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第5章:きもちのこうかん会
第20話:ルルのなかのきもち
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森のなか、しんと静まりかえった会場。
焚き火の火がやさしくゆれて、その光がルルのほほを、そっと照らしていました。
ソラもモコも、何も言わずに、ただルルの隣に座っていました。
あたたかくて、静かで、なにかをせかすような空気はどこにもありませんでした。
ルルは、ぎゅっと自分のしろいはこを抱いていました。
でも、そのすぐとなりには、やっぱり――くろいはこも、ありました。
小さな声が、木の葉のすきまをぬって、こぼれました。
「……わたしね、こわかったの」
誰かが息をのむ音が、かすかに聞こえました。
けれど、だれもさえぎらず、ただルルの声を待っていました。
「くろいはこが、いっぱいになったら……もう、わたしじゃなくなるんじゃないかって。
だれかに見られたら、きらわれちゃうんじゃないかって……」
ソラが、そっとしっぽでルルの背中をなでました。
モコは、うんうんと、うなずいていました。
ルルの目に、ぽろりと、なにかが落ちました。
それは、くろいはこのフタをすこしだけ、ゆるめた涙でした。
「だけどね……」
ルルは、小さく笑いました。少しだけ、震えた声で。
「……だれかがそばにいてくれるって、ほんとうに、うれしいんだって……はじめて、わかったの」
そのとき、風がふわりと吹きました。
火のゆらめきが、木の枝に反射して、まるで森が、ほほえんだように見えました。
「くろいはこってね……なくなったりしないけど、
ちょっとだけ、すこしずつ、うすくなることもあるんだなって思ったの」
ソラも、モコも、なにも言わなかった。
でもそのまなざしは、「わかるよ」と言っていました。
ルルは、しろいはこを胸に抱きしめながら、小さく深呼吸をしました。
そして、はじめて、くろいはこを手にとって、自分の足もとにそっと置きました。
それは、かつてよりほんのすこし、軽くなっていたような気がしました。
──森のなかで、ちいさな「ことば」が生まれた夜。
その声は、だれにも届かなくても、ちゃんと「自分自身」に届いていたのでした。
そして、ルルのなかで、なにかがやわらかく動きはじめていました。
それはきっと、これからを生きるための、小さな光でした。
焚き火の火がやさしくゆれて、その光がルルのほほを、そっと照らしていました。
ソラもモコも、何も言わずに、ただルルの隣に座っていました。
あたたかくて、静かで、なにかをせかすような空気はどこにもありませんでした。
ルルは、ぎゅっと自分のしろいはこを抱いていました。
でも、そのすぐとなりには、やっぱり――くろいはこも、ありました。
小さな声が、木の葉のすきまをぬって、こぼれました。
「……わたしね、こわかったの」
誰かが息をのむ音が、かすかに聞こえました。
けれど、だれもさえぎらず、ただルルの声を待っていました。
「くろいはこが、いっぱいになったら……もう、わたしじゃなくなるんじゃないかって。
だれかに見られたら、きらわれちゃうんじゃないかって……」
ソラが、そっとしっぽでルルの背中をなでました。
モコは、うんうんと、うなずいていました。
ルルの目に、ぽろりと、なにかが落ちました。
それは、くろいはこのフタをすこしだけ、ゆるめた涙でした。
「だけどね……」
ルルは、小さく笑いました。少しだけ、震えた声で。
「……だれかがそばにいてくれるって、ほんとうに、うれしいんだって……はじめて、わかったの」
そのとき、風がふわりと吹きました。
火のゆらめきが、木の枝に反射して、まるで森が、ほほえんだように見えました。
「くろいはこってね……なくなったりしないけど、
ちょっとだけ、すこしずつ、うすくなることもあるんだなって思ったの」
ソラも、モコも、なにも言わなかった。
でもそのまなざしは、「わかるよ」と言っていました。
ルルは、しろいはこを胸に抱きしめながら、小さく深呼吸をしました。
そして、はじめて、くろいはこを手にとって、自分の足もとにそっと置きました。
それは、かつてよりほんのすこし、軽くなっていたような気がしました。
──森のなかで、ちいさな「ことば」が生まれた夜。
その声は、だれにも届かなくても、ちゃんと「自分自身」に届いていたのでした。
そして、ルルのなかで、なにかがやわらかく動きはじめていました。
それはきっと、これからを生きるための、小さな光でした。
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