めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo

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ヒロイン、婚約者に会う③ 【ヒロインサイドストーリー(おまけ)】

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 いくらなんでも私にとっては初対面の男と明日に婚礼なんて、むりゲー。
 
 そう訴える私に、気絶から復活した元ドロボーニャが『こんなチャンス逃す気!?』とまくし立てて、途中、まだイケメン君がそこにいるのに、頭の中の彼女と大喧嘩してしまったんだけど。
 所々声にも出てしまって、イケメン君が心配そうにしてたわよ。久しぶりに会ったいいなずけが痛い子になってしまったんじゃないかって思ってるよきっと。
 
 でも結局、最後には『体のっとられたうえに、いいなずけとも好きに結婚させてもらえないなんて、もうやだ死んでやる!!』と元ドロボーニャに叫ばれ、不憫におもえてきた私の事実上の根負けでした。
 
 
 だけどさ後から振り返ってみると、どうやって死ぬつもりなんだろ。
 
 私にのっとられてるから体は死ねないはずだし、じゃあ精神の死?
 とかなんだか哲学的になってきたので、私は考えるのをそこで放棄した。
 難しいことは嫌いなのです。
 
 人生気楽に楽しく。スローライフばんざい!
 いや、元ドロボーニャにはちょっと同情もするけどね。
 
 私だって、このまま元ドロボーニャに一生ずっと頭のなかであーだこーだ言われてたくないわ。
 どうせなら人面魚あたりに転身できないかなー。
 ペガサスとかもいいなあ。
 
 
 「ドロボーニャ」
 
 麗しいお顔が近づいてきて私を見下ろす。
 
 おおいけない、心ここにあらずだったわ。
 
 「可愛い私のいいなずけ……」
 
 すっとイケメン様の長い指が、私の顎を持ち上げた。
 
 「この時をずっと待ち望んでいたよ」
 
 
 『ぎゃーーー!!』
 
 私の頭の中で元ドロボーニャが突然叫んで、うっとり閉じかけていた私の目はカッと見開いた。
 
 当然、唇を重ねようとしていたはずのイケメン様は、私の目がぐわっと開いたのでそのまんま硬直してしまったじゃん。
 
 ちょっと元ドロボーニャ、なに雰囲気ぶち壊してくれちゃってんの!!
 
 『だ、だって』
 
 おとなしくしててよね!
 
 あれから晩餐会を終えてお母様たちが「あとは若いふたりで」なんて言って、イケメン様とふたりきりで庭に出てきたんだけど、さっきから元ドロボーニャが頭の中できゃーきゃーうるさい。
 ちっともふたりきりになってないし。
 
 『元々あなたが邪魔者なのよ!!出てってよ―!!』
 
 もうだから私だって出ていけるなら出ていってやるってば。
 その方法見つけるまでは仕方ないじゃん、おとなしくしててよ。
 
 「ドロボーニャ、本当にいったいどうしたんだ…。時々ひとりごとを言うし…悩み事でもあるのかい」
 
 ほら、イケメン様がさっきから心配しっぱなしだよ。
 
 「おほほ、大丈夫ですわー。まだすこし緊張してるだけですの」
 
 何度も取り繕う私の身にもなれ。
 
 「そうだったのか。じゃあ緊張をほぐすまじないをかけてあげるよ」
 「え」
 
 ぐっと腰が抱き寄せられて、私は目の前まで急に迫ったイケメン様に驚いた。
 元ドロボーニャもさすがに呑まれたみたいで静かになる。
 
 「あ、あの」
 「ドロボーニャ」
 
 もしかしてこれ実力行使ですか!?
 
 どんどん近づいてくる麗しの顔に、私は今度こそ目をつむった。
 
 
 
 
 …………あれ?
 
 
 ふれたはずの唇に、感触がない。
 
 私は目を開けた。
 
 

 これって………
 
 

 
 『おめでとうございます!
  ☆攻略対象クリア☆
  ゲームを続けますか?
  はい   いいえ』
 
 
 む、むむう??
 
 目の前の画面から視線をずらし、おもわず首をまわして周囲を見回せば、今度は狭い部屋が目に映る。
 ドロボーニャの部屋に見慣れた私には酷な光景なはずだけど、ひどく懐かしくもあった。
 
 そういうこと?そういうことなの??
 
 震えだす指先で、いいえを選択してキーを叩く。
 
 『次世代バーチャル体験乙女ゲーム
  時間を忘れてのめりこみたい貴女へ』
  
 戻ったスタート画面の文言をぼんやり見ながら、私はだんだんと思い出してきた。
  
 この乙ゲーの物語の設定は、『ある日、ハマっていた乙ゲーの世界に転生した女性が、その世界のヒロインとして生きはじめる』というものだった事を……
 
  
 ちょ、てことは?!
  
 あわてて時計を見れば、針は四時を指していた。
 もちろん夜中の。
  
  
 やばい明日会社遅刻じゃん!!!
 
 
 まさか本当に文字通り時間を忘れてのめりこむことになるなんて、知るかーっ
  
 こんなんだったら週末に開ければよかったあぁぁ!!
  
  
 私は心で絶叫しながらベッドへ飛び込んだ。
 飛び込みながら、それでも私は予感する。
 
 週末きっとまた、このありえない乙ゲーを開くって。
 
 今度はマジマンジ皇太子を攻略対象に選んでみようかな。
 でもそうすると、あの水浸し損の、腹くだしさせられたかもさせられてないかも疑惑損の、ロールペーパー取られたかもしれない疑惑損の、イケ男子の流してないもの見ちゃった損…以上の目に遭うのか?
 
 そんなことを考えているうちに、私は眠りの世界へと落ちていった。
 
 

 
 
 完







 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 

 長々お休みしてすみません!
 そして最後までめちゃくちゃな話でだぶるですみません!
 ここまでおつきあいくださりありがとうございました!

 
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感想 11

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みんなの感想(11件)

ふーら
2019.10.16 ふーら

完結ありがとね😊

2019.10.16 hoo

長い間あけてしまってすみませんでした。
こちらこそ最後までおつきあいくださり、ありがとうございました!

解除
ひつじ
2019.10.13 ひつじ

お疲れ様でした‼️
良い おち でした‼️(* ̄∇ ̄*) 良かったです

2019.10.13 hoo

ご感想ありがとうございます!
長い間あけてしまってすみませんでした。
最後までおつきあいくださり、ありがとうございました!

解除
ひつじ
2019.06.06 ひつじ

楽しく読ませてもらってます‼️
ちょっと腹黒…😅ダリーナと天然のドロボーニャと神の声⁉️の掛け合い漫才が面白いです(* ̄∇ ̄*)
今後 どんな展開になるか楽しみです

2019.06.07 hoo

ご感想ありがとうございます!
漫才、楽しんでいただけて嬉しいです!
全員ハッピーエンドをもれなくめざしております!ぜひ最後までおつきあいくださいませー!

解除

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