刑事たちの余談

江木 三十四

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37.犯人に告ぐ・続々報(犯人の独白)

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ホント、悪気はなかったんです。いつの頃からか、わしは無銭飲食の常習犯になっていたんです。

はじめは、お腹が空いたので、食堂に入ってカツ丼を食べたんです。
それで、お金を払わないで店から出ようとしたら、店のおやじが警察を呼んだんです。
サーベルをガチャガチャ鳴らしながら邏卒がやってきました。
でも、その時は怒られるだけですんだんです。

次の日、同じ店に行って食事をして『お金がない』と言ったら、今度は監獄に入れられました。

出所後、やっぱりその店に行って食事をしたけれど、今度はちゃんとお金を払ったんです。
おやじからは『ありがとう』って言われました。

嬉しくなったわしは、3日後また同じ店でカツ丼を食べたけど、お金を払わなかったんですね。
そしたら、警察につかまってまた臭い飯を食わされました。

しばらく、監獄暮らしをしてからシャバに出て、同じその店にカツ丼を食いに行ったら、怪訝な顔をされたがお金を見せたら食べることができました。

でも、その後またお金を払わないで食べたら、巡査に捕まって刑務所に入りました。

お金を払えば何事もなかったし、払わないと逮捕されるという日々が繰り返されたんです。

刑事さん、欠伸してるけど、まだ聞きますか?

そんなことをしているうちにわしは前科63犯になっていたんです。
因みにすべて無銭飲食で、同じ店かって?そうです。おやじさんが良い人だったんですね。

でも、ある日わしの無銭飲食は突然終わったんです。
なぜなら、店のおやじさんが急に亡くなって閉店したんです。老衰だったそうです。

それから?いろいろな店で無銭飲食や食い逃げをして前科が増えていったんです。
最後は、どこの店もわしを入れてくれなくなりました。
それで、無銭飲食もできなくなったというわけです。

あっ、刑事さん、ちゃんと聞いてます?今寝てたでしょう。

それで、にっちもさっちもいかなくなったわしは銀行に行ったんです。

あとは、刑事さんの推測通り。
あっ、そうかこれは事実ですものね。
その時、わしは127歳で前科も127犯になっていたんです。
偶然て面白いですね。
でも、一番初めの店だけわしにやさしかったな。

みさとさん「変なの。この人のひとり言なの?自叙伝なの?」
福田君「毎回、逮捕されたびにこの長い供述をしていたらしいよ」


おしまい


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