2 / 11
1、新しい世界で拾われる
死後の世界
しおりを挟む
2024年ーーー某高層階ビル 屋上
「この1歩を踏み出すだけで、もう何も考えなくてよくなるんだ」
僕は、もし死後の世界があるなら穏やかな天国がいい……。そんなことを思いながら、思い切って空中に1歩踏み出した。
ーーハッ!と、目を開けると、白い天井が目に入った。
あんな高層階から落ちたのに、自分は死に損なったんだろうか。
澱んだ気持ちになりながら、顔を少し動かして周りを見る。
広い部屋に、手入れされた木製の調度品が並び、シャンデリアがぶら下がる。壁にはロウソクがかけられている。
ーーガチャ
「あぁ、起きたのか」
ドアが開き、長身で黒髪の男が部屋に入ってくる。
「あの…ここは…… 」
恐る恐る、目の前の男に尋ねる。
「お前、自殺したんだろ。お前が住む時から何十年も先の世界だよ。人口が少なくなって困ったから、自殺志願者を過去の世界からもらってくることにしたんだ。プログラムで機械的に転移させてる。死ねてなくて残念だったな。」
炭酸飲めるか?と、冷えたペットボトルを寄越しながら男が淡々と話す。
「え?あ……?」
よく分からないまま、ペットボトルに口をつける。
「転移してきた人間の首には、黒い線のようなシルシがつく。これは、転移先の世界で契約する相手をみつけると、消える仕組みだ。シルシが残ってる人間は、奴隷にされたり実験に使われたりするから、前の世界より辛いかもな。」
手鏡を渡され、自分の首に黒い線があることが見て取れた。
よく分からないけど、言葉は通じてるし、飲み物も普通に美味しい。
嫌な響きがあるのは、奴隷とか、契約相手とか、そんなワード。
「あの、ここは日本じゃないんですか?奴隷制度なんて、日本には……」
顔をひきつらせながら、できるだけ穏やかに尋ねる。
「世界で核戦争が起きて、少子高齢化も酷くなった。これは、想像はできるだろ?そこで、世界規模で使える転移プログラムを開発した。世界中の死にたがりが転移してきてる。基本的には、育った国に転移するようになってる。ただ、やっぱり管理は必要だからな。そこで、身元を引き受ける人間を探すか、奴隷になるかの2択になるってわけ。……どっちがいい?選んでいいぞ。俺に引き取られるか、奴隷になるか」
いきなり選べるわけが無い。
そもそも、死にたくて1度死んだのに……そんな、自分の生に対して、主体的に選べるわけが無い。ましてや、相手もよく分からないのに。
「まあ、いきなり選べないよな。動けるようになったら、少し出かけよう。」
僕が黙っていると、目の前の男はタバコに火をつけながらそう言った。
「この1歩を踏み出すだけで、もう何も考えなくてよくなるんだ」
僕は、もし死後の世界があるなら穏やかな天国がいい……。そんなことを思いながら、思い切って空中に1歩踏み出した。
ーーハッ!と、目を開けると、白い天井が目に入った。
あんな高層階から落ちたのに、自分は死に損なったんだろうか。
澱んだ気持ちになりながら、顔を少し動かして周りを見る。
広い部屋に、手入れされた木製の調度品が並び、シャンデリアがぶら下がる。壁にはロウソクがかけられている。
ーーガチャ
「あぁ、起きたのか」
ドアが開き、長身で黒髪の男が部屋に入ってくる。
「あの…ここは…… 」
恐る恐る、目の前の男に尋ねる。
「お前、自殺したんだろ。お前が住む時から何十年も先の世界だよ。人口が少なくなって困ったから、自殺志願者を過去の世界からもらってくることにしたんだ。プログラムで機械的に転移させてる。死ねてなくて残念だったな。」
炭酸飲めるか?と、冷えたペットボトルを寄越しながら男が淡々と話す。
「え?あ……?」
よく分からないまま、ペットボトルに口をつける。
「転移してきた人間の首には、黒い線のようなシルシがつく。これは、転移先の世界で契約する相手をみつけると、消える仕組みだ。シルシが残ってる人間は、奴隷にされたり実験に使われたりするから、前の世界より辛いかもな。」
手鏡を渡され、自分の首に黒い線があることが見て取れた。
よく分からないけど、言葉は通じてるし、飲み物も普通に美味しい。
嫌な響きがあるのは、奴隷とか、契約相手とか、そんなワード。
「あの、ここは日本じゃないんですか?奴隷制度なんて、日本には……」
顔をひきつらせながら、できるだけ穏やかに尋ねる。
「世界で核戦争が起きて、少子高齢化も酷くなった。これは、想像はできるだろ?そこで、世界規模で使える転移プログラムを開発した。世界中の死にたがりが転移してきてる。基本的には、育った国に転移するようになってる。ただ、やっぱり管理は必要だからな。そこで、身元を引き受ける人間を探すか、奴隷になるかの2択になるってわけ。……どっちがいい?選んでいいぞ。俺に引き取られるか、奴隷になるか」
いきなり選べるわけが無い。
そもそも、死にたくて1度死んだのに……そんな、自分の生に対して、主体的に選べるわけが無い。ましてや、相手もよく分からないのに。
「まあ、いきなり選べないよな。動けるようになったら、少し出かけよう。」
僕が黙っていると、目の前の男はタバコに火をつけながらそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる