我、フラグ回収屋也。

りゅう

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1章

第一話 悪戯の神の贈り物

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 俺には特別な「力」がある。
 そう、ほかのだれも持っていない自分だけの特殊能力だ。
 厨二病だと思うだろうか。痛い奴だと思うだろうか。
 しかしこれは本当のことである。

 そして俺はこの力をありがたいと思ったことは一度もない。

 おかあに聞くに、俺は昔からなかなかに不運だったらしい。
 強風が吹くような日は、ベランダから植木鉢が落ちてきて頭に直撃したり、吊り橋に行ったときは、綺麗に足場が崩れて川に落っこちたり…

 いや、普通に考えて死ぬだろ。

 その他にも、ドアを開けようとしたら引き戸でドアが外れて倒れてきたり、気分がよくてスキップしていたら小石に躓いて頭から地面に飛び込んだり。
 まあこれくらいはよくあると思うだろうが、それが100%だったというから驚きだ。

 以上のことから俺はこれだけは断言できると確信している。

 俺は神とかが娯楽のために生み出した、展開的においしい人間、つまりフラグ回収の達人だということである。

 昨日は丸太の橋を渡っていたらタイミングよく強風が吹いて小川にダイブ。一昨日はモンスター狩りをしていたら洞窟が崩落して閉じ込められた。いやー、あれは死ぬと思ったわ…
 
 そういえば自己紹介がまだでしたね。俺はリアム=フラッグ。名前からしてまずオチが分かる。職業は冒険者。例の「力」のせいで何度も死にかけたことはあるが、常人離れした身体能力(というか丈夫さ)のおかげで何とか生きながら得ている。

 いや、生きてしまっている。ぶっちゃけ死んだほうg…おっとこれは言わないようにしよう。

 まあ冒険者としてはそこそこで、剣については例の「力」のせいでうっかり自分を斬ったら怖いので魔法を一通り覚えて使っている。それでもやっぱりよくファンブルするんだが。失敗率100%じゃなくて良かった。ありがとう、じゃないクソくらえ神様。
 彼女とか配偶者はこの話の流れ、もちろんいません。まあちっちゃなフラグ立ってるしな。うんフラグのせい…多分。
 
 家はそこそこ大きい、メイドも実はいる。ここだけは影響がなくて本当によかったと思う。やっぱり金しか勝たんだな。
 メイドの名は、リルという。リルは女であるが、武才に優れていて、俺はリルとパーティを組み、リルがダメージディーラー、俺が後方でヒーラー兼魔導士みたいな感じである。そしてこのリル、ルックスがいい。普通にタイプなんだが・・・顔がきれいで…おっと話が逸れているな。
 しかし残念なのは性格が少しきついところだろうか。俺が魔法をファンブルすると、戦闘後必ず睨んでくる。お顔が怖いんですよ、身長縮んじゃうよ。

 まあ自己紹介もここら辺にして、今俺はリルとモンスターの湧く近くの洞窟に来ている。ここのモンスターはそこまで強いわけでもないのだが、ここを放置しておくと俺の家のある村が襲われてしまうし、なんせどっかのヒーラー兼魔導士がキワモノ持ちなんで…

「右、来ますよ!」

「了解! リルは左を頼む!」

「承知いたしました!」

 俺は右からやってきたゴブリン2匹に向かって火魔法を、あれ、出ませんね、ファンブルでしょうか。
 俺があせあせしていると、既に左側のゴブリンを片付けたリルが2匹を斬り伏せる。助かりました、リル様!そして傷つくので無言で睨まないでください。

「あ、レベルが上がりましたよ!」

 リル様はとてもうれしそうに言った。まあ俺は上がってないんだけどね。

「じゃあ今日はここらへんで帰ろうか」

「そうですね、もう日が暮れてしまいます」

 ふと外を見ると、確かに空がオレンジ色になっていた。長居もめんどくさいのでとっとと帰りたいところ…だ…

「グルルルルル!!!」

 うっそ、今のフラグ判定になっちゃうんですか!?俺のフラグが見事回収され、俺たちの帰路を妨げるようにウルフが3匹飛び出してきた。

「くっ、こんな時に限ってウルフですか・・・相性が悪いですね・・・」

 そう、ウルフは距離を詰めて飛びかかってくる攻撃を得意とする。そして鋭い牙を持っているので、近距離戦を得意とするリルには少々分が悪いのだ。なら遠距離攻撃でいいではないかと思うだろうが、前で壁になってくれるアタッカー、もしくはタンクがいなければ距離を詰められて敵わないし、前衛職の回復をしなければならないので、要はジリ貧なのである。

「仕方ない、奥に逃げるわけにもいかないし戦うぞ!」

「分かっています!」

 リルが若干キレ気味なところからも、余裕の無さが窺える。こっちは2人、相手は3匹。どうするか。

「攻撃魔法多めに使うぞ!頑張ってなるべく動かずに回避してくれ!」

「ご主人様、命令が矛盾してます、死んでください!」

 わーお痛烈。しかしフラグは立った。これなら…

「おっと、面白いことになってんじゃねえか」

「つべこべ言ってないで、とりあえず助けるのが最優先でしょ!」

「「!!!」」

 出口のほうから男女2人の声がした。

 よかった、たまにはいい働きするなこの「力」。助っ人は2人。タンクと、魔導士のように見える。とりあえず人が増え、挟み撃ちできる…

 と思ったとき、態勢が前のめりになり、為す術もなく倒れてしまった。
 どうやら活動限界のようだ。まさか好転フラグと悪転フラグがセットだったとは…

 そう思ったと同時に、俺の視界は真っ暗になった。

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カクヨムで連載している作品となります!
不定期に更新していきますのでこれからもお読みいただければ幸いです!
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