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第一章
二話
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配属されて一週間もしないうちに基地の近隣の街で吸血鬼関連の大規模侵略がおきた。夜遅くに500体規模の喰種“グール”が街を襲撃したというのだ。
私たち補給部隊も後方支援として出動する予定であった。だがいつまで経っても隊は出撃するそぶりも見せない。
不安に駆られた私は優雅にティータイムに耽るエルド隊長に尋ねた
『隊長どの、我々は何時になったら出撃するのでしょうか?このままでは前線部隊の補給が間に合わず撤退を余儀なくされてしまいます!最悪犠牲者も…』
するとエルド隊長は余裕の表情でこう言った。
『そんなに怒鳴らないでよ~お嬢ちゃん。学園首席卒業だか何だか知らないけど何もわかってないわね~。こんなのここじゃ日常茶飯事よ?ウチの精鋭部隊が、たかだか数百体程度の喰種に負けるはずないじゃない。…それとも補給なしじゃ戦えない軟弱者だと言いたいのかしら?首席様は。』
『とんでもありません。ただ…』
反論はしたかった。どのような部隊でも補給は生命線だ。今回出撃しているのは50人の小隊だ。10~50体程度の喰種程度なら手持ちの武装で対処できるだろう。それでも数体の吸血鬼の奇襲を仕掛けられては弾薬や聖水、火葬火器が持つとは限らない。
今回は500体規模だ。喰種を操っている吸血鬼も10体以上いるだろう。いくら実戦経験がない私でも授業で習った。補給なしでその数を相手にするのは聖堂騎士小隊でも不可能だ。確実に犠牲者が出る。
『ただ?上官に口答えなんて、実戦も知らない甘ちゃんに何が分かるのかしら?』
『…失礼しました。』
…確かに私は実戦を経験したことはない。今回が初めての実戦だ。教科書が絶対正しいなんて石頭ではない。ここはエルド隊長と前衛部隊を信じてみよう。
そう諦めかけたその時、詰所のモニターに前線部隊の映像が映し出された。
映し出された映像は地獄といっても過言ではない。街は燃え、住人の死体が転がり、喰種の大群が街を覆いつくしている。先行していた前線部隊は壊滅し、辛うじて1~2分隊が抵抗しながら映像と救援要請を送っている…
『応答せよ!こちらカーチス小隊第三分隊!小隊は壊滅した!至急救援を求む!敵は吸血鬼200体以上!メーメル基地に向け進攻中!繰り返す…』
余りの惨劇に言葉が出なかった。実戦とはこれほどのモノだったのか。化け物の大群がこちらに向かってきている。足が震える。ついさっきまでどんな任務だって耐えて見せるなんて思っていたのが一瞬で消え去った。学校で弱った喰種数体を倒して天狗になっていたのだろう。
…何分その映像に釘付けになっていたのだろうか。気が付くと詰所には誰もいなくなっていた。エルド隊長は?他の隊員は?まさかあっけにとられている私を無視して救援に向かったのだろうか?この程度で足が竦む足手まといの私を置いて。あんな惨劇を見ても、吸血鬼200体なんていう恐怖の塊のような相手に立ち向かえる勇気に感心してしまう。
…感心している場合ではない、私も勇気を振り絞り救援に向かわないと!震える足に喝を入れ詰所を出る。静まり返った基地内を出口に向けひた走る。
…違和感を感じた。ここは表向き教会とはいえ静かすぎないか?基地全体に明かりは灯っているがこれから基地が襲撃されようとしているのよ?街から基地まで数キロ程度しかない距離ですぐそこまで化け物の大群が迫ってきているのに。
全員救援に向かった?そんな馬鹿な。いくら夜間は中隊規模しか常駐していないとはいえそれでは基地機能が停止してしまう。いくら実戦を知らない私でもこの異常状態は無視できない。
慌てて詰所に戻ってきた。誰もいない室内でコンソールの明かりと救援要請の音声だけが響いている。非戦闘員の通信員すらいない。
最悪の展開が脳裏をよぎる。この基地は放棄されたのだ。なにせ吸血鬼200体以上の大群がこちらに向かってきているのだ。映画や小説で見るような絶望的状況でも立ち向かっていく狂信者なんてここにはいない。誰だってエクソシストの誇りなんて捨てて逃げ出したくなる。それほど絶望的状況だった。
基地内放送でまだ誰か残っているか呼びかけたが応答はない。
絶望と同時に怒りが湧いてきた。エルドという人物は新人とはいえ部下を置き去りにしてコソコソ逃げ出すような奴だった!さっきまで感心していた私がバカみたいだ。
前線の映像が隊員の悲鳴とともに途切れる。完全に全滅したようだ。確信する。この基地はもう駄目だ。だからと言って逃げ出すほど臆病者でもない。短い人生だったけどせめて2~3体の吸血鬼を道連れにして誇り高く死のう。
倉庫から小銃と持てるだけの弾薬を持ち出し、基地出口で待ち構える。遠くには燃え盛る街とこちらに向かって蠢く喰種の大群が見える。正直怖い。ガタガタ震える身体を押し殺して銃を構え吠える。
来い!化け物ども!第一学園首席卒業生の力を見せてやる!
