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第11話 魔神と世界終焉

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 子供のようだけど、フォースよりは背が少し高い少女。
 いや、アレでも大人の女性・・・・・である。

 スラッとした足を組み、優雅に紅茶を味わっている。

 薄い布切れのようなワンピースに身を包み、肌の露出をギリギリにしている。だが、完全なるロリ体型。それが逆に危険度を上げていた。
 金色こんじきの髪に黄緑色のアクセサリーが豪華にえられており、神秘性を引き立たせていた。そして、あのとがった耳。エルフの証・・・・・である。


 マスター・グレイス。


 生粋きっすいのエルフにして、フォースの師匠マスターである。
 時に厳しく、時に優しく……いや、九分九厘くぶくりん厳しいけど。

「…………」

 マスターは目と閉じ、沈黙。
 紅茶を楽しみ、相席しているフォースには見向きもしなかった。

 いや、片目だけ開けた。

 フォースと同様に、エメラルドグリーンの瞳が美しい。


「たわけ」


 そう一言だけ厳しい口調を向けた。


「…………っ」


 びくっとフォースは体を揺らした。
 ありゃ……おびえているぞ。

「鮮度が落ちておる。なんじゃ、そのショボくれたソウルフォースの輝き。鍛錬たんれんおこたったな……ふむ、これはヒドイ。最近では、エクストラボスに対して、大魔法を放ったが仕留しとめられなかったか。ダメじゃな。
 はぁ~……フォース、お前はどうして、ユメに甘えてばかりなのじゃ。それでは、立派な極魔法使いアルティメットウィザードにはなれんぞ」

「も……もうなってるし」
自惚うぬぼれる出ない。フォース、お主はまだまだヒヨっ子じゃ」

 ズバっとグレイスは言い切った。
 さすが、師匠マスター。フォースに対して辛辣しんらつである。

「それに、ユメ、お主もじゃ」
「え……俺も!?」

 ああ……ついに俺にも飛び火してきたよ。


「なぜ、もっと遊びにこんのじゃ!! 一人はつまらんぞ~!!」


 ――と、グレイスは、ソウルフォースで飛び跳ねてくると、俺に抱きついてきた。いや、来るな。


「うあぁぁぁあ! マスター、やめてくださいよ~」
「お前もうつけじゃ。風の帝国キリエを追放され、国を作るとはな」
「さすがマスターです。そこまでご存じと――はぁ!? ちょ、俺の腹筋を指でプニプニしないでくださいッ! くすぐったいですよ」

 見かねたネーブルが引きはがしてくれた。

「グレイスさん。ユメが困っているでしょう」
「おお、ネーブル。久しぶりじゃな」

 グレイスは、今度はネーブルを襲った。

「あとは任せた!」
「ちょ、ユメ! そんな~~~!!」

 ふむ、ネーブルとグレイスが……いや、グレイスが一方的にネーブルに抱きついているんだけど、すごい光景だ。眼福である。

「おっと、眺めている場合じゃないな。フォース、マスターに会いたかったんだろう。ほら、挨拶とかさ」
「……うん」

 すっかり小さくなっているフォースの背中を俺は押した。

「マ、マスター」
「なんじゃ、フォース」

「た……ただいま」

 その一言で一瞬、時が止まった。

「フォース。お主……ま、まあよかろう」

 マスターはネーブルから離れ、咳払いした。で、テーブルに戻った。

「……少し取り乱したのう。さて、フォース。皆を連れてきたのは、魔神・・について聞きたかったのもあるのじゃろう」

 コクっとフォースはうなずく。
 さすがだ……そこまで考えてくれていたか。

「――そもそも、今までどのような形であれ明確な『敵』はおった。光と闇があるように、善があるなら悪が。そう、この世はバランスなのじゃよ。だから、悪を根絶やしにするなど、不可能に近い。むしろ、そんな世界は虚無に等しい。結局のところ戦うしかないのじゃよ」

 それは、マスターがよく口癖のように言っていた世界のことわりである。

「で、今回は『魔神』じゃ。魔王が倒された――和解したことによって、出現した謎の人物……あるいはモンスターかクリーチャーか。読み取れたのはひとつ・・・

「ひとつ?」


「うむ……『世界終焉・・・・』じゃ」


「………………」

「なんだって!? 世界終焉――ってそりゃ、世界が終わるってことか」
「そうじゃ、魔神が世界を滅ぼす未来がえた。ただし、まだ可能性の段階。運命とは時に変わるものじゃ。世は不変ではない。可変である。
 ユメ、未来はお主らの手の中ということじゃ」

 真っすぐな瞳で俺をみつめるマスター。
 そういうことか。だったら、運命にあらがうしかないよな。


「……さあ、話は以上じゃ。寂しくなる前に国へ帰るがよい」


 グレイスはてのひらを俺たちに翳《かざ》す。

「まって……まだ」

 まだそんなに話をしていないと、珍しくフォースがマスターに手を伸ばそうとしたが――すでに家だった場所は、謎空間に包まれていた。

「……ひゃっ!!」

 驚き、動揺するキャロルは引いていた。
 むしろ怖がって、俺にすがりついてきた。

「キャ、キャロル……くっつきすぎだ!」

 だめだ。怖がって離れようとしない。いや、むしろラッキーだけどさ!
 俺、ネーブル、ゼファ、もちろんフォースはこの謎空間現象は経験済みなので落ち着いていたが。

 ま、これ『ワープ』なんだけどな。

 てか、いつの間にかゼファとネーブルも負けじとくっついてきた。

「お前たちな……まあいいか」

 とりあえず、ネーブルの胸を――

つかもうとするなッ!!」

 手の甲をつねられた。チッ……。
 じゃあ、ゼファの腰で我慢しておこう。

「ユメ様、支えて戴き、ありがとうございます」

 そう耳元でささやかれたので、俺は超嬉しかった。


 ――さて、到着だ。


 視界は白一色に染まり――そして。


 俺たちは『国』へ帰ってきた。
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