上 下
113 / 177

第113話 小さな刺客

しおりを挟む
 残りひとりの選定は、キャロルに任せて俺たちは拠点を出た。

 その途端――小さな子供が俺にぶつかってきた。


「おっと……!」


 子供は走り去ろうとしたのだが、フォースが手をかざしてまさかの『ソウルフォース』を発動。子供の動きを止めていた。いきなりだな。

「フォース、子供相手になにしてんだよ。ただ、ぶつかって来ただけだろう。離してやれ。可哀想だ」
「あの女の子は、ユメの財布をった」

「え!?」

 マジ?
 気になってポケットを確認すると、確かに財布は消えていた。

 ため息をつくネーブルが、女の子のところまで向かい、俺の財布を取り上げた。マジで取られていたのかよ。スリの達人かよ。

「おいおい、まったく気づかなかったぞ。どーなってんだ」
「スキルでしょー。たぶん、かなり特殊・・・・・よ」
「そうなのか、ネーブル」
「多分ね。ねえ、あなたどうしてユメの財布を盗んだの。ダメでしょ、これは立派な犯罪よ。人のモノを取っちゃダメって教わらなかった?」

 ネーブルは子供にしかっていたのだが――、


「ふふ、もう戦いは始まっているのよ。敵である以上、手加減はしない」


 子供は笑うとソウルフォースを何かの力で解き、後退した。
 ……コイツ、普通の子供じゃないぞ。


「キミ、子供にしては強すぎるな」

 俺がそう問うと、

「だって、子供じゃないし。私はもう立派な大人の女性よ。私はね、小人族なの。今の姿はスキルで一時的にこのサイズになっているだけ。実際はもっと小さいの」

 ケラケラ笑う女の子は、またもや何かのスキルを発動し――更に小さくなった。どうなってやがる、ただ小さくなるだけじゃなさそうだぞ。

「……消えた!」
「ユメ、消えたわけじゃない。米粒サイズ・・・・・にまで小さくなった」

 フォースが補足を入れてくれた。そうか、そういう事か。なんてスキルだ。米粒サイズだって!? そんなの地面を見渡していたら日が暮れちまうよ!

 なので、俺は……

「よし、みんなジタバタ暴れろ。踏みつぶすぞ」
「ちょ、ひど!」
「いやだってよ、探すの面倒じゃん」
「あんたね……」

 ネーブルはドン引きしていたが、俺は構わず地面を踏みまくった。


「おりゃあああああああ!!!」


「うわああああああ、やめて!」


 あ、元に戻った。割と近くにいたんだな。


「くっ、極小サイズで戦うのは本番ね。本当は強いんだから! せめて、そこの魔法使いだけでもグニャグニャにして倒す……!」
「グニャ……? やめとけ。そこの魔法使いは、ただの魔法使いじゃないぞ」
「知ってる。極魔法使いアルティメットウィザードでしょ。そんなの勝てるわけないじゃん! やめた! じゃ、そっちの金髪のお姉ちゃんにする」

 心変わり早え~!

「わたし? 子供と戦うのは気が引けるわね」
「でも、出場するみたいだぞ」
「そうよね。じゃ、ビリビリして焦がしましょうか」

「ビ、ビリビリ!?」

「ネーブルは、超初心者スーパービギナーの雷使いだからな。そこらの初心者と一緒にしない方がいいぞ」


「……くっ、今日のところは勘弁してあげましょう!! さようなら!! あと、お財布盗んでしまってごめんなさい!!」


 子供は逃げ出した。
 なんだったんだよ、あれは。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:1,235

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

青春 / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:612

異世界の無人島で、ちょっぴりヤクザ(?)なサバイバル!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:745

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:400

聖騎士殺しの異世界珍道記〜奴隷を買ったらお姫様だった件〜

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:265

追放された引退勇者とメイド魔王のスローライフ

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:9

処理中です...