闇の錬金術師と三毛猫 ~全種類のポーションが製造可能になったので猫と共にお店でスローライフします~

桜井正宗

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第15話 最高傑作のホムンクルス

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民家が吹き飛び、跡形もない。
今の俺の爆弾ポーションでもそこまで威力はないぞ。

「カ、カイリさん……逃げてください!」
「やっぱり、爆炎の錬金術師なのか?」

震える口調でヴァルハラはこう断言した。

「……はい、この爆発は紛れもなく『爆炎の錬金術師』です。わたしを襲った時のスキルで間違いないです!!」

そうか、これは爆炎の仕業か。
俺はヴァルハラを頭に乗せたまま距離を取る。

煙の中から人影が見えた。
あれが……?

姿を現す……女!?
というか“少女”だった。

びっくりするほどの美少女だった。

腰まで伸びる赤い髪。
ルビーのような赤色。
赤いドレスのような錬金術師の服。

……予想外すぎた。まさか女の子だとは思わなかった。


「お前が爆炎の錬金術師か」
「……噂が早いのね。そう、わたくしが『爆炎の錬金術師・アシャ』ですわ。以後、お見知りおきを」


アシャ、少女はそう名乗った。
それが彼女の名か。
それにしても、こんな可愛い女の子だとは……。
つい見惚れていると、頭上のヴァルハラが暴れた。

「カイリさん、なにをボ~っとしているんですか! あの方は、わたしとカイリさんを狙っているのですよ!? 敵なんですよ!?」

「そ、そうかもしれないけど……女の子だなんて聞いてない」
「わたしも彼女の姿をまともに見たのはこれが初めてです。いつもはローブを深く羽織っていましたし……」

 そういうことか。
 しかし、こんな少女がヴァルハラを追いかけ回している? どういうことだ。


「アシャと言ったな。君はヴァルハラを狙っているのか」
「ええ、その猫はフォーマルハウトの使い魔――いえ、最高傑作のホムンクルス。人型にも成れるし、不思議な力も持つ。恐らく……中級クラスのスキルまでは“全て”使えるはずですわ」

な……ヴァルハラがホムンクルスだって!?
ただの猫にしか見えない……わけがないか。俺に『全種類ポーション製造』なんて反則級のスキルを与えてくれたんだ。アシャの言うことは正しいのだと思う。

ヴァルハラは確かに人型にもなれたし、ヒールだって使えたし……ただだの猫ではない。
だけど、それ以前に俺の仲間なんだ。
大切な仲間だ。


「だからヴァルハラを狙うのか」
「もちろん。最高位の錬金術師として、その猫は必要不可欠。そいつがいればポーションの製造が楽になるのですから……力で奪うしかないでしょう」

「奪う……ふざけるな!」
「へぇ、そんなに跡形もなく消え去りたいの? いいですわ、容赦なく木っ端微塵にして差し上げましょう」


サシャの瞳が色濃くなったような気がした。その瞬間、ヴァルハラは叫んだ。


「カイリさん、避けて!!」
「へ!?」

 頭上のヴァルハラが体重を掛けてきて、俺は左へよろけた。その次の瞬間、後方で爆発が起きたんだ。


『ドオオオオオオオオオォォォン……!!』


さっきと同じ爆発だ。
え……うそ。
まさか『見ただけ』で?


「そうですよ、カイリさん。あの爆炎の魔術師・アシャの瞳こそが武器なんです。見た場所を爆発させるとんでも錬金術師なんですよ!」

「とんでもなさすぎるよ!!」


見ただけって、そんなの反則だ!
焦っているとアシャは不敵に笑った。


「ふふ。わたくしの力は『エクスプロージョン・アイ』という最強の錬金術のひとつなのですわ。膨大な魔力を使用した後、対象を見ただけで爆発させてしまうので……大変なことになってしまうのです」


大変って……死ぬじゃん。
やばいな、そんな相手と戦うとか無謀すぎる。
見られたら即死じゃないか。

見られる前に倒すしかない……ってことか。
難しすぎ!!

けど、諦めたくもない。


「さすが帝国の錬金術師……やべぇ能力持ちなわけだ」
「そこまで知っているとは、もう消すしかないですわね」


くそ、このままだと爆死だ。
どうすればいい……?

相手は“見るだけ”の一瞬の行為。それを塞ぐには……俺自身の存在を見られないようにするか、相手の視界を奪うしかない。

自身を消すといっても透明人間になる薬とかはない。建物に姿を消しても、建物ごと爆破されるだろう。

なら、相手の視界を奪うのが確実だ。
これだ……!


「聞いてくれ、ヴァルハラ」
「……はい、なんでしょう」
「ヤツの視界を奪う。これしか勝てる方法はない」
「おぉ、名案ですね! その考えはなかったです。でも、どうやって?」

「なあに、目潰しの方法はいくらでもある。一番簡単なのは砂を浴びせるとかな」
「単純で最適な攻撃方法ですね。分かりました、わたしが相手の気を逸らしましょう。ほら、わたしは消される心配ありませんし」

「囮作戦か。いいのか」
「構いません。勝利はカイリさんにあると信じておりますから……では、ご武運を」

しゅたっとダッシュしていくヴァルハラ。猫だから走るスピードはピカイチ。普通の人間では、まず追いつけない。だから出会う前は逃げきれたんだろうな。

「……! ヴァルハラ!」

アシャが食いついた。
その視線は確実にヴァルハラへ。


今だ!!!


俺は地面の砂をすくい上げ、一気に距離をつめる。
だが、アシャもこちらに気づく。


「こ、小癪こしゃくな! わたくしに近づくなんて無理に決まっているでしょう。その前に貴方の身も心も粉々に打ち砕いて差し上げますわ!!」

赤い瞳が濃くなっていく。
魔力が込められている。
そうか、魔力が満タンになるまでは爆発が起きないんだ。これならある程度は接近できる。


「アシャ、お前は完璧ではないな!!」
「――な!! B級錬金術師の分際で!!」

「遅い! くらえ、砂かけ!!」


思いっきり砂を投げつけ、アシャの視界を奪う。


「ちょ、え……砂!? うわっ、痛い! なにも見えない……目が、目がぁぁぁ……!!」


よし、成功した。
ヴァルハラの囮があったおかげで、相手にかなり隙が出来た。俺はその間に自身のシャツを破り、簡単な目隠しを作った。

それをアシャの目元に括りつけた。


「これでもう『エクスプロージョン・アイ』は使えないぞ!!」
「くっ、くぅ……そんな、こんな単純な攻撃に負けるだなんて……わたくしの負けよ」


やった。帝国の錬金術師を負かしたぞ!
これでもうヴァルハラは狙われないはずだ。
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