彼女の声はまだ届かない

ネコさん

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野垣紗綾 一年生

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私は期待を胸に小学校に入学した。

3歳の頃から習い事をしていた私は勉強に慣れていた。

だから知らないことを知れる学校の授業は面白かったし楽しかった。

友達も一緒に過ごしていくうちに勝手にできると思ってた。

だが私が目指す目標はそれを許さなかった。

その目標とは「完璧」

テストも満点

運動もできる

学習態度もいい

先生や生徒からも一目置かれ、尊敬される

それが私の中の完璧であった。


完璧な人間は存在しない。

こんなこと誰でも知っている。

けれど私は賢すぎた。

賢すぎて親は私に教える年相応のことがなかった。

故に無知、幼いものの無知は危険だ。

私は勉強ができた。

勉強が出来たからこそ親は学校のことを心配せずにいた。

あの子は大人っぽい、だから勉強さえできれば心配はない!

これは友達のお母さんも言っていた。

けれど、私は常識を知らない。

友達の作り方も知らない。

幼稚園の時は途中で引っ越したため新しい友達として一時期皆の注目の的だった。

「紗綾ちゃん。これしよう!」

「紗綾ちゃん、今度はこれね!」

いろんなところに案内もしてもらった。

友達を作りやすい環境があったから友達が出来た。

だが小学校は違う。

自分から作りに行かなければならない。


私は焦った。

どうすればいいの?

分からない・・分からない・・

そこにある二人の女の子がやって来た。

「ねえ、お名前教えて!」

「わ、私?私は野垣紗綾だよ。さやって呼んで」

「私は三原千尋。ちーちゃんって呼んで」

「私は岩永久美。くーちゃんって呼んでね」

ちーちゃんとくーちゃんは友達の作り方を知らない私にとっては救世主のような存在だった。

一人友達が出来ればその友達の友達とも知り合い友達になる。

知り合いが増えていく原理はこれだ。

ちーちゃんとくーちゃんは同じ保育園で他にも保育園繋がりの友達とも友達になれた。

私は何人かの女の子グループのリーダーになった。

勿論完璧という目標を忘れたわけではない。

ただ一言、担任の平山先生からこんなことを言われた。

「貴方は本当に完璧になりたいんですか?私はそのままの貴方が一番好きですよ」

この一言にどれだけ救われただろうか。

勿論、勉強を疎かにするつもりはない。

けれどこの言葉をきっかけに少しずつではあるが心にもゆとりが持てるようになった。















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