元勇者は魔力無限の闇属性使い ~世界の中心に理想郷を作り上げて無双します~

桜井正宗

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第100話 ありがとう

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 俺はずっと覇王が黒幕だと思っていた。
 だけど、それはとんだ勘違いだった。全部、アザトースが思いのままに操っていたんだ。この世界でさえ。

「……アザトース。お前の狙いは俺か」
「もちろん。あのような組織は何かと便利だったからな。あの愚かしい権力者共を使い、お前をここまで肥えさせたのだ。この時点でお前は成熟し、極上となった……より旨味が増し、食べ頃となったのだよ」

「この為に、散々やらかしたわけかよ」

「そうさ。あの覇王でさえ、私の操り人形だ。以前に言った通り。最初に襲わせたのは幻影。今、闇の覇国アニュスに縛り付けにしているのが本物でね、ナイアルラトホテプはずっと我が手中に収めていたわけさ」

「全部、お前の思惑通りってわけか……」

「いや、想定外もあった。テスラの裏切り。これは読めなかった。だが、私は常に用心深くてね、儀式のプランを二つ用意しておいたのさ。それが『ジークムント計画』と『プランD』だ。……言ってしまえば、あのアインスでさえ、私の操り人形だった。
 ほれ、見てみるがいい、あのアインスの姿を……」

 よく目を凝らしてみれば、アインスがモコモコと膨れ上がり――弾け飛んだ。……うそだろ、そんな……!

「アレは、確かに裏世界の最高権力者だった。ヤツは私に夢を語り、願った。だから応えてやったのさ。だが、最期はああなった。これは、言うなれば代償。
 散々、組織を動かし、マリア海溝にシェルターも作った。それだけではない、魔王や魔神を召喚したり、この私は何でも願いを叶えてやった。しかし、負債は膨れ上がる一方でね。いい加減にうんざりしていたところさ。だから、ロスカットしたわけだ」

「そうかよ……。でも、アザトース。お前は最初から全て奪う気でいたんだろ?」


「……フフフ、その通り。我は世界であり、混沌。この世を支配する者。さあ、ユメ……お前は特別だ。ただ殺すのは惜しいくらいだ。仲間を捨て、全てを捨て、私のモノになれ……。私の一部となるのだ。それでお前の夢は果たされる……!」

「黙れ……」

「この手を取れ、ユメ」

「黙れよ……。このクソがああああああああっ!!!」


 アザトース、ヤツこそが全ての元凶だ。
 今まで他人に成りすまし、あの覇王にすらなりすましていた。


 ふざけるなぁぁ!!!!!!



『――――イベントホライゾン!!!!!』



「……愚かな選択をしたな、ユメ」


 不気味に笑うアザトースは、闇の極解放ダークフォームを爆発的に展開させるや、ほんの一瞬で俺の目の前に現れ――


「ユメ、お前程度の窮極の闇では、我が『混沌』にはかなわんぞ……」
「知るか、ボケ!!!」

 アザトースは手を向けてくる。


『フィジカル・コスモロジー』


 そうヤツがつぶやく頃には、俺の身体半分が吹き飛んでいた。


「がああああああああああああああッ!!!!!!!」


 まず、このままだと全部持ってかれる……!!!


「ユメ!!!」


 フォースが駆けつけてこようとする。


「くるな……!! お前たちを守るって約束しただろ……! こんなモン!!! らあああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 歯を食いしばり、俺は残った左腕に『ダークエンチャント』を付与。その左拳をヤツにお見舞いした。


