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死
しおりを挟む今日から朝倉美花は幽霊になった。
病室でわたしの手を握り締め泣いている母。
父は静かに涙を流して、
取り乱すお母さんの肩に手を置いた。
そんな様子をわたしは病室の窓からわたしを見ていた。
あそこにわたしがいるのに、
わたしはここにいる。
どういうことなんだろう。
考えてみる。
そっか、わたし死んだんだ。
わたしは心臓の病気で、
この病院に入院したの。
だけど、日が経つにつれどんどん悪化して……。
今のわたしは幽体で、あそこにあるわたしは
魂の入ってない体。
なるほど。
死後の世界って本当にあるんだな。
そういえば、なぜ、お父さんは泣いているんだろう。
いつも、無表情で無口。感情が読めない。
そんな父だった。
お父さんはあんな風に泣くんだな。
胸がずきっと痛む。
分かりあおうともしなかった。
自分から話しかけたりしなかった。
「ごめんね、お父さん」
謝罪の言葉を呟く。
お母さんはわたしの手を握り涙を流しながら
何かを叫んでいる。
お母さんはあんなに取り乱す人だったっけ?
気が強くて、いつもわたしに怒鳴ってばかりだった。
やっぱりわたし、お母さんのこと
わかってなかったみたい。
また胸が痛む。
「お母さんも、ごめんね」
そう呟き、お母さん達にくるりと背を向ける。
病気で部屋から出られなかった分
やりたいことをやろう!
わたしはにっこり笑ったのだった。
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