『天翔(あまかけ)る龍』

キユサピ

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第九章:「衰退と再生の章」

第百二十五話:「ドラゴン騎士団」

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烈陽国の大地を覆う蒼嶺国の竜騎士たち。空に翻る巨大な竜の影、爪と炎が一斉に襲いかかる。砦は炎に包まれ、村々は悲鳴と煙に満ちた。知将・守武財も、これまでの戦略が通用しない空の脅威に、歯噛みするしかなかった。藍峯や壮舷も息を呑む――これは偶然の襲撃ではなく、ヴェルテリスを守る烈陽国の軍を戦場から遠ざけるための、ドレイヴァの巧妙な策謀であった。

その時、玲霞の声が静かな緊張の中に響く。「準備は整ったわ、皆。」机上に広がる設計図と部品の山。数か月にわたる徹夜の研究が、ついに空を翔ける鋼鉄の竜として姿を現した。三体のロボットドラゴン――それは生きた竜に匹敵する威容を備え、リン、天翔、星華の手で操縦される。

空は閃光と炎で震えた。蒼嶺国の竜騎士たちが咆哮しながら突撃する中、ロボットドラゴンは鋭く旋回し、敵の動きを封じる。リンの目は冷静そのもの、先読みした動きで炎を避けながら攻撃を加える。天翔は勇猛に火炎砲を放ち、星華は縦横無尽に飛行し仲間を援護する。

地上では景嵐が瞬時に判断を下す。農民や漁師、寄せ集めの兵たちを鼓舞し、槍と盾を手にした即席部隊を編成。逃げ惑う兵たちの目に恐怖だけでなく希望の光が戻る。「俺の後に続け! 烈陽の地を守るのだ!」叫び声とともに陣形が再び整い、士気は高まった。

空と地が一体となった攻撃は、蒼嶺国の竜騎士たちを徐々に追い詰めた。鋼鉄の竜と生きた竜の衝突は轟音と閃光を生み、戦場は混沌の渦に包まれる。しかし、数に勝る蒼嶺軍も、烈陽国の反撃を前に焦りを隠せなかった。

ついに蒼嶺軍の将が撤退の合図を送る。「……これ以上は不利だ、一度退け!」竜騎士たちは旋回しながら空の彼方へと消えていった。

烈陽の兵士たちは歓声を上げ、肩を叩き合う。倒れた竜の影、煙に包まれた戦場、そして勝利の余韻。リン、天翔、星華の三人はロボットドラゴンを静かに着陸させ、景嵐と目を合わせた。互いに短く頷く。それだけで十分だった。戦場に流れる一瞬の安堵、それを分かち合うために。

「空を抑え、地を支えたのは皆の力だ」景嵐の言葉に、武官たちの瞳が光る。「共に守り抜いた――この国を。」

だが、戦場の静けさの奥底に、誰もが知る真実があった。これは終わりではなく、束の間の休息に過ぎぬことを。ヴェルテリスを狙うドレイヴァの策略は、まだ完了してはいない。少年カイリを王に据えた新国家樹立の影は、すぐそこまで迫っていた。

烈陽国に訪れた勝利の余韻とともに、さらなる試練への覚悟が静かに、しかし確かに全員の胸に刻まれた。

勝利の余韻に浸る間もなく、玲霞は次の戦略を練っていた。

「これだけでは、国を守りきれない……」

机上には改良を加えた化学兵士の設計図が広がる。かつて彼女が開発した兵士たちをさらに強化し、数百体を完成させたのだ。人間以上の反応速度と持久力を誇る彼らは、昼夜問わず戦闘態勢を維持できる。

完成した兵士たちは即座にヴェルテリス国境線へと派遣される。数千の化学兵士が配置され、国境の監視と防衛にあたることで、もはや敵が昼間に侵入することも、夜陰に乗じて潜入することも許されなくなった。

「国を守るのは、ただの武力ではない……安心感そのものを築くことも必要ね」

玲霞の冷静な声が、兵士たちの動く金属音に混じる。

化学兵士による国境警備が整うと、烈陽国の天才科学者・玲霞はさらなる防衛強化に着手した。

「空の警戒も、数を増やせば完璧になる……」

彼女は既存の三体のロボットドラゴンに加え、新たに五体を追加で製造。烈陽国の空を覆う合計八体の鋼鉄竜は、昼夜を問わず国を守ることができる。翼は大きく、暗視やセンサーも備えたため、夜間の侵入者も見逃さない。火炎砲や高速飛行機能も改良され、蒼嶺国の龍騎士をはじめ、空からの脅威に対抗できる戦力となった。

地上には無人化学兵士たちが整然と配置され、八体のロボットドラゴンと連動する体制を築く。平原や丘陵地帯を昼は飛び回り、夜は星空の下で影となり警戒を続ける。敵が接近すれば、ドラゴンと化学兵士が同時に反応し、互いに補完し合う。

景嵐はその光景を見つめ、深く息をつく。
「これで烈陽国は、まず安全だ……」

空の鋼鉄竜と地の無人兵士が連携し、昼夜を問わず警戒を続ける姿は、まさに烈陽国の揺るぎなき守護の象徴であった。民たちはまだ知らない――見えざる守護者たちが日々国を護り、未来の脅威に備えていることを。

こうして、烈陽国は空と地の二重防衛を確立し、今後の戦乱に備える強固な基盤を手に入れたのであった。

烈陽国は陸の防衛を強化するだけでは満足しなかった。次なる脅威は海からも迫ってくる可能性があったからである。

玲霞は再び机上に設計図を広げた。今度のターゲットは海上防衛である。彼女が開発したのは、完全無人で自律行動可能な「無人海上艦隊」――小型から大型までの艦艇が、センサーと自動攻撃機能を備え、昼夜を問わず海上の安全を監視し、敵船の接近を阻止する。

艦隊は数百隻に及び、それぞれが独立して動くと同時に連携も可能。沿岸警戒はもちろん、外洋に進出しての敵迎撃も視野に入れていた。

「海も、守るべき領域よ」
玲霞はそう呟きながら艦隊を指揮するコンソールに視線を落とす。ディスプレイ上では艦艇たちが隊列を組み、波間を滑るように動いている。まるで海上に無人の守護神が現れたかのようだった。

烈陽国の兵士たちは初めて目にする光景に息を呑む。陸上のロボットドラゴンと無人化学兵士に続き、今度は海の戦力が加わった。
「これで、空も陸も海も、敵は思うように侵入できない」
景嵐は微かに笑みを浮かべ、荒波を背にした艦隊を見つめた。
烈陽国の防衛体制は、これで三面を固めることができた。空を駆けるロボットドラゴン、地上を守る化学兵士、そして海を制する無人艦隊――どの脅威も、もはや容易には烈陽国の領土を侵すことはできない。

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