「―――ユメ、きさまあああああ、がああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!」

 まともに拳を頬に受けたアザトースは吹っ飛び、地面にめり込んだ。
 俺は半身を失い、地面に伏せた。


「………………がっ、ちくしょ……」


「ユ…………ユメ、そんな! 体が……」
「すまん、フォース。アザトースは混沌の中の混沌……さすがに強すぎる」

 まずい……闇に飲まれかけている。

「ユメ様!!! グロリアスヒールを!!」
「た、助かる。ゼファ……ぐっ」

 だめだ。グロリアスヒールも効いていない。

「そんな……わたくしのヒールが……。でしたら、グロリアスサクリファイスを――」
「だめだ。ゼファ、それ以上やったら今度こそ二人とも死ぬ。だから、ダメだ」
「そ、それでも……」

 項垂れるゼファは、絶望していた。

「ユメ、あんた……」
「ネーブル。悪い、やっちまったよ」
「馬鹿……そんな諦めたような表情すんな。ユメ、あんたらしくない!」

 ゼファ同様、ネーブルもまた悲しみに暮れた。

「……ユメ、これでは……私たちはどうすれば……」
「テスラ、いや、俺はまだ少しなら戦える。だから、その後は頼む」
「…………っ」

 涙をこらえているのか、テスラからそれ以上の言葉は出なかった。


 残りの力は、わずかだ。


 これで決める。


「…………のれ、おのれ……。ユメ、私にここまで傷を負わせたのは、お前が初めてだ。だが、逆にそれが嬉しくもある。この私を超えるものは、そうはいなかったからな。しかし、私は『混沌』であるがゆえ、不死身に近い。この通り、お前から受けたダメージも回復する。一方、お前は私の全て・・を受けた――すなわち、お前は死ぬのだ」


 ゆっくり立ち上がるアザトースは、ほとんど無傷になっていた。
 なんて回復速度だ。バケモノめ。


「せめてもの慈悲じひだ。仲間と共に滅べ。これで、私の儀式は果たせれる……。いただくぞ、お前の『夢』を――滅びよ!!!」


 てのひらを向けてきた。
 ……足掻あがくしかない。最後まで、諦めちゃだめだ。


「アザアアアアアアアトオオオオオオス!!!!!!! これを食らいやがれえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!」


 全身全霊を懸けた、最後の怒りと魂の――



『ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール――――!!!!!!!!!!!!』


「そんなものォ!!!!! ――――グルーパラドックス!!!!!!」


 ――――――ま、まずい……。

 俺の闇が……色を変えていく・・・・・・・・…………。

 黒い闇は、白い闇へ。


 崩壊だ。



 ――――…終わりだ。



 …………これで、俺の夢は…………



<――――諦めるのか。ユメ――――>


 え…………。


<私が知る限り、お前は諦めの悪いヤツだと思ったがな>


 あんた……この声、覇王・ナイアルラトホテプか……。あんたは、アザトースによって動けなくされていたんじゃなかったのか……?


<お前のおかげだ、ユメ。アザトースにダメージを与えてくれたおかげで、隙が生まれたのだ。だから、ほんの僅かな時間で脱出してきたのだ……。ありがとう、私はやっとお前に謝罪が出来る……>


 な、なにを言っているんだ、あんた!!


 迫りくるグルーパラドックスを前に、覇王・ナイアルラトホテプは立ちはだかった。……なぜ!! なぜ、俺を守るような動作を!!


 そこで、覇王の姿が変わっていく。


<ユメ……息子よ!!! この愚かな私を許してくれ……アザトースと契約し、この世界へ送ったこと。母さんたちを魔王にしてしまったこと……すまなかった!! だが、お前には幸せになって欲しかったんだ……私の夢をお前に託した。だから、あとはお前自身の夢を叶えるんだ。あとは頼んだぞ、我が息子よ!!!>


「父さん…………そんな、父さああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!」



<アザトオオオオオオオオオオオス!!!
 私の究極の夢、受け取れええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ……………!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!>



 ――――なにも、みえなくなった。


 爆発が起きたのかさえ分からない。


 真っ白。


 闇ではない。


 ただ、あたたかくて……。

 ……あぁ、俺は……ずっとずっと父さんに守られていたんだ、と。
 そこでようやく気がついた。


 …………ありがとう。
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