私たち補給部隊も後方支援として出動する予定であった。だがいつまで経っても隊は出撃するそぶりも見せない。
不安に駆られた私は優雅にティータイムに耽るエルド隊長に尋ねた
『隊長どの、我々は何時になったら出撃するのでしょうか?このままでは前線部隊の補給が間に合わず撤退を余儀なくされてしまいます!最悪犠牲者も…』
するとエルド隊長は余裕の表情でこう言った。
『そんなに怒鳴らないでよ~お嬢ちゃん。学園首席卒業だか何だか知らないけど何もわかってないわね~。こんなのここじゃ日常茶飯事よ?ウチの精鋭部隊が、たかだか数百体程度の喰種に負けるはずないじゃない。…それとも補給なしじゃ戦えない軟弱者だと言いたいのかしら?首席様は。』
『とんでもありません。ただ…』
反論はしたかった。どのような部隊でも補給は生命線だ。今回出撃しているのは50人の小隊だ。10~50体程度の喰種程度なら手持ちの武装で対処できるだろう。それでも数体の吸血鬼の奇襲を仕掛けられては弾薬や聖水、火葬火器が持つとは限らない。
今回は500体規模だ。喰種を操っている吸血鬼も10体以上いるだろう。いくら実戦経験がない私でも授業で習った。補給なしでその数を相手にするのは聖堂騎士小隊でも不可能だ。確実に犠牲者が出る。
『ただ?上官に口答えなんて、実戦も知らない甘ちゃんに何が分かるのかしら?』
『…失礼しました。』
…確かに私は実戦を経験したことはない。今回が初めての実戦だ。教科書が絶対正しいなんて石頭ではない。ここはエルド隊長と前衛部隊を信じてみよう。
そう諦めかけたその時、詰所のモニターに前線部隊の映像が映し出された。
映し出された映像は地獄といっても過言ではない。街は燃え、住人の死体が転がり、喰種の大群が街を覆いつくしている。先行していた前線部隊は壊滅し、辛うじて1~2分隊が抵抗しながら映像と救援要請を送っている…
『応答せよ!こちらカーチス小隊第三分隊!小隊は壊滅した!至急救援を求む!敵は吸血鬼200体以上!メーメル基地に向け進攻中!繰り返す…』
余りの惨劇に言葉が出なかった。実戦とはこれほどのモノだったのか。化け物の大群がこちらに向かってきている。足が震える。ついさっきまでどんな任務だって耐えて見せるなんて思っていたのが一瞬で消え去った。学校で弱った喰種数体を倒して天狗になっていたのだろう。
…何分その映像に釘付けになっていたのだろうか。気が付くと詰所には誰もいなくなっていた。エルド隊長は?他の隊員は?まさかあっけにとられている私を無視して救援に向かったのだろうか?この程度で足が竦む足手まといの私を置いて。あんな惨劇を見ても、吸血鬼200体なんていう恐怖の塊のような相手に立ち向かえる勇気に感心してしまう。
…感心している場合ではない、私も勇気を振り絞り救援に向かわないと!震える足に喝を入れ詰所を出る。静まり返った基地内を出口に向けひた走る。
…違和感を感じた。ここは表向き教会とはいえ静かすぎないか?基地全体に明かりは灯っているがこれから基地が襲撃されようとしているのよ?街から基地まで数キロ程度しかない距離ですぐそこまで化け物の大群が迫ってきているのに。
全員救援に向かった?そんな馬鹿な。いくら夜間は中隊規模しか常駐していないとはいえそれでは基地機能が停止してしまう。いくら実戦を知らない私でもこの異常状態は無視できない。
慌てて詰所に戻ってきた。誰もいない室内でコンソールの明かりと救援要請の音声だけが響いている。非戦闘員の通信員すらいない。
最悪の展開が脳裏をよぎる。この基地は放棄されたのだ。なにせ吸血鬼200体以上の大群がこちらに向かってきているのだ。映画や小説で見るような絶望的状況でも立ち向かっていく狂信者なんてここにはいない。誰だってエクソシストの誇りなんて捨てて逃げ出したくなる。それほど絶望的状況だった。
基地内放送でまだ誰か残っているか呼びかけたが応答はない。
絶望と同時に怒りが湧いてきた。エルドという人物は新人とはいえ部下を置き去りにしてコソコソ逃げ出すような奴だった!さっきまで感心していた私がバカみたいだ。
前線の映像が隊員の悲鳴とともに途切れる。完全に全滅したようだ。確信する。この基地はもう駄目だ。だからと言って逃げ出すほど臆病者でもない。短い人生だったけどせめて2~3体の吸血鬼を道連れにして誇り高く死のう。
倉庫から小銃と持てるだけの弾薬を持ち出し、基地出口で待ち構える。遠くには燃え盛る街とこちらに向かって蠢く喰種の大群が見える。正直怖い。ガタガタ震える身体を押し殺して銃を構え吠える。
来い!化け物ども!第一学園首席卒業生の力を見せてやる!
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