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五話 悠久の大地《ピクニック》
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――
「アウトドア用品は随分揃っているんだな。マグナの私物か?」
ルーティアは辺りを見回しながらレジャーシートに腰を下ろす。
大きな、8人は余裕で座れそうなストライプ柄のビニールレジャーシート。
その横に、サンシェードテントという入り口の閉まらない、日よけ用のテントをマグナが開いている。
折り畳み式のテーブルが二台。片方には既にリーシャとマグナが持ち寄ったであろう飲み物がクーラーボックスと一緒に置かれていた。
「あ、はいっ。ボク、トレーニングも兼ねて登山やハイキングに行くのが趣味で……。あはは、そんなコトより剣の稽古しろって言われそうですけど……」
「いや、訓練を兼ねた良い趣味だと思うぞ。おかげであんな大剣を振り回せるのだからな」
「あははは……精進してます」
マグナは照れ笑いをしながら、薄い緑色のテントを開ききった。
「リッちゃん、お疲れ様。今日はお招きいただいてありがとねー」
マリルは大きなトートバッグに入れたラップに包まれたサンドイッチをテーブルの上に置いていき、リーシャに話し掛ける。
「わたしが開いたワケじゃないから、誘ってないわよ。ま、沢山人数がいたほうが楽しいけどね」
「お、えらく今日は素直だね。ツンよりデレが勝ってきたかな?」
「うるさいわね。なんなのよそのツンなんとかって。……あ、美味しそうじゃないコレ」
リーシャは照れ隠しに水筒を飲むフリをして口元を隠しながら、マリルが出したサンドイッチの包みを手に取った。
「おっ。マリル様特製タマゴサンドを手に取るとは。お目が高いねー、リッちゃん。今日一番の自信作よ」
「……すっごい上手に出来てるじゃん、売りものみたい。なに、料理得意なの?マリル」
「ふっふっふ、コレだけは自信あるんだよねー。店でも開こうかなーって思ってるのよ」
「……魔法の訓練をしなさいよ、魔法の訓練を。アンタこの前も団長に説教喰らったって聞いたわよ」
「あーあー。キコエナイキコエナイ」
マリルはぎこちない笑顔のまま、自作のサンドイッチやおかずをどんどんテーブルの上に広げていった。
「と。コレで準備完了かな?えーと……マグナちゃんのコトはなんて呼ぼうかなぁ……。マッさん?マーちゃん?」
「ま、マグナでいいです……。……ありがとうございます、マリルさん、ルーティアさん。色々作ってきていただいて」
一先ずの準備を終えた四人はテーブルの周りに腰掛け、主催者の開始の合図を待つ。
「さ、それじゃあマグナ。挨拶でもしなさいよ」
リーシャがにっこりと微笑んで、マグナの膝を軽く叩いた。
「ええっ!ぼ、ボクがですか?」
「アンタがピクニックしようって言ったんじゃない。飲み物、注いであげるから挨拶の言葉しっかり考えて」
「うー……。えー……どうしよう……」
ニヤニヤとイジワルをするように笑うリーシャがマグナに紙コップをもたせ、その中にオレンジジュースを注いでいく。
そんな二人の様子を、ルーティアとマリルは微笑ましく見守りながらマグナの言葉を待った。
「えー……と。その……。こ、このたびはボクの……じゃなくて、わ、わたくしめの企画した地下水路探索お疲れ様会のご出席いただきまして感謝の極みでござい……」
「堅苦しくなんていいから。気楽に気楽に」
ガチガチに緊張する18歳を、14歳が肩を叩いてリラックスさせる。
少し深呼吸して、マグナは自分の言葉を紡ぐ。
「えと……。最初は、地下水路に一日居たからお日様の下でピクニックしたいなー……なんて軽い考えでつい皆さんを誘っちゃったんですけど。迷惑じゃないかなー、とかボクの主催なんかでいいのかなー、とか色々悩んで今日まできました」
三人は、素直な言葉を出すマグナの話を笑顔で、真剣に耳に入れる。
「ボク、外でご飯を食べるの、大好きなんです。青空の下で食べるご飯ってサイコーに美味しくて……自然の風や木の囁きを聞きながらのんびりと美味しいご飯を食べるのが、本当に好きで。
……いつも、一人でこの公園に来て食べていたんです。でもいつか、誰かと一緒に食べたいな、って思ってて。こんなに美味しいご飯を誰かと食べられたら、きっともっと最高の時間になるんじゃないかって。
……えと……だから……。本当に、ありがとうございます、みなさん!今日は、ボクなんかに付き合ってくれて……本当に……!」
少し涙ぐむマグナの手を、リーシャがぎゅっと握る。マグナは情けなく「ふえええ……」と泣き声を漏らし、リーシャの肩に寄り添った。
ルーティアは目を閉じて、マリルは楽しそうに、それぞれ微笑ましく笑顔で、パチパチと小さく拍手をした。
「ほら、もうちょっとだから。乾杯、しっかり言いなさい」
リーシャが頭をポンポンと叩いて、マグナに優しく言った。
「は、はい……それじゃあ、リーシャ様、ルーティアさん、マリルさん、お飲み物を……」
「うむ」
「オッケー」
「はいはい」
ルーティアとマリルとリーシャは、紙コップにそれぞれ好きな飲み物を注いで手に持つ。
赤い目のマグナは少し照れながら、三人に大きな声で言った。
「それじゃあ……か、かんぱ~~~いっ!!」
「「「 かんぱーい ! 」」」
四人の楽しそうな声が、木漏れ日の木々の上の青空へと吸い込まれていく。
