拾われた僕の末路

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1、新しい世界で拾われる

死後の世界

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2024年ーーー某高層階ビル 屋上

「この1歩を踏み出すだけで、もう何も考えなくてよくなるんだ」

僕は、もし死後の世界があるなら穏やかな天国がいい……。そんなことを思いながら、思い切って空中に1歩踏み出した。


ーーハッ!と、目を開けると、白い天井が目に入った。
あんな高層階から落ちたのに、自分は死に損なったんだろうか。

澱んだ気持ちになりながら、顔を少し動かして周りを見る。


広い部屋に、手入れされた木製の調度品が並び、シャンデリアがぶら下がる。壁にはロウソクがかけられている。

ーーガチャ 
「あぁ、起きたのか」
ドアが開き、長身で黒髪の男が部屋に入ってくる。

「あの…ここは…… 」
恐る恐る、目の前の男に尋ねる。

「お前、自殺したんだろ。お前が住む時から何十年も先の世界だよ。人口が少なくなって困ったから、自殺志願者を過去の世界からもらってくることにしたんだ。プログラムで機械的に転移させてる。死ねてなくて残念だったな。」
炭酸飲めるか?と、冷えたペットボトルを寄越しながら男が淡々と話す。

「え?あ……?」
よく分からないまま、ペットボトルに口をつける。

「転移してきた人間の首には、黒い線のようなシルシがつく。これは、転移先の世界で契約する相手をみつけると、消える仕組みだ。シルシが残ってる人間は、奴隷にされたり実験に使われたりするから、前の世界より辛いかもな。」
手鏡を渡され、自分の首に黒い線があることが見て取れた。

よく分からないけど、言葉は通じてるし、飲み物も普通に美味しい。

嫌な響きがあるのは、奴隷とか、契約相手とか、そんなワード。


「あの、ここは日本じゃないんですか?奴隷制度なんて、日本には……」
顔をひきつらせながら、できるだけ穏やかに尋ねる。

「世界で核戦争が起きて、少子高齢化も酷くなった。これは、想像はできるだろ?そこで、世界規模で使える転移プログラムを開発した。世界中の死にたがりが転移してきてる。基本的には、育った国に転移するようになってる。ただ、やっぱり管理は必要だからな。そこで、身元を引き受ける人間を探すか、奴隷になるかの2択になるってわけ。……どっちがいい?選んでいいぞ。俺に引き取られるか、奴隷になるか」


いきなり選べるわけが無い。
そもそも、死にたくて1度死んだのに……そんな、自分の生に対して、主体的に選べるわけが無い。ましてや、相手もよく分からないのに。

「まあ、いきなり選べないよな。動けるようになったら、少し出かけよう。」
僕が黙っていると、目の前の男はタバコに火をつけながらそう言った。
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