先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~

桜井正宗

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美人で大人な生徒会長

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爽やかな笑みを浮かべる女生徒がいた。なんで彼女・・がいるんだよ。しかも、なんでウチの学校の制服を……?

「九十九さん……ですよね!?」

サラサラの栗色の髪が特徴的だし、大人な感じとか瓜二つ。ていうか、本人に間違いない。泣きボクロもあるし!! でも、眼鏡掛けてる。結構似合ってるな。

「うん、そう。ごめんね、邪魔しちゃったかな」
「いや……その、九十九さんって大学生ではなかったのですか?」
「いやいや、この高校の三年生だよ。ちなみに生徒会長」

マジか!!
あまりに大人びていたから、俺はてっきり大学生とかフリーターと思っていたよ。てか、生徒会長かよ。知らなかったぞ。
先輩も同じように驚き、目を白黒させていた。

「つ、九十九さん……三年生だったんですね」
「あ~、柚ちゃんと同じ学年だね。まあ、いつも眼鏡で変装(?)してるし、分からないか」

「そ、その……驚きました」
「驚かすつもりはなかったけどね~。ていうか、愁くん……ちょいちょい」

妙な視線を向けられると同時に手招きされる。これは、行った方が良さそうだ。

「先輩、ちょっと九十九さんと話してきます」
「……うん」

心配そうにこちらを見る先輩。まあ、九十九さんだから大丈夫だろう。

少し離れると九十九さんは耳打ちしてきた。

「ねえ、愁くん……さっき柚ちゃんのスカートの中に頭を突っ込んでなかった?」
「――――なッ!!!」

み、見られていたああああああああああ!?

や……やば。

心臓がバクバクだ。……いや、落ち着け。疑問形ってことは確信がないってことだよな。うん、まだ探っているってところだ。

「なんか変なことしていたよね」
「そんなことしていません。それじゃあ、ただのヘンタイじゃないですか」
「え……愁くんってヘンタイじゃないの?」
「真面目な顔して言わんでください。そんなわけないでしょう。俺は至って紳士です」

「へー」

へー…って。
信じていないな! ……当然だろうけど。


「なにもしていませんからね」
「ふぅん。……別にいいとは思うけどね、彼女なんでしょ?」
「そ、そうですけど」
「そっかそっか。じゃあ、奪い甲斐がいがあるね」

「へ……」

「いや、なんでも。じゃあね、愁くん」


九十九さんはくるっと背を向け、爽やかに去っていく。……って、最後なんかとんでもないことを言っていたような。

……まあいいか。

「先輩、お待たせしました」
「なにを話していたの?」
「そ、その……見られていたかもしれません」

「え!?」

「……でも、誤魔化しておきました。たぶん、九十九さんには一瞬見られていたのかも」
「そ、そうなんだ。恥ずかしいけど……でも、いっか」
「いいんですか」
「うん、恋人だもん。堂々としていればいいよ」
「それも――そうですね」

写真を撮られたわけでもないし、九十九さんなら言いふらすこともしない。安心していいだろう。
それより、なにか“奪う”とか言っていたのが気になる。


* * *


昼休みが終わった。
別れ際、先輩は少し心配そうに俺の手を握った。九十九さんとのことが気掛かりなのかな。でも、大丈夫だ。

もう、蜜柑先輩の時のようなヘマはしない。

そんな誓いを心の中で立てて、教室へ。

テストも近いので、そこそこ真面目に授業を受け――耐え凌いだ。

ようやく放課後だ。


「……ふぅ、帰るか」


席から立ち上がると……見知った顔の男が現れた。


「お~っと、まった! 秋永! 僕の名は……」
「小田原!」
「ちょっと惜しい!! けど、ちがーう!! 小野だ、小野!!」

「そうだった。小野だ」
「いい加減、覚えろよ!」
「……すまん、男の名前は特に覚えが悪いんだ」

「なんだそりゃ。まあいいや、それより僕と一緒にWOをやらないか。金を稼ごうぜ」
「断る。俺はもうギルドに所属しているし、彼女とプレイしているからな」

「な……なんだと! ……って、あの和泉先輩とやっているんだな」
「まあな。俺と先輩が付き合っているってことは、もうかなり広まっているんだな」
「有名だぞ。お前と和泉先輩のこと」


そりゃ、普段から二人でベタベタしているからな、嫌でも目立つわけだ。


「じゃ、悪いけど俺は行く」
「仕方ないな。気が変わったら言ってくれ」
「多分な」

俺は小野と別れ、教室を出た。
しかし、珍しく先輩からのライン連絡もなければ……合流する気配もなかった。三年の教室へ行ってみるか。……でも、どこのクラスが聞いていないや。

誰かに聞くのもなぁ。

ふとプールを視界に入れると、先輩と蜜柑先輩らしき人物を見つけた。まさか、水泳部へ?

……行ってみるか。
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