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「アウトドア用品は随分揃っているんだな。マグナの私物か?」
ルーティアは辺りを見回しながらレジャーシートに腰を下ろす。
大きな、8人は余裕で座れそうなストライプ柄のビニールレジャーシート。
その横に、サンシェードテントという入り口の閉まらない、日よけ用のテントをマグナが開いている。
折り畳み式のテーブルが二台。片方には既にリーシャとマグナが持ち寄ったであろう飲み物がクーラーボックスと一緒に置かれていた。
「あ、はいっ。ボク、トレーニングも兼ねて登山やハイキングに行くのが趣味で……。あはは、そんなコトより剣の稽古しろって言われそうですけど……」
「いや、訓練を兼ねた良い趣味だと思うぞ。おかげであんな大剣を振り回せるのだからな」
「あははは……精進してます」
マグナは照れ笑いをしながら、薄い緑色のテントを開ききった。
「リッちゃん、お疲れ様。今日はお招きいただいてありがとねー」
マリルは大きなトートバッグに入れたラップに包まれたサンドイッチをテーブルの上に置いていき、リーシャに話し掛ける。
「わたしが開いたワケじゃないから、誘ってないわよ。ま、沢山人数がいたほうが楽しいけどね」
「お、えらく今日は素直だね。ツンよりデレが勝ってきたかな?」
「うるさいわね。なんなのよそのツンなんとかって。……あ、美味しそうじゃないコレ」
リーシャは照れ隠しに水筒を飲むフリをして口元を隠しながら、マリルが出したサンドイッチの包みを手に取った。
「おっ。マリル様特製タマゴサンドを手に取るとは。お目が高いねー、リッちゃん。今日一番の自信作よ」
「……すっごい上手に出来てるじゃん、売りものみたい。なに、料理得意なの?マリル」
「ふっふっふ、コレだけは自信あるんだよねー。店でも開こうかなーって思ってるのよ」
「……魔法の訓練をしなさいよ、魔法の訓練を。アンタこの前も団長に説教喰らったって聞いたわよ」
「あーあー。キコエナイキコエナイ」
マリルはぎこちない笑顔のまま、自作のサンドイッチやおかずをどんどんテーブルの上に広げていった。
「と。コレで準備完了かな?えーと……マグナちゃんのコトはなんて呼ぼうかなぁ……。マッさん?マーちゃん?」
「ま、マグナでいいです……。……ありがとうございます、マリルさん、ルーティアさん。色々作ってきていただいて」
一先ずの準備を終えた四人はテーブルの周りに腰掛け、主催者の開始の合図を待つ。
「さ、それじゃあマグナ。挨拶でもしなさいよ」
リーシャがにっこりと微笑んで、マグナの膝を軽く叩いた。
「ええっ!ぼ、ボクがですか?」
「アンタがピクニックしようって言ったんじゃない。飲み物、注いであげるから挨拶の言葉しっかり考えて」
「うー……。えー……どうしよう……」
ニヤニヤとイジワルをするように笑うリーシャがマグナに紙コップをもたせ、その中にオレンジジュースを注いでいく。
そんな二人の様子を、ルーティアとマリルは微笑ましく見守りながらマグナの言葉を待った。
「えー……と。その……。こ、このたびはボクの……じゃなくて、わ、わたくしめの企画した地下水路探索お疲れ様会のご出席いただきまして感謝の極みでござい……」
「堅苦しくなんていいから。気楽に気楽に」
ガチガチに緊張する18歳を、14歳が肩を叩いてリラックスさせる。
少し深呼吸して、マグナは自分の言葉を紡ぐ。
「えと……。最初は、地下水路に一日居たからお日様の下でピクニックしたいなー……なんて軽い考えでつい皆さんを誘っちゃったんですけど。迷惑じゃないかなー、とかボクの主催なんかでいいのかなー、とか色々悩んで今日まできました」
三人は、素直な言葉を出すマグナの話を笑顔で、真剣に耳に入れる。
「ボク、外でご飯を食べるの、大好きなんです。青空の下で食べるご飯ってサイコーに美味しくて……自然の風や木の囁きを聞きながらのんびりと美味しいご飯を食べるのが、本当に好きで。
……いつも、一人でこの公園に来て食べていたんです。でもいつか、誰かと一緒に食べたいな、って思ってて。こんなに美味しいご飯を誰かと食べられたら、きっともっと最高の時間になるんじゃないかって。
……えと……だから……。本当に、ありがとうございます、みなさん!今日は、ボクなんかに付き合ってくれて……本当に……!」
少し涙ぐむマグナの手を、リーシャがぎゅっと握る。マグナは情けなく「ふえええ……」と泣き声を漏らし、リーシャの肩に寄り添った。
ルーティアは目を閉じて、マリルは楽しそうに、それぞれ微笑ましく笑顔で、パチパチと小さく拍手をした。
「ほら、もうちょっとだから。乾杯、しっかり言いなさい」
リーシャが頭をポンポンと叩いて、マグナに優しく言った。
「は、はい……それじゃあ、リーシャ様、ルーティアさん、マリルさん、お飲み物を……」
「うむ」
「オッケー」
「はいはい」
ルーティアとマリルとリーシャは、紙コップにそれぞれ好きな飲み物を注いで手に持つ。
赤い目のマグナは少し照れながら、三人に大きな声で言った。
「それじゃあ……か、かんぱ~~~いっ!!」
「「「 かんぱーい ! 」」」
四人の楽しそうな声が、木漏れ日の木々の上の青空へと吸い込まれていく。
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