無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗

文字の大きさ
9 / 38

褒美は『辺境伯』!? ボス撃破を目指せ!

しおりを挟む
 階段を降りていく。
 地下一階から雰囲気がガラリと変わり、視界もあまり良いとは言えなかった。ここから先がダンジョンなのか。

「ふぅん。地下だから狭いかと思ったけど広いな」
「はい、天井も高いですね。ゴーレムサイズに合わせているのでしょうか」
「かもな。それで、どんどん地下を目指せばいいのかな」
「えっ、ボスモンスターを倒しにいくです?」

 キョトン顔でローザは、やや困惑。

「行ければな。ただ、ローザを守って行かなければならないから、大変かもな」
「わたしのことはお気になさらず。これでも聖属性の攻撃スキルもあるんですから、自分の身くらい自分で守れますっ」

 そういえば、俺を助けてくれた時に使っていたな。あの十字の光……アレか。確か『ホーリークロス』だったか。
 けど、ローザはなんか危なっかしいっていうかな。うん、コイツは俺が守るか。

「いや、前衛は俺に任せろ。ローザは、後方支援を頼む」
「えっ、でも」
「施されたら施し返すって言うだろ」
「それってつまり、わたしを守ってくれるってことですよね!?」

 ローザは、目を星のようにキラキラ輝かせる。そんな見つめられると照れるって。俺は視線を合わせられなくなって、周囲を見渡す。ちょうどいいところに!


「おぉ! あんなところに人間ひとが座ってるー! なんだろう、アレ~」
「アビスさん、恥ずかしがり屋さんですね! でも、そういうところも可愛いですっ」

 なんかボソボソ言って俺の後をついてくる。それにしても、あの岩陰に座っている人はなんだ?

 歩いて近づくと、通路の端に店を出している人がいた。


「あの~。こんなダンジョンで何やってるんです?」
「いらっしゃい。僕は、このダンジョンの地下一階で『露店』をしているのさ。商人なんだよ」

「商人さんがこんなところで露店? 危険すぎる気が」
「いやぁ、大丈夫だよ。地下一階には『ゴーレム』しかいないし、足も遅いし、逃げ切れるから」

 そういう問題なのか。
 随分と余裕があるなあ。

 それにしても『露店』ね。

「なんでこんな危険地帯でわざわざ?」
「普通はダンジョン前でするものだけどね。けど、僕はレベリングも兼ねているからさ。商売はついで。副業さ。でも、これが意外と儲かるんだ。ほら、このメテオゴーレムダンジョンって『宝箱』が沸くだろ? あれの中身を拾って売っているのさ」

「あ~、なるほどね」

 そうやって生計を立てているんだ。
 露店は、いろいろ売っているみたいだけど、どうやって覗けばいいんだか。悩んでいると、ローザが耳打ちしてきた。


「アビスさん、露店を見たいんですか?」
「ちょっと気になっただけ。まあ、今はいいや」
「そんな事言わず、少しだけ見ましょうよ。わたしも気になりますし」

「……どうやって見るんだ?」
「教えますよ。いいですか、まずは露店の前に立ちます」

「おう」

「そしたら、どちらの指でも構いません。人差し指で品物の近くを押すんです。すると――!」



【販売リスト】
・レッドポーション 200ベル
・レッドポーション改 1,000ベル
・ブルーポーション 5,000ベル
・ゴブリンの爪 500ベル
・メデューサの頭 200,000ベル
・錆びた指輪 1,000ベル
・F級シューズ 100ベル
・B級フラワーリボン 300,000ベル 
・A級オークシールド 5,600,000ベル
・ラーズグリーズ社製釣竿 500,000ベル
・エクサニウム 50,000ベル

【購入】【取引中止】



 なんか出てきた!
 これが『露店』なんだ。
 この商人さん、いろんな珍しいアイテムを売っているんだなあ。見たことないものばかり。


「ありがとう、参考になったよ」
「いいよいいよ~。欲しくなったらいつでも声を掛けて。一階にいるからさ」


 俺は、商人さんに別れを告げる。


「それじゃ、邪魔した」
「ああ、待った! お兄さん」
「ん?」

「二人は、ボス攻略まで行くつもりかい?」
「ああ、行ければね」
「本当かい!? お客さん、余計なお節介かもしれないけどさ、言っちゃ悪いけど装備がとんでもなくボロボロだよ。それで行くのは無謀むぼうだと思うけど……」

「そう見えるだけなんで大丈夫だよ、商人さん」
「? どういうことだい? まあいいや、でもね、ボスモンスター『ギガントメテオゴーレム』には気を付けて。噂じゃ、大手ギルドを全滅させた・・・・・って話だよ」

「……へ」

「リディア共和国の大手ギルドさ。確か、二十人規模だったかなぁ……騎士系ジョブが十人、後衛に魔術師ウィザード系も五人、あとは賢者とか錬金術師アルケミスト、最上級職のルーンプリーストもいたってさ。にもかかわらず、全員戻らなかった」


 その恐ろしい情報を耳にして、俺は頭が真っ白になった。嘘でしょ!

 初心冒険者レベルの俺でも、その恐ろしさは理解できた。やべぇじゃん。


「えっと、そんなのに強いのか、ボスモンスター」
「ああ、その大手ギルドには、ケイオス帝国からわざわざ加入したS級ランクの上級冒険者もいたらしい。貴族だったようだけどね。でも、やられちまった」

「マジっすか」

「でな。ケイオス帝国は、その貴族を随分ずいぶんと気に入っていたらしい。すっげー権力とか領地を持っていた辺境伯だったとか。んで、今は『ギガントメテオゴーレム』を倒すと、その褒美に“爵位”が与えられると大騒ぎ。冒険者みんな狙ってる」

「なッ!! 爵位だと!?」


 俺は、その有益すぎる情報を耳にしてテンションが一気にアップ。もともと俺は貴族で伯爵家の息子だった。今では、その地位もないし、家も何もかも失っている。全ては、あのレイラのせいだ。

 ……つまり、ボスモンスターを倒せれば、ケイオス帝国から認められて『辺境伯』の地位を授かれる!

 再び貴族に復帰できるんだ。

 辺境伯になれれば安定した生活が送れる。こんなホームレス生活とはおさらばできるはず。

 悠々自適な生活を送りたい。

 だから、俺は……!


「ローザ、聞いてくれ」
「な、なんです……改まって。ていうか、手を握りすぎですぅ!」

「そんなのどうでもいいっ。いいか、お前のくれたこの『無限初回ログインボーナス』を使って、絶対にメテオゴーレムダンジョンを攻略してみせる。ボスモンスターを撃破するんだ。それが達成できたら辺境の地で、一緒に静かに暮らそう!」

「え、え、えっ……そ、それって……えっと、あの、プロ、プロ、プロポーズですかぁ!?」

「勘違いしすぎだが、要約すると大体そんなところだ」

「えーっ!!」


 壊れそうなほど激しく赤面するローザは“ぷしゅ~”と湯気を上げ、目をグルグルを回した。あれ、なんかヘロヘロになって、ぶっ倒れたぞ。

 でも、これで当面の目標が定まった。

 ギガントメテオゴーレムを倒す。
 この一点に集中だ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...