、今ここで国民に伝えるんだ。魔族となりたいかとな」
「かしこまりました」
まるで悲願を達成したかのように喜ぶクロイツ。
まさか処刑を免除されたとでも思っているのだろうか?
「それと、忘れてはいないだろうが、これは君の死と引き換えに成されることを忘れるなよ」
「……はい」
改めて処刑を告げたにも関わらず、やはり、彼の顔に悲壮感はなかった。
それどころか、どこか満足そうな雰囲気にも見えた。
クロイツは深々と頭を下げると、立ち上がって民衆の前に立った。
「顔を上げて欲しい」
今までの演説とは違い、それは、柔らかな口調で始まった。
民衆は顔を上げ、一斉に立ち上がった。
「私はもうみんなの王様じゃない。だけど、最後に伝えなきゃいけないことがある。もう、みんなわかっていると思うけど、この方が魔王様だ。
私の一存でこの国の主権を譲渡し、みんなの人生を賭けさせてもらった。
残念なことに、魔王様は人間が嫌いなんだ。
人類を滅ぼすために活動している。
だけど、魔王様は私たちに慈悲をくださった。
魔王様の要求を全て達成できれば、魔族にしてくれると約束してくださったんだ」
静かだった民衆がざわざわと動揺し始めていた。
「だけど、安心して欲しい。なにも変わることはない。肉体も精神も侵されることはない。魔王様の庇護下に入り、同時に監視下に入るだけ。主権を渡したのと同じこと。ただ、もうこの国から逃れることはできない。魔王様に絶対の忠誠を誓うんだからね」
そこまで言うと、クロイツは口角を上げて満面の笑みを見せた。
「でも、そんなことどうでもいいじゃない。だって、もう魔王様に殺されることはないんだから。
もう人類の滅亡を怯えて暮らすことはなくなるんだからさ!」
クロイツは威圧的な態度を微塵も見せず、優しく諭すように民衆をなだめていく。
横暴にも聞こえるのだが、だんだんと民衆は落ち着き始めていた。
この状況が理不尽だと感じていない……なんてことはないだろう。
「もう、この国の国民なら理解できるはずさ! 強い者が統治し続けたこの国の国民なら、私の判断を受け止められるはずだろ?」
強者が治め続けた国の国民には刻まれているということなのだろう。
理不尽だろうが、それが弱者の定めであるということが。
逆らえば負ける。
なぜなら、治めている者が本物の強者なのだから。
「さあ、一緒に誓おうじゃないか! 我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」
バルコニーに佇む兵士や貴族たちがクロイツの後に合唱した。
腹の底から出したであろうその声は、魔導具によって拡声され、その音圧を民衆の隅々まで届けた。
民衆はその声に圧倒されていたいたが、やがて、ポツポツと小さな声が響き始める。
「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
民衆の中にいた誰かが声を上げた。
「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」
それと同調するかのように、バラバラと声が上がり始める。
「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」
やがてそれはリズムを取り始め、合唱へと変わっていった。
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
「「「我が国の民のために! 魔王様に忠誠を!」」」
何十万もの民衆が張り上げる合唱は、大波のごとく押し寄せる。
軽く見渡してみても、声を出していない者を見つけるのが困難なくらいだった。
その合唱が響く中、クロイツは民衆へと手を上げ、僕へと向きなおって跪く。
クロイツの姿をみて見て、合唱はだんだんと鳴り止んでいった。
「これで、民意をお伝えできたかと存じます。どうか、私の処刑をもってこの国の国民をお救いください」
気づけば周りの貴族や兵士たちもたち跪いていた。
クソどもの忠誠なんて、信じるだけ無駄な行為だと思う。
ただ、その意気込みだけは汲んでやろうか。
「ああ……わかった」
「ありがとうございます!」
クロイツは僕の言葉を聞いて、更に深々と頭を下げた。
「それでは始めよう! 王の処刑を!」
僕はクロイツ、リッカ、フェリを引き上げ、民衆の上へと飛び立つ。
民衆が集まる広場の中央に降り立つため、人の群れを操作して円を描くように退かせた。
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