今日のドライブ

だわ

文字の大きさ
7 / 16
1章 白雪とドライブ

6話 コイゴコロとは?

しおりを挟む
 駐車場に車を止め外に降りる。久しぶりの運転で緊張していたせいか膝が笑っている。
 「ハハッ、やべーぞシロ!俺膝ガクガクだー。」
 「おつかれちゃんだな拓斗。ほれ、一緒に饅頭食べよう。」
 白雪は車からペットボトルのお茶を出してくれた。拓斗もバッグから饅頭を取り出し、二人でガードレールに腰掛けながら饅頭を頬張る。
 ほんのり温かい饅頭のサクサクとした衣の油の旨味と餡子の糖分が緊張で疲れた脳に染み渡る。少々小高い尾根にある駐車場なので景色もよく、吹き抜ける風が涼しくて気持ちいい。
 お茶で口の中の餡子を洗い流し背伸びをする。このまま時間を忘れてボーっとしていたいが、そろそろ笑っていた膝も落ち着いてきた。ここからは自宅まで高速道路込みの恐怖のノンストップ運転が待っているのだ。これはまた気合をいれて挑まねばなるまい。
 拓斗が気持ちを新たに意気込んでいるとさっきまで世間話で笑っていた白雪が妙に神妙な顔つきで話しかけてきた。
 「なぁ、さっきも話していたが拓斗は朱音のこと…その…どう思っているんだ?」
 はて?いきなりなんだってこんな質問を?
 「朱音ちゃん?そりゃあ可愛い妹みたいなもんだよ。…さては朱音ちゃんと俺をくっつけようって企んでやがるな?残念ながら俺はギャルゲーの鈍感系主人公とは違うのだよ!俺が言うのもなんだが朱音ちゃんなら少々内気だが優しいしセクシーだし、家事もできるとパーフェクト物件だ。いい兄貴分を放棄してそのまま付き合うのもやぶさかではないな。」
 話しながら安心する。白雪のこの感じだと朱音はまだフリーらしい。そして付き合うといっても今の関係が致命的に崩れるとは思えない。白雪も朱音に甘いところがある。どうせまた三人でつるんで遊ぶのだろう。二人のイチャイチャっぷりを白雪に見せつけてやるポイントが加算されるだけという感じだ。
 拓斗も薄々そのうち朱音と付き合うんだろうなという感じはしていた。なのでいきなりそれらしい質問をされても狼狽えなかった。デキる男は狼狽えない!
 しかし鈍感主人公ではないと言い切った以上もう一つの可能性も危惧しなければならないだろう。そう、こんな質問をしてきた白雪が万に一つもしかしたら拓斗のことを好いているのではないのか?…だが答えはもう出ている。
 「それともなんだ?そんな質問するってことはシロが朱音ちゃんを差し置いてまで俺と付き合いたいってのか?」
 「…それも魅力的な提案だがやめておこう。そもそもオレみたいな男女と付き合うなんて拓斗もイヤだろう?」
 こんな調子である。やれやれといった顔で魅力的なんてイヤミまで付け加えてすらいる。確かに白雪も顔の見てくれはいい。だが胸が未だにぺったんこで中身もコレである。昔からずっとつるんでいるが、コイツを女として見たことなど一度もない。同じく白雪も俺のことを異性として意識したことなんて無いだろうと拓斗は感慨深い気持ちで頷いた。
 「イヤってわけじゃないがシロはシロだしなぁ~まったく意識できん!」
 すっぱりと言い切った。白雪は一瞬驚いたような顔をしていたのが意外だったがすぐに元の笑顔に戻り、
 「…そうだよな~もう15年以上の付き合いだしな。よしっ!朱音にはそれとなく伝えておいてやるぜ。拓斗は脈アリだってな。」
 「おいおい、もし俺に彼女いたらどうしたんだ?」
 「ありえないな。拓斗みたいなろくでもない甲斐性無しを好きになる奴なんて優しさの権化の朱音くらいだろ?」
 ニヤニヤしながらこんなことを口走ってやがる。白雪の車じゃなかったらそのままここに置き去りにしてやりたいくらいだ。
 朱音と付き合いたいという重大事項をさらっと告白してしまったが、いつもの冗談でうやむやにした小休憩は終わり、練習後半戦がスタートする。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...