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第1章:ルルのはこ
第2話:ふたつのハコのひみつ
しおりを挟むルルがまだ小さかったころ、森のおばあさんフクロウから、こんなおはなしを聞いたことがありました。
「だれの心の中にも、ふたつの『はこ』があるんじゃよ。ひとつは“しろいはこ”。もうひとつは“くろいはこ”じゃ。」
おばあさんフクロウは、目を細めながら言いました。
「“しろいはこ”には、うれしかったこと、たのしかったこと、やさしくしてもらったことをしまっておくんじゃ。にっこりわらったとき、そのかけらが入るのさ。」
「じゃあ、“くろいはこ”は……?」と、ルルがたずねました。
「くろいはこには、さみしかったこと、こわかったこと、つらかったことをしまうのさ。泣いたとき、うまくいかなかったとき、ひとりでがまんしたとき……そういうときに、そっと増えていくんじゃよ。」
ルルは小さな手を胸に当てて、そっとつぶやきました。
「わたしにも、あるのかな……?」
おばあさんフクロウは、やさしく笑いました。
「もちろんあるとも。けれどな、その“はこ”は、見えないけれど、ちゃんと感じられるんじゃよ。自分の心に、ちゃんと耳をすませば、どちらのはこが重たいのか、わかるようになる。」
そのときのルルには、まだピンときていませんでした。
けれど、大きくなるにつれて、すこしずつその“はこ”たちのことを考えるようになっていったのです。
***
ある朝、ルルは森のなかを歩いていました。
いつも通る小道には、花の香りがふんわりと漂っています。
だけど、きょうのルルは、足どりがすこしだけ重たく感じました。
なんでだろう?
空は青くて、鳥たちの歌も聞こえるのに。
でも――なんだか、胸の奥が、きゅうっとなるのです。
「うーん……なんか、ちょっとだけ……もやもやする……」
小さな声で、ルルはつぶやきました。
こんな気持ちになるのは、たぶん昨日のことがあったから。
おともだちと、ちょっとしたすれちがいがあって、言いかえせなかった。
「べつにいいもん!」と笑ってみせたけど、本当は悲しかった。
あのときの気持ち――「くろいはこ」に、そっとしまわれたのかもしれません。
そして、そんな日は、しろいはこが少しだけかすんで見える気がしました。
***
森の広場では、キツネのソラが木の枝にぶらさがって遊んでいました。
「ルルー! おはよう! いっしょに木の実とりにいかない?」
ソラの声に、ルルはぱっと顔をあげて、にこっと笑いました。
「うん、いく!」
その笑顔の中にも、小さな悲しみがまぎれていたことに、ソラはまだ気づいていませんでした。
そしてルルも、自分の“くろいはこ”が、ほんのすこし重たくなっていることに――まだ気づいていなかったのです。
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