記憶屋の魔女の名前はまだない

藤川みはな

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取り戻した記憶

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シャボン玉が弾けた瞬間魔女の頭の中に
記憶の濁流が押し寄せてきた。

そうだ、私の名前はエリー。
私にはカイトという弟がいたんだ。
魔法を使う私とカイトは両親から気味悪がられていた。

『お母さんっ!やめて!!』

カイトを殴るお母さんに私は縋りついて泣いていた。

『邪魔!どけ!!』
お母さんが私を振り払うように私のお腹を蹴る。

勢いよく床に倒れて頭を打った私にお母さんは言った。

『この魔女がっ!! 
生まれてこなければよかったんだよっ!!
どうしてお前たちは生まれたんだっ!』

そのとき、
心臓が引き裂かれたかのような錯覚を覚えた。

その夜いつもより感情の起伏が激しくなっていた
お母さんと酔っ払って激昂したお父さんによって
私たち姉弟は押入れに閉じ込められた。

『出して!出してよー!』
2歳下の弟が叫んでもその声は届かない。

私たちはお父さんと、お母さんに愛されたかった。

エリーの頭がズキっと痛んだ。
頭を押さえ空気を肺いっぱいに取り込む。

「大丈夫か?」
ロイドが心配そうに顔を覗き込んできたが
エリーは青白い顔で頷いた。

それからお母さんとお父さんに傷つけられ
私がカイトの身体を癒し、カイトが私の身体を
癒す、そんな毎日が続いていた。

ある日、カイトは、お母さんに押し入れから
引き摺り出され、帰ってこなくなった。

嫌な想像が頭を駆け巡って夜も眠れなくなった。

だから、私はカイトを探すため押し入れから
自分の意思で出て、カイトを探しに行った。

『カイトっ カイトぉっ!!!』

迷い込んだ深い森の中を歩き回る。
歩き回っているうちに日が暮れて夜になった。
痛みを感じて視線を下に向けると足は傷だらけになっていた。

だけど、それよりカイトの方が大事だった。

何時間か歩き回ったけど突然
足に力が入らなくなって
私は座り込んだ。

そしてそのまま膝を抱える。
カイト、どこへ行ったの?

そんなとき、白髪混じりの金髪に薄い灰色の目をした老人と出会った。
彼は肩にフクロウを乗せて外套を着ていた。

『お嬢さん、こんな寒いなかどうしたんだい?』

それがロイドと私の出会いだった。
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