クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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緊急会議決定!! 無人島へ向かうか否か

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 恐ろしい数の着信メッセージが殺到していた。
 みんな俺を頼りたいのは分かるけど、ほぼ全員とかさ……!

 どうしようか悩んでいると、天音が起きて眠たそうに目を擦っていた。

「おはよー、早坂くん。なにしてるのー」
「おはよ、天音。みんなから連絡がいっぱいきてさ」
「そうなの? 見せて」

 俺はスマホを見せた。
 すると天音はなぜか泣き出した。

「ど、どうした!? なぜ泣く!?」
「早坂くん……ホーム画面……北上さんとのツーショットじゃん。なんで、わたしが入ってないのおおおぉぉ……」

 わんわん泣きだしてしまった。いかん、写真を変えるの忘れていた!
 わざとじゃないんだが……ていうか、天音も勝手にホーム画面を見るなよな。

「悪いって。天音と撮る機会がなかったから……」
「じゃあ、撮ればいいじゃん! 裸だって撮らせてあげるよ!?」
「裸はまずいだろ。分かった分かった。あとで三人で撮ろう」
「うん、絶対だからね。約束破ったら許さないからね」

「ああ、約束する。それより、メッセージの方だよ」
「そうだね。みんな困っているんだ。生活が激変しすぎだよね」


 俺たちは無人島から帰ってきてから、なぜか悪い方へ転がっていった。でも、理由はなんとなく分かる。

 世間を揺るがす歴史的ニュースとなった無人島事件。

 生徒の中に共謀者もいたのだから、無関係であるはずの他の生徒にも変な噂が立ったりしていた。

 特に生存者である俺たちは、注目の的だった。
 名前とかは伏せられていたが、島に眠る財宝を巡って殺し合いがあっただの大々的に報道されていた。

 そんな情報が世の中に出回れば、ネット掲示板は大騒ぎ。お祭りの大炎上だ。

 過去に類を見ない勢いでスレを消化しているらしく、今の橘川を中心に憶測が飛んでいるようだ。それと倉島。

 アイツは黒い世界で有名人すぎた。

 故に、反社会勢力との繋がりが暴露されて、これが余計に火つけとなってしまった。

 橘川と倉島はネット民の玩具にされていたが、そのついでに俺たちも怪しまれていた。完全なおまけで――だが。


「まさか避難生活を余儀なくされることになるとはな。無人島生活よりはマシだけどさ」
「学校に脅迫の電話やメールも来てるんだってね」


 天音の言う通り。
 橘川と倉島のせいで、学校はメチャクチャになった。本当に無関係な一年や三年も困り果てているほどだ。

「財宝を狙って、俺たちを特定しようとしているヤツ等もいるからな」
「うん。怖いよね」

 特に天音はアイドルで有名人だ。
 ウィンターダフネの活動こそ休止しているが、これもまた彼氏が出来ただの、無人島事件に巻き込まれただの憶測・・を呼んでいる。


 ――まあ、大体が本当だけどな。


 そんな話をしていると、北上も目を覚ました。
 ポケポケした表情で眠たそうだ。


「おはよ、北上さん」
「おはようございます、啓くん。それに、天音さんも」

 天音はさっきのことを根に持っているのか、少し複雑そうに挨拶をした。

「おはよう。起きたところで、今後について話さなきゃ」

 体を伸ばし、リビングへ向かう。
 天音がコーヒーを淹れてくれるようで、俺はその間に北上に話を振った。

「なあ、北上さん。みんな困っているみたいだ」
「でしょうね。あたしも困っていますし」

「島に戻るしかないのか。せっかく戻ってこれて、快適な生活を送れているのに……わざわざ火中の栗を拾いに行かなくとも」

「大丈夫ですよ。今度は万全の体制で向かうワケですから」

「とはいえ、装備を整える資金もないだろう」

「こんなこともあろうかと、クラウドファンディングをしておきました」
「なぬっ!?」


 スマホを見せられ、俺はその内容に驚愕した。
 北上は一ヶ月も前からクラウドファンディングをしていたのだ。

 しかも『現役女子高生がトレジャーハントします! 財宝を分け合いましょう!』とか、そんなタイトルで。まてまて、こんなんで支援者パトロンなんて現れるのか?


 だが、意外にも目標達成額である一千万円を突破していた。


「ふふっ」


 ドヤ顔で俺を見据える北上。
 くそう、ここまで用意周到だったとは……恐れ入った。


「よく賛同者がいたな。宝島のことなんて話せないだろう」
「女子高生のパワーを舐めないでください、啓くん。顔こそ隠していますが、制服姿で写真をアップすれば集客力抜群なんですよ」

 世の中にヘンタイは星の数ほどいるからな。
 そりゃ、こんな可愛い女子がトレジャーハントのクラウドファンディングしていたら、支援したくなるわ。

「凄いな。この資金で船を借りるのか?」
「ええ、凄い船を借りる予定です。装備も既に手配済みです」

 もう行く気満々!
 そうか、北上は最初から戻る気だったのか。

「俺と天音、みんなも同行すべきかな」
「そうですね、人手は多い方がいいです。大伊さんともう一人、二人いれば嬉しいですね」

 となれば、千年世とか桃瀬あたりだろうか。琴吹と草埜も大変だからなぁ……。


「分かった。一度、みんなを招集しよう」
「それがいいでしょう。来れない人はオンライン会議で。スマホでも出来ますから」
「ああ、ズームゥね」


 まずは全員に連絡だな。
 俺はメッセージアプリのグループラインで呼びかけた。

 すると、ほとんどが天音の家に来ることになった。

 ただし、八重樫と篠山、野茂はオンライン会議での参加になった。八重樫は入院中らしいからなあ。

 あの無人島生活で足とか腰に病気を患ったようだ。

 篠山はひきこもり中らしい。そんな感じには見えなかったけど、世間が荒れている今は家に閉じこもるしかない。

 野茂は青森の親戚の家にいるらしく、しばらく戻れないようだ。


「おまたせ~、コーヒー淹れてきた」
「ありがと、天音。こっちも話が進んだ」
「どうなった?」


 俺は緊急会議を開催すること、
 八重樫、篠山、野茂以外が家に来ることを伝えた。


「――というわけだ。八重樫さん、篠山さん、野茂さんはオンライン会議で参加する」
「なるほどねえ。まずは話をして決めるってわけね」
「ああ、ウチを使っちゃうけど……いいかな」

「構わないよ。このマンションは、ある意味では早坂くんにあげようと思っていたし」
「はい!?」

「パパが便宜を図ってくれてね。早坂くん名義にしてもいいってさ」
「な、なんだって~…」

 予想外すぎるサプライズプレゼントに、俺は度肝を抜かれた。天音は本当に天使だ……。
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