156 / 177
第156話 トールダンジョンへ向かえ
しおりを挟む
――翌朝。
宿屋のベッドで目を覚ませば、重みを感じていた。――ああ、分かっている。どうせ、フォースとゼファが潜り込んでいるんだ。
「おはよー」
「フォース……」
「おはようございます、ユメ様」
「ゼファまで……」
各々のベッドがあるというのに、これだ。毎晩これ。これでは広々とした部屋を取った意味がない気がするが――まあいいか。二人とも幸せそうだし、俺も幸せだった。
――で、嫌な予感がした。
「ふぁぁ……おはよー、ユメ…………って、なにこれええええええええ!?」
あー、やっぱり。
ネーブルが俺の状況を見て驚いていた。
「お、おはよう、ネーブル」
「わわわわわわあ……っ! フォースちゃんもゼファさんも何してるの!? ユ、ユメにそんなベッタリ……」
顔を真っ赤にするネーブルは、ぷるぷる震えていた。そりゃ、こんな現場を目撃したらショッキングすぎるわな。なんだか浮気の現場を見られた気分で、ちょっとイヤだ。
「なにって、添い寝」
フォースが淡白に答える。
「そ、添い寝って……そこまでする?」
「する。貴女にはここまでの覚悟ないでしょ」
おや、ちょっと棘のある。
「……ううっ。そ、それは……だって、まだユメの事とか、みんな事……あんまりよく知らないし、信用していいのかも分からないし」
「…………」
フォースの瞳がキレ気味っぽい。
「落ち着けって、フォース。ネーブルをイジメるな。いや、すまなかった。ネーブル、時間はある。ゆっくりお互いを知っていこう」
「……う、うん」
◆
自分もだが、皆を着替えさせて朝支度を済ませた。朝食もバッチリ食って、これでダンジョンへ行けるな。
目的はひとつ、ネーブルの『覚醒』だ。
昨晩、フォースはこっそり俺に耳打ちしてきた。
『ネーブルは、ある加護を持っている。でも、それはまだ開花に至っていない能力。その力を覚醒させるには、初心者クラスを超えるしかない。方法は、ただひとつ。この風の帝国近辺にある『トール』というダンジョンへ向かい、試練を受ければいい。それで彼女は目覚める』
――というわけだった。
「ネーブル、キミの実力も確認させてもらう。いいね?」
「わ、分かったわ。魔法も使えない初心者だけど、打撃とかは出来るから……! ま、任せて」
顔色が緊張一色だ。
うーん、ちょっと心配だ。
◆
【 風の帝国 - 草原フィールド 】
「この草原フィールドは、初心者向け。まずは、この場所で実力を見せてもらう。あそこにいるグリーンスライムを倒してみてくれ」
「了解……」
引き攣った顔で向かって行くネーブルは、拳を握って――スライムに対し、打撃を――。
ポヨ~ンと弾かれて、ノックバックした。
ネーブルが。
「きゃぁぁぁッ!」
「ちょ、嘘だろ!」
スライムすら倒せないのか。
これは参ったな。
「なあ、ネーブル。戦闘経験はあるんだよな?」
「あっ……あるわよ。スライムくらい倒せるわよ。今のはたまたまよ」
「たまたまねぇ」
「……ごめん。実はずっと荷物持ちだった……。あまりに非力だから、雑用ばかり……」
そういう事か。
今まで散々な扱いを受けていたようだな。ネーブルは美人だけど、やっぱり最後にはお荷物認定され、追放されてしまっていたのだろうな。う~ん、なんとかしてやりたい。
「いいさ、これから戦闘経験を積んでいけばいい。超初心者になる為にな」
「見捨てないでくれるの?」
「当り前さ、キミを最強にしてやる」
「……ありがとう。わたし頑張るよ。諦めない。絶対に諦めない」
泣きそうになりながらも嬉しそうにネーブルは、微笑んだ。うん、本人が言っていた通り、諦めない気持ちは強いみたいだな。
「その心意気しかと見せて貰った」
「え……」
俺は、フォースとゼファに合図を送った。
「……ユメの指示なら仕方ない」
フォースはいくつもの補助魔法を展開。
「グロリアスブレッシング&アジリティです……!」
ゼファは支援魔法を掛けてくれた。
これで能力補正がグンが上がった。
「わぁ、なにこれ……力が湧き出るようよ。これが極魔法使いと聖女様の力……なの」
「そうさ、これが仲間の力だ。行こうか、トールダンジョンへ。そこでネーブルの力を覚醒させる」
「わたしの……力を……。スーパービギナークエストって事なのね」
「ああ、お前の為に行く。いいな」
「ありがとう……本当にありがとう。みんなにきっと迷惑を掛けるだろうけど……よろしくお願いします」
フォースはクールに「うん」と頷き、ゼファは優しく「ヒールはお任せ下さい」と笑った。フォースのヤツ、素直じゃないが返事はしているな。
向かうはトールダンジョン。
――だが、そこは魔王軍幹部が支配しつつあるという風の噂もあった……。一筋縄ではいかないかもな。でも、いいぜ。この俺がぶっ倒す。
