闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第8話 森ダンジョン・ヒッパルコス

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国を出るとそこは草原が広がっていた。
少し前まではフェンリルと共に歩んだ場所だ。

でも今は違う。

三毛猫のヴァルハラ、
そして、豪商の息子・ウィルソンがいる。

今日はこのパーティで森ダンジョン・ヒッパルコスへ向かう。


「ウィルソン、案内よろしく」
「任せてくれ。とりあえず、この草原はスライムとか弱いのしかいないから、どんどん先へ進もう」

彼の言う通り、草原に現れるモンスターは強くない。俺でも対処できるレベルだ。森までは安全な旅が出来そうだ。

けど問題は森から。
まずは行ってみて考えればいいか。
ウィルソンの実力も見れるだろうし。

そう考えていると、ヴァルハラが耳打ちしてきた。


「カイリさん、カイリさん」
「どうした、ヴァルハラ。コソコソと……普通に話せばよくないか?」
「申し訳ないのですが、カイリさんしか信用できないんです」
「そりゃ嬉しいけど。でも、ウィルソンは良いヤツだぞ」

「いえ、わたしは遠慮しておきます。カイリさんの頭の上に乗っているので必要に応じて話しかけてくださいませ」

ヴァルハラがそこまで言うなら強要はできない。そもそも、喋る猫は本当に珍しいし、滅多にいない。もし、喋る猫がいるなんて周囲に噂が立てば大変なことになるかも。

「分かったよ。俺のそばから離れるなよ」
「決して離れません。だって、わたしはカイリさんのペットですもん」
「そ、そっか。なんか照れるな」

相手は猫のはずなのに……妙にドキドキする。なんだろう、この感覚。俺、なんか変だな。


草原をひたすら歩き、森が近くなってきた。


「カイリ、もうすぐヒッパルコスだ」
「あれかぁ。かなり深そうな森だね」
「ああ、この森は広範囲に広がっていて“迷いの森”とか“魔女の森”とも言われている。いわくつきなんだよ」

「い、いわくつき……怖いな」
「実際、亡くなっている冒険者も多いと聞く。難易度も高いからね」

「ちなみに、モンスターはどんなのが?」
「それは中へ入ってからのお楽しみだ」

百聞は一見に如かず――か。
実際に見て感じろってことか。

俺はいくつかポーションを取り出す。
ここから準備をしておかないと色々危なそうだ。

俺ができることは数少ない。
錬金術師としてはポーションを投げて前衛を回復させてやるくらいだ。


今日は、冒険用に備蓄したレッドポーション改を50個持参した。三回使えるので実質は150個分ということになる。

なお、ポーションピッチャーをした場合でも三回分を遠投できるようになっている。


【ポーションピッチャー】
【効果】
錬金術師専用スキル。
全てのポーションを投げられる。
対象に向けてポーションを投げつける。
その者は“ポーションの効果”を受ける。

投げる距離、速度はスキルレベルによって変化する。
また、わずかながら回復量もアップする。
攻撃系ポーションの場合、ダメージがアップする。

level.1:距離10、速度100
level.2:距離20、速度200
level.3:距離30、速度300
level.4:距離40、速度400
level.5:距離50、速度500
level.6:距離60、速度600
level.7:距離70、速度700
level.8:距離80、速度800
level.9:距離90、速度900
level.10:距離100、速度1000
(※距離m、速度km/h)


「カイリ、君は自分の後ろを離れないようついてきてくれ」
「分かった。ウィルソンこそ気をつけて」
「おう。では入るぞ」

歩いて向かっていく。
周囲がだんだんと薄暗くなり、空気が冷たくなった。
中は思ったよりも広い。

木々で覆われているとはいえ、それなりの“道”があった。これが森ダンジョンか。こっちへ入るのは初めてだから……緊張するな。

やがて、モンスターの気配を感じた。
ウィルソンは足を止め、息を潜めた。

「……カイリ、回復は任せたぞ」
「はじまるんだな」
「ああ、そんなに強くないモンスターだけど要注意だ」


ガサガサと茂みの奥から現れる大きなモンスター。
影はこちらへ走ってきた。

なんだ、思ったよりも小さい?

子供サイズの小型モンスターが現れた。
あれは……ゴブリンか!

しかも緑色ではない。
赤色だ。

全身が赤くて筋肉質のゴブリンが突撃してきた。


「あ、あれって……普通のゴブリンではないのか!」
「ヤツは“ソルジャーゴブリン”だ。ほら、剣と盾を持っているだろ」
「なんか強そうだぞ」
「なあに、あれでもまだ弱い方だ。いくぞ!」

ウィルソンは、人差し指をゴブリンへ向ける。
すると、指輪が光りはじめた。装飾の宝石から“武器”が出現したんだ。……マジかよ。
その手には槍が握られていた。
って、あれは……!

「指輪から『ハルバード』!?」
「この指輪にはそれぞれ武器が仕込んであるんだ。……行くぞ!」

飛び出していくウィルソンは、ソルジャーゴブリンの剣をハルバードで防御し、受け流していた。

なんと見事な身のこなし。

軽快に武器を操り、そのままハルバードを振るってゴブリンを撃破していた。


「おぉ! すげぇな」
「いや、まだだ。奥からどんどん来るぞ」


森の奥からソルジャーゴブリンが複数体現れ、ウィルソンを襲撃した。なんて数だ……五、六はいるぞ。

さすがのウィルソンも剣のダメージを受けていた。
今こそ俺の出番だ。


「ウィルソン、レッドポーション改だ!!」


ブンッと投げつけ、ウィルソンを回復した。
だけど、ゴブリンがしつこいな。
五体のゴブリンがウィルソンを囲み、剣を振り回しまくっていた。まずいじゃないか!

「う、うあああ! これは聞いてない!!」


大慌てのウィルソン――って、マジかよ!!


「ウィルソン、今助けるぞ!!」


俺は急いで『爆弾ポーション』を取り出し、投げつけた。威力は控えめにしたので、ウィルソンを巻き込むことはなかった。

衝撃でゴブリンが剥がれていく。


『ムキャアアア!!』

「カイリのおかげで助かったよ! よし、くらえええええ! 必中必殺のファントムブレイズ!!」


ウィルソンは、ハルバードをブン回す。武器から炎が飛び出てゴブリンを燃やし尽くした。って、そんな範囲のある攻撃スキルを持っていたのかよ。すげぇや。


「お疲れ、ウィルソン」
「いやいや、カイリのおかげさ。あの爆弾ポーションがなければやられていた」
「俺、はじめて人の役に立てたかも」
「うん、カイリはもっとレベルアップすれば最強の錬金術師になるかもな」

フェンリル時代ではここまで活躍できなかった。
なんだか強くなっている実感を得られたな。森へ来て良かったかも。

あとはブルーハーブを探す――なんだけど、まだ先にあるようだった。

森の奥は更に危険のようだ。
怖いけど、がんばるしかない。
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