宿屋のベッドで目を覚ませば、重みを感じていた。――ああ、分かっている。どうせ、フォースとゼファが潜り込んでいるんだ。
「おはよー」
「フォース……」
「おはようございます、ユメ様」
「ゼファまで……」
各々のベッドがあるというのに、これだ。毎晩これ。これでは広々とした部屋を取った意味がない気がするが――まあいいか。二人とも幸せそうだし、俺も幸せだった。
――で、嫌な予感がした。
「ふぁぁ……おはよー、ユメ…………って、なにこれええええええええ!?」
あー、やっぱり。
ネーブルが俺の状況を見て驚いていた。
「お、おはよう、ネーブル」
「わわわわわわあ……っ! フォースちゃんもゼファさんも何してるの!? ユ、ユメにそんなベッタリ……」
顔を真っ赤にするネーブルは、ぷるぷる震えていた。そりゃ、こんな現場を目撃したらショッキングすぎるわな。なんだか浮気の現場を見られた気分で、ちょっとイヤだ。
「なにって、添い寝」
フォースが淡白に答える。
「そ、添い寝って……そこまでする?」
「する。貴女にはここまでの覚悟ないでしょ」
おや、ちょっと棘のある。
「……ううっ。そ、それは……だって、まだユメの事とか、みんな事……あんまりよく知らないし、信用していいのかも分からないし」
「…………」
フォースの瞳がキレ気味っぽい。
「落ち着けって、フォース。ネーブルをイジメるな。いや、すまなかった。ネーブル、時間はある。ゆっくりお互いを知っていこう」
「……う、うん」
◆
自分もだが、皆を着替えさせて朝支度を済ませた。朝食もバッチリ食って、これでダンジョンへ行けるな。
目的はひとつ、ネーブルの『覚醒』だ。
昨晩、フォースはこっそり俺に耳打ちしてきた。
『ネーブルは、ある加護を持っている。でも、それはまだ開花に至っていない能力。その力を覚醒させるには、初心者クラスを超えるしかない。方法は、ただひとつ。この風の帝国近辺にある『トール』というダンジョンへ向かい、試練を受ければいい。それで彼女は目覚める』
――というわけだった。
「ネーブル、キミの実力も確認させてもらう。いいね?」
「わ、分かったわ。魔法も使えない初心者だけど、打撃とかは出来るから……! ま、任せて」
顔色が緊張一色だ。
うーん、ちょっと心配だ。
◆
【 風の帝国 - 草原フィールド 】
「この草原フィールドは、初心者向け。まずは、この場所で実力を見せてもらう。あそこにいるグリーンスライムを倒してみてくれ」
「了解……」
引き攣った顔で向かって行くネーブルは、拳を握って――スライムに対し、打撃を――。
ポヨ~ンと弾かれて、ノックバックした。
ネーブルが。
「きゃぁぁぁッ!」
「ちょ、嘘だろ!」
スライムすら倒せないのか。
これは参ったな。
「なあ、ネーブル。戦闘経験はあるんだよな?」
「あっ……あるわよ。スライムくらい倒せるわよ。今のはたまたまよ」
「たまたまねぇ」
「……ごめん。実はずっと荷物持ちだった……。あまりに非力だから、雑用ばかり……」
そういう事か。
今まで散々な扱いを受けていたようだな。ネーブルは美人だけど、やっぱり最後にはお荷物認定され、追放されてしまっていたのだろうな。う~ん、なんとかしてやりたい。
「いいさ、これから戦闘経験を積んでいけばいい。超初心者になる為にな」
「見捨てないでくれるの?」
「当り前さ、キミを最強にしてやる」
「……ありがとう。わたし頑張るよ。諦めない。絶対に諦めない」
泣きそうになりながらも嬉しそうにネーブルは、微笑んだ。うん、本人が言っていた通り、諦めない気持ちは強いみたいだな。
「その心意気しかと見せて貰った」
「え……」
俺は、フォースとゼファに合図を送った。
「……ユメの指示なら仕方ない」
フォースはいくつもの補助魔法を展開。
「グロリアスブレッシング&アジリティです……!」
ゼファは支援魔法を掛けてくれた。
これで能力補正がグンが上がった。
「わぁ、なにこれ……力が湧き出るようよ。これが極魔法使いと聖女様の力……なの」
「そうさ、これが仲間の力だ。行こうか、トールダンジョンへ。そこでネーブルの力を覚醒させる」
「わたしの……力を……。スーパービギナークエストって事なのね」
「ああ、お前の為に行く。いいな」
「ありがとう……本当にありがとう。みんなにきっと迷惑を掛けるだろうけど……よろしくお願いします」
フォースはクールに「うん」と頷き、ゼファは優しく「ヒールはお任せ下さい」と笑った。フォースのヤツ、素直じゃないが返事はしているな。
向かうはトールダンジョン。
――だが、そこは魔王軍幹部が支配しつつあるという風の噂もあった……。一筋縄ではいかないかもな。でも、いいぜ。この俺がぶっ倒す。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる